嘘つき女とクズ男

猫枕

文字の大きさ
35 / 39

35

しおりを挟む
 
 「またヒースの負けだな」

「すぐに顔に出ちゃうからな」

「正直者って言ってくれよ。大体ボク、こんな嘘つきに囲まれてこれから生きていけるか不安だよ」

 「まあまあ腐るなって」

 船上のカードゲームで負け続けのヒースはすっかりご機嫌ナナメである。

「もう、やってらんないから休むよ。
カトリーヌ行こう。
 今からボクたちラブラブするんだから邪魔しないでよ」

 確かにユージン、ヴィッラーニ、ヒースの父ラルフスパイに囲まれて、単細胞ヒースに勝ち目はない。

 ヴィッラーニ先生がニヤニヤしながら

「プレゼントは役に立った?」

 とカトリーヌに聞いてきたので、

「何ですかアレ?」
 
 「魅惑の夜を過ごせたでしょう?」

 言いながら噴きそうになっているのが余計頭にくる。

「お陰様でムードもクソもない新婚初夜を過ごしましたよ」

 ヒースがやろうとしたあれは一種の関節技だった。

 「女の子がクソとか言っちゃダメ」

「フン!なにが『愁いのある文学青年』ですか。
 ただの『むっつりスケベ』でしょ!」

「心外だな~。あれはアカデミックな本なのに~」

 カトリーヌは膨れっ面のヒースを宥めながらプレイルームを後にする。

 この後皆でビリヤードをするらしい。


 ニレルまでは普通旅客船では片道二週間かかるのだが高速クルーザー テティス号では半分の時間で着けるのだ。

 とはいえ一週間を船上で過ごさなければならないので皆思い思いに暇つぶしをすることになる。
 女性陣は専ら寄り集まってお喋りに興じる。
 アディヤとナディアはすっかり意気投合してお互いをアディー、ナディーと呼び合う仲になっていた。

 キャサリンとヴィッラーニ先生は学術書を広げて、なにやら難しい話を笑顔で楽しそうに話していることもあれば、各々が男同士、女同士の遊びに加わったりして自由に過ごしていた。

 キース&ニールは船員たちとすっかり仲良くなって、甲板でボーリングをしたりロープワークを教えてもらったり、操舵室にも出入りしてすっかり船乗りになり切っていた。
 人懐っこい性格は兄弟共通のようだ。


 水平線に沈む夕陽を眺めながら聴く演奏家の奏でる物悲しいギターの音色も格別だったが、黄昏の中でいつも一緒にダンナの悪口を言っているナディアがラルフと仲睦まじく肩を寄せ合っているのを見たアディヤは、なんとも言えない虚しい気持ちになったりした。

 
 昼食は甲板でバーベキューかビュッフェスタイルにすることが多くて、スタッフやクルーも交代で皆で食事をする。
 
その時は『焼き肉大臣ヒース』が大活躍をする。

 肉の焼き加減に一家言あるヒースの焼く肉は確かに美味しいのだが、

「ほら今が食べ頃」

「すぐ食べろ」

 とうるさいのが玉に傷だった。

  
天候にも恵まれ航海は順調に進んでいった。


 もうすぐ目的地に着くという時になって、今更ながらアディヤのニレル語講座が開かれた。

 日常会話は問題ないキャサリン&ヴィッラーニを除く面々が、とりあえず、

『こんにちは』

 『ありがとう』

『いくらですか』

『トイレはどこですか?』

 などの簡単な文を覚えた。

 そうやって一行はいよいよニレルに到着した。

 


 

 

 

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした

柚木ゆず
恋愛
 僕の婚約者であるロゼの家族は、困った人ばかりだった。  異母妹のアメリはロゼの物を欲しがって平然と奪い取り、継母ベルは実子だけを甘やかす。父親であるトムはベルに夢中で、そのためアメリの味方ばかりする。  ――そんな人達でも、家族ですので――。  それでもロゼは我慢していたのだけれど、その日、アメリ達は一線を越えてしまった。 「マエル様を欲しくなったの。お姉様の婚約者を頂戴」 「邪魔をすれば、ここにあるユリのアクセサリーを壊すわよ?」  アメリとベルは自分達の都合でこの婚約を解消させようとして、ロゼが拒否をしたら亡き母の形見を使って脅迫を始めたらしいのだ。  僕に迷惑をかけようとしたことと、形見を取り上げられたこと。それによってロゼはついに怒り、僕が我慢している理由もなくなった。  だからこれから、君達にこれまでのお礼をすることにしたんだ。アメリ、ベル、そしてトム。どうぞお楽しみに。

ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~

水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。 婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。 5話で完結の短いお話です。 いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。 お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

愛してもいないのに

豆狸
恋愛
どうして前と違うのでしょう。 この記憶は本当のことではないのかもしれません。 ……本当のことでなかったなら良いのに。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

私を見ないあなたに大嫌いを告げるまで

木蓮
恋愛
ミリアベルの婚約者カシアスは初恋の令嬢を想い続けている。 彼女を愛しながらも自分も言うことを聞く都合の良い相手として扱うカシアスに心折れたミリアベルは自分を見ない彼に別れを告げた。 「今さらあなたが私をどう思っているかなんて知りたくもない」 婚約者を信じられなかった令嬢と大切な人を失ってやっと現実が見えた令息のお話。

ずっと一緒にいようね

仏白目
恋愛
あるいつもと同じ朝 おれは朝食のパンをかじりながらスマホでニュースの記事に目をとおしてた 「ねえ 生まれ変わっても私と結婚する?」 「ああ もちろんだよ」 「ふふっ 正直に言っていいんだよ?」 「えっ、まぁなぁ 同じ事繰り返すのもなんだし・・   次は別のひとがいいかも  お前もそうだろ? なぁ?」 言いながらスマホの画面から視線を妻に向けると   「・・・・・」 失意の顔をした 妻と目が合った 「え・・・?」 「・・・・  」 *作者ご都合主義の世界観のフィクションです。

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

処理中です...