私は王子のサンドバッグ

猫枕

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 私は認定試験に合格し予科コースに通い始めていた。

 もっともジェイムズの助けなしに合格はあり得なかったが。
 
 文学や歴史はまだしも理数系の科目が壊滅的にダメだったのだ。

 ジェイムズは呆れながらも根気強く教えてくれた。あまりに数学ができないのでジェイムズがキレかかったので、

「数字を見ているとイジメられていた時のことがフラッシュバックするの」

 と涙目で言うとジェイムズは途端にオロオロと優しくなった。この手はいける!と思った私はちょっと悪い子だ。

どうにか予科コースに潜りこんだ私は、予科でできた友達やジェイムズに紹介してもらった本科の学生たちと授業終わりに広場のカフェに集うのが日課となっていた。

 正直に言うといまだに人が集まっている場所が苦手だったりする。
 笑い声が聞こえると自分が笑われているように感じたり、数人が集まって話していると自分の悪口を言われているような気がするのだ。

 最初は予科でも一人で昼食を取っていたし、ジェイムズに誘われなければ本科の人達の輪に入ることもなかった。

 「一人で食べてるんなら こっちにおいでよ」

 予科の人達に自然な笑みを向けられた時は泣きそうになった。

 予科には私と同じように認定試験組がいたが、ほとんどが経済的理由から高等教育課程に進めなかった人達だ。
 そういう人たちは働いて資金を貯めてから予科に来ていて夜アルバイトをしている。
 勉強に対する熱意が違うのだ。ここで甘えていては皆に軽蔑されてしまう。
 私は1年で予科課程を終了することを目標にした。

 今ではジェイムズがいなくても本科の人達の輪にも入れるまでになった。彼らも私を友人として扱ってくれるのが嬉しい。

 
 「ローズって貴族学校の出身なんだって?」

 「・・・・まあ」

「貴族学校ってどんな勉強するの?」 

 「うーん、根回しとか、体制に取り入る方法とか。あと、婉曲的嫌みの言い回しとか?」

「言うね~」

 皆がキャハキャハ笑ってる。

 私も一緒に笑う。

ここに私が第二王子の元婚約者だと知る者はいない。

「でもさ~今から勉強して本科に入った時20才くらいでしょ?そこから大学って完全に嫁き遅れじゃない?」

そういう遠慮の無いところも良い。

「本音で言うと結婚できなくてもいいかな、って。男性に頼らなくても生きていける収入が得られる仕事に就きたいな」

「おっ!そういうことならオレがもらってやる!」

調子良く言うのはムードメイカーのロイだ。

 「じゃ、オレも」

「じゃ、オレも」

と次々に4人が手を挙げたかと思うと、どうぞどうぞ、が始まる。

 「なんで譲り合うのよ~」

 私がふくれると皆で笑い合う。

「じゃ、この中なら誰がいい?」 

 とは先程のロイ。

 実は私がちょっといいな、と思っているアレクは手を挙げなかった。
 黒髪で端正な顔立ちのアレクは物静かであまり喋らないがジェイムズとは一番仲が良いらしい。

 「選択肢が少なすぎます」

「ひでぇ~」

 そうやって楽しい放課後のティータイムを過ごして家路についたとき、私は後をつけられていることに気づいていなかった。

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