嘘つき女とクズ男

猫枕

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 不測の事態が起きた。

 ヒースが注文した印刷機の納入が相手側の不手際で3ヶ月ほど遅れるというのだ。

 ヒースはユージンに、

「港湾工事のアルバイトにでも行こうかとも思うんですが、できれば暫くの間ソアルーサー商会で働かせてもらえませんか?」

 と頼んだ。

「それはいいけど、せっかく休みができたんだから君たち新婚旅行にでも行って来たら?」

 「へ?」

「兄として君たちに新婚旅行をプレゼントしてあげるよ。
  テティス号を好きに使っていいよ。
 3ヶ月もあれば大抵の所に行けるでしょう?」

 テティス号は高位貴族御用達の豪華クルーズ船だ。

 困惑するヒースにユージンが、

「兄からの祝福を無下にするなんてことしないよな?」

 と笑った。





「アディヤさんを連れて行こうと思うんだ」

 「え?なんで新婚旅行にお母様を連れて行くのよ?そんな話聞いたことないわ」

「・・・ニレルに行かないか?」

 「・・・そういうこと」

 カトリーヌは少し考えて、

 「それならヒースのお母様だって誘わなくちゃおかしくない?」

 「えーーー!!」


 結局、ヒースとカトリーヌ、アディヤとテンダー夫妻ヒースの両親キース&ニールヒースの弟、ユージン、キャサリン&ヴィッラーニ先生の総勢10名での新婚旅行もはや団体旅行となった。

 ヴィッラーニ先生は大学に「調査研究」の名目で申請が通ったので、出勤扱いで旅行に参加することができた。
 ヒースの父は長らく休暇を取っていなかったので1ヶ月の休みを貰うことができた。
 同じくそこまで休めないユージンと途中で抜ける計画での参加となった。

 皆がウキウキと旅行の準備をしていた。

 アディヤもすごく嬉しそうにあれやこれやと自分で荷造りをしていた。

「楽しそうだな」

 部屋に入ってきたロバートが声をかける。

「皆で行くんだろ?私も参加しようかな」

「貴方は招待されてない」

 さっきまで返事もしなかったアディヤが振り返った。

「娘が大変な時にもしらんぷりの父親は要らない。
 貴女は大好きなお金でも数えていればいい」

 ロバートは衝撃を受けて口も利けない。

「ニレル楽しみだわ。
 もう帰って来ないかもね」

 アディヤはロバートの顔を見て、ニコッと笑った。
 ゾッとするくらい美しかった。

「そうそう、これ返すわ」

 アディヤはロバートの手に『エリヤの眼』を乗せた。
 無惨なヒビが入っている。

「私も時間を巻き戻せたらいいのに」

 ロバートにはアディヤが何を言っているのかサッパリ分からなかったが、手のひらの宝石のように二人の関係が壊れかけていることだけは感じ取っていた。

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