三題噺(ホラー)

転香 李夢琉

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『異常者』

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電球 鏡 足
 題 異常者
 
 突然だが、俺は鏡に映る自分が嫌いだ。
 理由なんてない。とにかく嫌いだ。
 だが唯一俺の中で誇りに思っている場所はある。
 見てくれ、この足を! スラッと伸びたこの足、陸上やってたおかげで筋肉もかなりついてる。一日中足を愛でることだって出来るね! この足が堪らな――
「ごはんできたわよー!」
 ……
「母さん! 今ナレーションしてんの! あとにして!」
「あととか言ってたらあんたの分なくなるわよー」
 くっ……しかたない。
「すぐ降りる!」
 ――30分後。
「……痛ってぇ!! はぁ? これどうなって……ちょばかばか」
 現在進行形で、痛い。と言うのも遡ること数分、母さんに呼ばれご飯を食べていたところ急に電球が切れてしまった。幸い、まだ朝方だったおかげでそこまで明るさは変わらないが。
 で、現在。切れた電球を付け替えようとしてる。しかも母さん、電気付けたり消したりしてやがる。危ねぇだろ!
「感電したらどうすんだよばか! スイッチに触れるな!」
 俺怒ってるだろ、なんで母さん心配そうな顔しながらカチカチしてんだよおい! バカなのか? いや絶対バカだろ!
「頼むから母さんその手を下ろせ! そしてスイッチに触れるな」
 母さんが指をスイッチから離した隙に俺は電球をはめ込み回した。
「よっっっし、母さんもう電気付けていいぞ」
 カチッ
 パリーン
 は? パリーン?
 俺は音がしたのと同時に上を向いた。これがダメだった。俺の目に無数に光る破片が飛び込んできた。瞬時に目を閉じるが少し遅かったようだ。目玉に破片が直撃し俺は床に倒れた。
「ぐおぉぉ……!!」
 目を押さ悶える俺。
 痛い。
 熱い。
 痛い。
 熱い。
 ――痛い。
 地面が響く。母さんが動いているのだろう。次第に地響きが大きくなる。収まると途端俺の顔に大量の液体がぶちまけられた。
「?! わぷっ」
 突然のことにすぐ対応できず。俺は勢いよく咳き込む。鼻に水が入った事がある人なら分かると思うが、ものすごく痛い。それもズキズキと、しばらくは治まる気配もないほどに。一時的に溺れたような感覚に陥る。俺は急いで起き上がろうと藻掻く、藻掻いて、足掻いて、手脚をジタバタと動かす。
 ――と、何かが切れた音がした。プツンと、よく分かるこんな時に聞こえるはずがない音。
 俺は咄嗟に考える。水に浸食されかけている脳みそで、だがすべては分からなかった。分かったとしてもどうすることも出来ない。
 俺は薄れ行く意識の中、今朝見た鏡に反射した足を思い出していた。
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