うちの会社の御曹司が、私の許婚だったみたいです

sakuru

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番外編 御厨夫人になりまして(温泉旅行編)

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「莉乃亜ちゃんと話をするのも久しぶりだねえ」
 彼が使っている部屋には、どうやら彼一人しかいないらしい。莉乃亜は向かい合う男を見ながら、返事をする前に彼に電話を促す。

「あの、樹さんに連絡取ってもらえますか?」
 そう彼に言うと、軽く肩を竦めて、携帯電話を取り出して電話を掛け始める。
「…………あれ、樹君、電話繋がらないね。電話中みたいだな」
 言われてハッと気づく。そうか、樹はさっきの電話が長引いているのかもしれない。

「ちょっと時間開けてもう一度掛けよう。ところでさ、さっきはどうしたの?」
 首を傾げてこちらを覗き込まれて、どう答えようか迷う。

「あれかな、昔の友達が言いふらしている噂話? 莉乃亜ちゃんがヤリマンだったとか、そういう奴?」
 突然飛び出したとんでもない話を咄嗟に否定しようとすると、彼は笑って手を振る。

「いや、大丈夫。樹君とかは知らないし。別に過去は過去で、今の莉乃亜ちゃんがそうでなければいいんじゃないの?」
「いや、違います。沙也加の話は、勝手に彼女が思い込んで広めた話で……」

「……でも、親友だったんでしょ? 地元でも結構、噂流れてたみたいだよ。気に入った男の子は友達の彼氏でも寝取るとか。大人しそうに見えて体を武器にして迫るとか……」

 嫌な話を蒸し返された瞬間、昔の記憶が戻ってきて、口に苦いものがこみ上げてくる。吐き気がひどくて、ガンガンと頭痛が酷くなってくる。

「樹はさ、馬鹿素直なところがあるから、結婚相手の過去とかの身上調査とか一切しなかったみたいだけど、ね。ああもちろん、樹には黙っておいてあげるからさ、僕もちょっとぐらいその武器になる位の体、拝みたいなあ。いや、今日はゆっくりしようと思って、奥に布団用意してもらっているんだよね」

 なんか飛んでもない事を言われている気がする。でも昔のトラウマを引っ張り出されて、ガクガクと体が震える。そんな莉乃亜を満足そうに見て、彼は奥の間のふすまを開けた。

「──っ」
「ここ、今は温泉に入って食事をとって、半日ぐらい過ごせるコースがあるんだよね。当然横になって休むこともできるっていうか……ねえ。まあ、本当はそういうことはダメらしいけど、カップルはこっそりと楽しむ奴も多いらしいよ」

 彼は強引に莉乃亜の手を掴むと、布団の敷いてある部屋に引っ張り込もうとする。
「い、いやっ」
 咄嗟にその手を避けて、逆らおうとすると、逆に彼に腕を捕まれた。

「ねぇ、エロくて尻軽で、男が大好きな莉乃亜ちゃん♡ エッチも大好きだよね? 気持ち良くさせてあげるからさ」
 昔、陰口を散々叩かれたことを思い出す。妙な噂が流れた後、こうやってセクハラまがいの言葉を口にしながら誘ってくる男性が増えた。断ると無理強いはされなかったものの、大概傷つくようなことを言われたのだ。

「いや、です。絶対に、イヤ」
「じゃあ、樹に全部過去の悪事、言われちゃってもいいんだ。莉乃亜ちゃんはエロい事が大好きで、大学時代あちこちの男と寝まくってて、ヤリマンって言われてました~って」
「樹さんは……そんな嘘、信じません」
「どうかなあ。かなり莉乃亜ちゃんに執着しているし、もともと樹は嫉妬深いタイプだと思うんだよねえ。可愛さ余って憎さ百倍、とかさ」

 そういうと、一歩も動く気がない莉乃亜の手を痛みが走るほど引っ張って強制的に立たせる。そのまま強引に布団に彼女を投げ出すと、飛びかかるようにして、莉乃亜の両手両足を抑え込んだ。
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