悪役令嬢だったらどうしましょう?!

もこもこ

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はじまり

2. 決意しました

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 転んで頭を打ったせいでも、なにか死にかけたせいでもなく、退屈と食い気によって前世を思い出すなんて、我ながら以前の性格が出てますね!感心です。
 ですが、はた目には勝手に気分が悪くなって、しばらく休んでいただけだったみたいです。

 怒涛のようによみがえってきたのは、乙女ゲームや漫画の設定ではなく、前世の記憶でした。
 と言っても、前世の私は引っ込み思案のインドア派、軽くオタクが入った本の虫でしたので、大した容量もなかったのでしょう。高熱を出して寝込んだりすることもなく、ちょっと頭が混乱して気分が悪くなったように見えただけでした。
 会場の片隅で頭を抱えた令嬢を、外聞をはばかり「くれぐれも粗相はさせるな」と上から言い含められていた子守り役の侍女さんが、これ幸いと弟クンともども控室へと放り込んでくださったためです。

 私的には、なにか頭が混乱して、夢の中で前世の一生をボーッと見ているうちに思い出というか記憶になっていって、寝て起きたらスッキリと前世の記憶や知識もプラスされた感じです。
 退屈な場所にいなくてよくなって、グースカ寝て覚めたら精神年齢も上がって、今世の知識もきちんとあるし、一石三鳥どころじゃなくお得な気分でした。

 伯爵令嬢のシャーロット様は慎重な子供だったようです。言われたことを言われたようにこなす、いわば理想的な貴族令嬢ですね。というかシャーロット様って私ですけれど…。でも、他人のような感じもしませんが、年数からくる経験の差からか前世の意識の方が強くなっているのかもしれません。のっとったという様な感もなく、普通に昨日までのシャーロット様の続きの私です。うん、ラッキーです。ということでまとめましょう。

 しかしながら!です。ちょっと騙されているという感じがなくはないですが、せっかくの異世界転生をしたのですから、これからの私は前世と同じ言われるがままのイイコちゃんではもったいない!のです。
 シャーロット様がまさにこのタイプで、考えていないわけではないのですが能動的に動かなくても、周りの侍女さんたちがお膳立てしてくれるので常に受け身なのです。そういう行動原理や生き様が前世の私と一緒です。いえ、私だったからそのままシャーロット様に引き継がれたのでしょうか…。そちらの方が有り得そうですね。 
 では、そのお詫びと償い分も上乗せして、全力で人格いえ性格でしょうかの改善に励むのです!レッツ トライ!目指せ、ハッピー異世界充実ライフです。

 そこでお貴族サマのお嬢サマとして、ハッピーになるには美貌と教養が必須ですね。あとは社交性でしょうか。
 乏しいまた聞き系のなんちゃってお貴族サマ知識ですけれど。
 美容関係はまだ年齢的に必要ないですし、侍女さんたちがイロイロしてくれるので大丈夫ですね。
 教養は淑女教育が始まっていますので、それを完ぺきにマスターしましょう。淑女のマナーとか礼儀作法も真剣にやるとそれなりな運動になるはずです。
 社交性は、まずは侍女さんたちとコミュニケーションをとってだんだん磨いていきましょう。

 というわけで。
 まず疑われずに打ち込むことができるのはオシャレからですね!

 前世では大部分の時間を趣味(主に読書、後にマンガ、ドラマ・映画・アニメ鑑賞、時々ゲーム)に注ぎ込んでいたので、オシャレに興味がなかったというか、放置していました。オシャレじゃなくてもいいじゃん!と思っていました。ですが!それがリア充への道を阻み、カーストの最下層へと押しやられた原因だったのです!(それだけではないですけれど、きっと)

 ましてや今はお貴族サマのお嬢サマです!
いかにオシャレであるか!いかに流行の最先端を追うか!(先端を行くまでは言いません、さすがに…)、 いかに美しくあるか!が重要なハズなのです!!

 幸い私はまだ五歳。それなりにかわいらしい感じです。スタイルも普通です。
 オシャレセンスを身につければ専門職集団の侍女さんたちが、理想通りのご令嬢に仕上げてくれることでしょう!鋭意努力あるのみ!!です。
 興味がわかないとか言っている場合ではありません!勉強と一緒。やらねばならぬのです!努めて覚え、活用するのです!! ゼイハァ。
 エクスクラメーションマークの数が決意の表れです…。

 でも私の計画はちょっと消極的で気長すぎるでしょうか…。
 計画と言っても、最終的には侍女さん頼みですし…。
 いぇ、まずは目標を立て実行してみることが大事なのです!
 できることを小さなことからコツコツと!!です。

 それにですね、昨日まで言うなりにハイハイしていたご令嬢が、いきなり武術を習いたい!とか、料理をしたい!とか、お菓子を作りたい!とか、下町に降りたいとか言ったら、絶対的におかしいですよね。

 いやいや、作者さまは悪くないのですよ。そういうお話、大好きです!
 どれもいずれやってみたくなることでしょう。そのためにも計画は大事です。
 物語は動いてナンボですからね。前世の私みたいに、フラグは全てスルー!選択肢は選ばない!では、物語は進まないのですよ。いやぁー、前世の私はほんっと主人公向きじゃなかったです。

『誰もがそれぞれの物語の主人公だ!』

 素晴らしい言葉です。
 鼓舞されて立ち上がって、立ち向かってほしいです。
 だがしかし!駄菓子菓子。私は主人公になりたくなかったのです。物語を読んでいたかったのです。なんの苦労も努力もせずに、素晴らしい物語を体験したかったのです。ただ文字を追うだけで。ただページをめくるだけで。ただ映像を眺めるだけで…。
 そのことに気づいたのは、もう取り返しようもなくなってからでした。

 シャーロット様も同じタイプです。侍女たちに与えられたままの、ご両親から与えられたままの物語を綴ったでしょうが、主人公でも登場人物でもなく単なる筆記者の記録担当です。
 シャーロット様は、これから時間があるのです。変わるのです!
 
 というわけで。
 前世の反省を活かし、今世は目指せヒロイン主人公!
 そしてリア充!ウハウハお貴族サマ生活なのです!!
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