ペンフレンズ〜犬猿の二人の往復書簡〜

猫枕

文字の大きさ
19 / 38

19 テレンスとの再会

しおりを挟む
 それからもラナとテレンステリー様の間では手紙がやり取りされた。
 普段なかなか本について話の合う相手がいないラナは、テレンスがあくまでもメグを相手に手紙を書いていることを重々承知の上で開き直って楽しんでいた。

 読書の習慣のないメグはテレンスから手紙が届くと、ザッと斜め読みして
「なにが面白いんだか分からない」
 という顔をして押し付けるようにラナに渡してくるのだった。

 そんなある日、珍しく興奮した様子でメグが手紙片手にやって来た。

「どうしようラナ。テリー様が会いに来るって!」

 差し出された手紙には、冬休みに東部で開催される〈全国青少年弁論大会〉に西部地区代表として出場するために東部に来る、と書かれてあった。
 ついては休暇も兼ねて数日はゆっくりするつもりなので、時間を合わせて会えないだろうか?ということだった。

「良かったじゃない。しっかり親交を深めてきてね」

 もう、手紙を書く機会も無くなるだろうな、と思いながらラナが言うと、

「なに他人事みたいに言ってんのよ!
 アンタも絶対に一緒に来てよね?!」

 といつもの強引さが炸裂する。

「え?」

「え、じゃないわよ。話の辻褄が合わなくなるでしょ?
 代筆させてたことがバレたら困るんだから、アンタは隣で助け舟出してくれなきゃ!」

 いつものことだか、コレが他人に物を頼む態度だろうか。

 ラナはテレンスと顔を合わせることに不安を感じたが、それと同じくらい、まだ仲が良かった頃の本来の?彼に戻ったテレンスを見てみたい、という好奇心もあった。

 とりあえず返事には、

~テリー様に会えるのは嬉しいんだけど、きっと実際に会ったら緊張して一言も話せない気がするの。
 なんてったって女子校育ちで普段男の子と接する機会なんて無いんだもの。
 だから学校の友達に同席してもらうことを許してね~

 という言葉を付け加えておいた。

 その後送られてきた返事には、弁論大会やその後の詳しい日程、会える日の場所や時間の指定と共に、

「良かったよ。僕も女の子と二人きりなんて緊張でおかしなことを口走っちゃったらどうしようかと心配だったんだ。
 僕も寮の仲間を一人連れてくるよ」

 と書いてあった。


 それからのメグはテリー様に会う日のファッションについてあれこれ悩み続けて、寄ると触るとその話ばかりで鬱陶しかった。

 メグは、

「そんなことより手紙を読み返してボロが出ないようにした方がいいんじゃない?」

 そんなラナの忠告は丸で聞こえていない様に、学校にまで雑誌を持ってきてはランチの時間に広げて、以下三人に意見を求めた。

 連日放課後のショッピングに付き合わされた3人は、それでもなかなか決まらないメグにうんざりと疲れ果てた。

 ラナはメグが試着室から出てくるのを待つ間、グレイスがキャロラインに

「メグって自分本位でワガママだよね」

 と呟いた言葉に気がつかないふりをした。

 年があけて6月には卒業だ。いざこざはゴメンだ。




 冬休みになって約束の日が来た。
 待ち合わせ場所に現れたメグは、あんなに大騒ぎした割には至って無難な格好をしていた。

 まあ、広く万人に好感を持たれようとするとそんなところに落ち着くのだろうが、特別に飾らないシンプルな装いは、むしろメグの見た目の可憐な美しさを引き立たせていた。

 二人でティールームに入ると窓際の席に若い男の子が二人並んで座っている後ろ姿が見えた。

 一人は記憶の中のテレンスと同じ髪の色、金に近い薄い茶色をしていた。

「あれじゃない?」

 二人は小声で囁やき合って、顔を確かめるように大回りして近づいた。

 数年ぶりに目にするテレンスは、なるほどメグが一目惚れするのも納得。
 ラナの知ってるテレンスよりも更に数倍美貌に磨きがかかっていた。
 
 そしてテレンスの隣には、そこら辺にいくらでもいるようなダークブラウンの髪をした普通の少年が座っていた。

「テリー様、お待たせしました」

 緊張気味のメグの声は普段よりトーンが高かった。

「どうぞ座って」

 席を勧めるテレンスは余裕の微笑を湛えていて、とても若い女の子と会うのに緊張しているようには見えない。

 メグとラナが並んで向かい側に座ると、

「何か飲む?」

 と訊いてきて、メグがモジモジしていると、二人とも紅茶でいい?と確認して、自然な動作でウエイターを呼ぶと注文を済ませた。

 そこで初めてラナをしっかり見たテレンスは、一瞬眉間にシワを寄せ、ゾッとするくらい美しい切れ長の目を細めたが、すぐに元の顔に戻して、

「初めまして。テレンス・リードです」

 と言った。

 そこにはラナの知っている、がいた。

 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ピンクローズ - Pink Rose -

瑞原唯子
恋愛
家庭教師と教え子として再会した二人は、急速にその距離を縮めていく。だが、彼女には生まれながらに定められた婚約者がいた。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

相互理解は難しい〜とある幼い初恋の始まり方は周りを巻き込んで大騒ぎ〜

あとさん♪
恋愛
その日、初めて許婚の少年に会った公爵令嬢サラ・フォン・ベッケンバウワー12歳。 対するのはこの国の王子殿下ヘルムバート・フォン・ローリンゲン14歳。 彼らは双方の父親を伴って、ごく普通に初めての面会を済ませた。 ·····と思ったら、壁ドンが待っていました。殿下? ちょっと……だいぶ……否、かなり、怖いですよ? 1話ごとに視点が変わります。 奇数話毎に、或いは偶数話毎に読んだ方が解りやすいかも。 不親切な作りで申し訳ない“〇| ̄|_ ※シャティエル王国シリーズ1作目! ※なろうにも投稿しました。

盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。 だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。 「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」 こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!! ───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。 「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」 そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。 ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。 彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。 一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。 ※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

処理中です...