抱かれたい男No.1だけど抱かれたい

おもちDX

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 夜に向かって暗くなり始めた街中は、イーリスの浮かない表情を自然に隠してくれる。人目につかないのはよかったものの、なかなか心は落ち着かない。

 だからイーリスはより騒がしい場所に向かった。王都の歓楽街には酒場や劇場、賭場や娼館が立ち並ぶ。
 客を呼び入れる声や、大声で会話する騒がしさが心地よい。規模は桁違いだが、こういう所は辺境と変わらないなと思う。

 無作為に歩いていたはずなのに、いつの間にか懐かしい場所に来ていた。以前、初めて王都へ来た際訪れた酒場だ。
 一杯飲もうとイーリスは店内へと入った。あの時はクヴェルから逃げて、でもクヴェルのことを忘れられず、娼館で男に抱いてもらおうとして……

「聞いた? クヴェル様こっちに帰ってきてるんだって!」
「え」

 カウンターに座っていたイーリスのすぐ後ろのテーブルから聞こえてきた声に、思わず素で反応してしまった。
 パッと振り返れば見覚えのある女たちと目が合う。向こうも派手に化粧した目を大きく見開いた。

「赤髪のいい男で……」
「クヴェル様の恋人(仮)の……」
「「デカマラくん!!」」
「それはやめてくれ……」

 なんだかすごく誤解を招きそうな言葉に、頭を抱える。周囲からちらちらと視線が突き刺さった。

 小柄なクシュと、背の高いティーア。名乗った二人は存外にイーリスとの再会を喜んでくれ、一緒に飲もうと誘われる。
 少し迷ったが、いい気分転換になるだろうと思い席を移動した。こんな偶然そうそうない。

「男に抱かれたいという雄々しい男前を、クヴェル様が攫って行ったあの日から……ずっと気になってたの!」
「イーリスくん。望みは叶ったのよね?」
「は、はい……」

 イーリスは強き女性たちの前でたじたじだ。質問攻めに遭い、今の滞在先がクヴェルの家だと答えるとクシュに「ヨシ!」とガッツポーズされる。

「妄想は夢じゃなかったわ! 二人は今、恋人なのね?」
「う……ハイ。おれなんかが、って思うでしょうが……」
「こーらー! イーリス君。駄目よ弱気になっちゃ!」

 クヴェルの身分を知っている王都の人の前で、自信満々に「自分が恋人だ」とは言えない。つい弱気に答えると、ティーアにパチン! と額を中指で弾かれた。

 地味に痛い。涙目になったイーリスは、そのまましおしおと二人に現状を打ち明けてしまった。今さっきもクヴェルに信じてもらえなくて、喧嘩してしまったことを。

 クシュは癖なのか、テーブルに豊満な胸を乗せて腕を組んでいる。柳眉をひそめ、「鈍感すぎない……?」と呆れ声で呟くと、ティーアもうんうん頷いた。

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