私は王子のサンドバッグ

猫枕

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 「王子さまぁ~?」

 アレクが呆気に取られていると、王子の身辺護衛とおぼしき二人の男が現れて王子を立たせて両脇を支えた。

「お前こんなことして無事で済まされると思うなよ!!お前の家ごとぶっ潰してやるからな!」

 とてもやんごとなき生まれの者とは思えない下品な言葉を吐く王子。

 ジェイムズがため息をつきながら言った。

「殿下、ご理解いただけていないようですので申し上げますが、我がポルデコマースは王国下にありながらも自治権を認められた自由都市です。
 王都でのような横暴はここでは通用しませんよ。
 自警団に引き渡してもいいんですよ。 
 そうなれば、この町ではたとえ王族であっても裁判にかけられて牢屋に入ることになりますよ」

 護衛は気まずそうに下を向いている。

 「どうせ無断で抜け出して来たんでしょう?
 早く王都に連れ戻さないと アンタたちも叱られるんじゃないの?
 二度は無いってアンタらのボスに伝えといてよ」

ジェイムズの言葉に二人の護衛は遠い目をしていた。
 そして引きずるように王子を回収して行った。

 「磯臭い町だなー!」

王子は悔しまぎれに謎の捨て台詞を叫んでいた。

 タイミング良く駆けつけてくれた二人に理由を聞くと、私が席を立ったすぐ後にジェイムズがカフェに来て、私が不審な男(王子)につけられていることに気付いて二人で後を追ったということだった。

 私が二人に助けてくれたお礼を言うとアレクは大事に至らなくて良かったと言い、ジェイムズはその前に護衛が止めろよ、と毒づいていた。

 私は牢屋に入れちゃえばいいのに、と思ったけど自由都市と王家の間の紛争に発展する可能性を考えてのジェイムズの判断だったようだ。

 
 さて帰ろうとしたが足に力が入らなくて上手く歩けない。
 するとアレクがひょいと私を抱き上げた。
 驚いて顔を赤くする私にアレクはにっこり笑って送るよ、と言った。
 アレクは坂道を息も上げずに平然と登っていく。

 夕日がアレクの黒髪をキラキラ照らしていた。私はこっそりアレクの美しい横顔を盗み見てドキドキした。
 
 その横でジェイムズが

 「ヨッコラショ~ドッコイショ!」

 などと茶化す。

彼の辞書に 気を利かせる の文字は無いようだ。

「ジェイムズ、何か忘れ物とかあるんじゃない?」

 私が言うと、何も無いけど?と暫くポカンとしてから

「あ、オレを追い払おうとしてるだろ?」

と笑った。

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