超絶クールな先輩は俺の前でふにゃふにゃのSubになる

おもちDX

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番外編

1.下準備は万全に

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「朔、ほんっとーに身体には気をつけてね? なにかあったらすぐ私とかお母さんに連絡すること」
「わかってるよ……」

 僕の最寄りとなった駅の改札前で、姉の立夏りっかが手をぎゅぎゅっと握ってくる。こんな人の多い場所でやめてくれと言いたくなるけど、僕は彼女を安心させるように、自分よりも少しだけ小さな手を握り返した。
 
 この街はどこも人が多く、そしてよほど突飛なことをしない限り他人の行動なんて気にしちゃいないことを、僕は数日で学んでいる。
 これでも、大学のキャンパス周辺は静かな方だというから驚きだ。こういう田舎者の感覚は徐々に変わっていくのだろうか。
 
「姉貴も、母さんや下のやつらのことよろしく頼むな。お金のこととか、困ったことがあったら隠さず言ってほしい」
「はいはい、大丈夫だから。せいぜい最後の学生時代を満喫しなさいね。――あ、ダイナミクスのことでなにかあったら、ちゃんと暁斗くんに連絡するのよ?」
「……うん、わかってるよ」

 立夏と別れ、自宅の方へ向かってぶらぶらと歩く。夜になっても明るい街は見ていて新鮮で、歩くのも全く苦ではない。
 僕はキャンパスから一駅離れた場所に学生用の賃貸アパートを借りた。通学は自転車だ。このあたりの学生はみんな自転車通学が定番らしいし、電車代も節約できるからありがたい。
 
 母は『寂しくなるわ……』と何度も言い、僕はなるべく頻繁に帰ると約束した。大学生の夏休みと春休みはそれぞれ二ヶ月ほどあるし。……長すぎじゃないか?
 高速バスを使えば驚くほど安く行き来できることは調査済みなので、心配しなくとも実家に顔を見せる機会は多くあるだろう。

(それに、暁斗にも会いたいし……)

 暁斗も関西の大学を目指すことに決めたらしい。もし近くに住むことになれば嬉しいが、この一年はあいつにとって重要な期間だ。
 こちらにも遊びに来ると言ってくれたものの、受験生の負担は減らすに越したことはないだろう。

 とはいえ、この春休み期間中に一度、暁斗は遊びに来ることになっている。僕の新居を見たいとか住む街を見たいとか、理由はいろいろある。でも……一番は。

(僕の家は、間違いなく二人きりになれる場所だ。こんどこそ……)

 高校生がラブホテルなんて利用できない。プレイバーで擬似的なことはできるけど、あくまでプレイの延長線上だ。実家には家族がいたし、一時的に二人きりになったってどこか落ち着かなかった。

 そもそも受験が終わってからふたりでゆっくり過ごす時間なんて、なかったのだ。引っ越しもあったし。
 初詣のときが一番のチャンスだったといえる。僕にとっては不意打ちだったけど、暁斗とはかなり踏み込んだ関係になれた。あれは本当に嬉しくて、幸せな時間だった。
 
 ――だから、次こそは。

(今度こそ……最後まで、する!!)

 バカみたいな目標だが、まだ十八の男子なので許してほしい。ちなみに暁斗も四月の頭でちょうど誕生日を迎えるので、同い年になる。そのお祝いもしたかった。

 スーパーに寄ってから家に帰り、夕飯を作って食べる。ひとりしかいない部屋は実家の自分の部屋より少しだけ広いけれど、シン……としている。
 引っ越しを手伝ってくれた姉がいなくなって、はじめて一人で過ごす夜だ。僕はらしくもなく寂しさを感じ、テレビをつけた。バラエティ番組の笑い声が唐突に部屋に響く。

 スマホを持ち上げアプリを開くが、暁斗へ送った部屋の完成写真はまだ既読になっていない。勉強中か、ちょうど食事中かもしれない。
 寝るときまでには返信がくるだろう。自分から電話をしたことはないのに、できれば……少しだけでも声を聞きたいと考えてしまっている。物理的に簡単に会えない場所に来てしまったのだと、改めて実感した。

(会える日が待ち遠しい……)

 シャワーを終えた僕は決意を目に宿し、ベッドの上に移動した。念のためテレビの音量を上げる。角部屋だし防音はそれなりだ。
 風呂上がりに一度履いたスウェットを脱ぎ、下だけ裸になる。エアコンをつけていない部屋の冷気に、ふるりと一瞬震える。

 今日は、後ろを使うために洗ったのだ。洗う練習だけは何度かしていたので少しだけ余裕もできた。
 なんとなく調べてここに挿れることは知っていたけど……年始に暁斗のものを見てから、受け手には入念な準備と訓練が必要であると痛感したゆえの行動である。

「はー……緊張する」

 実際に拡げてみるのは初めてだ。こういうとき一人暮らしは気楽だと感じる。
 鍵のかからない部屋で、後ろの開発をする勇気はない。すぐに引っ越しだと分かっていたからこそ、今日まではあれこれ調べるだけにとどめたのだ。
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