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その夜、珍しくリアンはディムルドを伴って帰ってきた。
「メグムくんこんばんはー!ちょっと相談があって来たんだけど、時間いい?」
「ディムルドさん!僕も相談したいことがあって……」
「……なんで」
リアンは不服そうだったが構わずに、ディムルドと一旦外に出る。彼が切り出した話は僕が想像もしていなかったものだった。
「メグムくん、リアンの誕生日知ってる?」
「えっ……知らないです」
「だよね~!実は来週なんだけどさ……」
聞いたところによると、この国では誕生日を仲間内で盛大に祝うのが一般的らしい。自分でパーティーを開催する人もいるし、リアンのような人は周りが勝手にパーティーを催すそうだ。
ディムルドは今年、リアンの学生時代の友人や研究所で仲のいい人を集めたパーティーを計画しているみたいで、それに僕も参加してほしいとのことだった。
「もちろん参加させてください。パーティーとか初めてですけど……僕にできることがあれば準備もやります!」
「ありがとう!あ、ちなみにパーティーは誕生日当日じゃないから、よかったら当日は二人きりでお祝いしてあげて?」
その顔はブリギッドから聞いてるよ、という表情だった。恥ずかしいけど、ありがたい情報だ。これを口実にリアンを誘ってみよう。
「あの、僕からの相談なんですが……リアン、僕を家まで送るために、仕事を持ち帰って遅くまで仕事をしているみたいなんです。なんとか無理しないよう説得したいんですが、なにかアドバイスありませんか?」
「それなら簡単だよ!メグムくんがリアンの家に住めばいい!」
住む!?と瞠目してしまったが、ディムルドの説明を聞いて納得した。僕が仕事の日はリアンの家に泊まれば、リアンは慌てて帰ってこなくていいし、僕が翌日の朝に帰れば夜ほどの危険もない。家まで送るという手間も発生しないだろう。
ディムルドは以前、嫁入り前のオメガがアルファの家に外泊なんて!と冗談交じりに言っていたが、僕の発情期を経てその考えは変わったらしい。
それならリアンと一緒にいられる時間が増えるし、仕事のあとに二回も一緒に食事をできる可能性がある。
まさに目から鱗のアドバイスに、僕はひたすら感謝した。
さっそく提案してみようと一旦家の中に戻ると、玄関で待っていたらしいリアンが僕の腕を掴んできた。
「わっ。ど、どうしたのリアン?」
「嫉妬は見苦しいぞ~。じゃ、俺は帰るから!メグムくん、例の件よろしくね~」
ディムルドが帰ったあと、リアンは僕の腕を引いたままリビングへ行きソファに座らせた。ここに二人で座るのは初めてで、広いのにちょっと距離が近い気がして緊張する。
「……今朝は助かった。ありがとう」
「そんなそんな。だって、リアンが仕事持ち帰ってるのって……僕のせいですよね?」
「いや……単純にいまは忙しいんだ」
「うーん、それもあるんだろうけど。ここでリアンに提案があります。今度から僕、ここに泊まっていっていいですか?」
「えっ……?」
「……だめですか?」
リアンが完全に予想外という顔をするものだから、つい不安そうな声を出してしまった。前に泊まればいいって、言ってくれてたはずなんだけどな。
これは決して自分の私欲のためではなくて、リアンのためなんだからと自分を奮い立たせる。それでも眉は落ち、おずおずと隣を見上げながら僕は続けた。
「毎回送ってもらうのが申し訳ないんです。僕が泊まれば、リアンはちゃんと仕事を終わらせて帰ってこれるんじゃないかと思って……それに」
「いいから!もちろんいい!」
「本当ですか!」
「ぐ……気を遣わせて悪いな。空いてる部屋は好きに使ってもらって構わないから」
食い気味な返事にほっとして、ぱあっと明るい気持ちになる。
どの部屋も綺麗にはしてあるし、来客用のベッドがある部屋をそのまま使わせてもらえば明後日から泊まれるだろう。
リアンに家まで送ってもらう間も僕はやっと先の見通しが立ったことにルンルンで、たまにリアンが周囲を気にしてキョロキョロと見回していたけど、虫がいたのかな?くらいに思っていた。
最近は寒さが厳しくなってきて、外を飛ぶ虫もあまりいないけど。
「メグムくんこんばんはー!ちょっと相談があって来たんだけど、時間いい?」
「ディムルドさん!僕も相談したいことがあって……」
「……なんで」
リアンは不服そうだったが構わずに、ディムルドと一旦外に出る。彼が切り出した話は僕が想像もしていなかったものだった。
「メグムくん、リアンの誕生日知ってる?」
「えっ……知らないです」
「だよね~!実は来週なんだけどさ……」
聞いたところによると、この国では誕生日を仲間内で盛大に祝うのが一般的らしい。自分でパーティーを開催する人もいるし、リアンのような人は周りが勝手にパーティーを催すそうだ。
ディムルドは今年、リアンの学生時代の友人や研究所で仲のいい人を集めたパーティーを計画しているみたいで、それに僕も参加してほしいとのことだった。
「もちろん参加させてください。パーティーとか初めてですけど……僕にできることがあれば準備もやります!」
「ありがとう!あ、ちなみにパーティーは誕生日当日じゃないから、よかったら当日は二人きりでお祝いしてあげて?」
その顔はブリギッドから聞いてるよ、という表情だった。恥ずかしいけど、ありがたい情報だ。これを口実にリアンを誘ってみよう。
「あの、僕からの相談なんですが……リアン、僕を家まで送るために、仕事を持ち帰って遅くまで仕事をしているみたいなんです。なんとか無理しないよう説得したいんですが、なにかアドバイスありませんか?」
「それなら簡単だよ!メグムくんがリアンの家に住めばいい!」
住む!?と瞠目してしまったが、ディムルドの説明を聞いて納得した。僕が仕事の日はリアンの家に泊まれば、リアンは慌てて帰ってこなくていいし、僕が翌日の朝に帰れば夜ほどの危険もない。家まで送るという手間も発生しないだろう。
ディムルドは以前、嫁入り前のオメガがアルファの家に外泊なんて!と冗談交じりに言っていたが、僕の発情期を経てその考えは変わったらしい。
それならリアンと一緒にいられる時間が増えるし、仕事のあとに二回も一緒に食事をできる可能性がある。
まさに目から鱗のアドバイスに、僕はひたすら感謝した。
さっそく提案してみようと一旦家の中に戻ると、玄関で待っていたらしいリアンが僕の腕を掴んできた。
「わっ。ど、どうしたのリアン?」
「嫉妬は見苦しいぞ~。じゃ、俺は帰るから!メグムくん、例の件よろしくね~」
ディムルドが帰ったあと、リアンは僕の腕を引いたままリビングへ行きソファに座らせた。ここに二人で座るのは初めてで、広いのにちょっと距離が近い気がして緊張する。
「……今朝は助かった。ありがとう」
「そんなそんな。だって、リアンが仕事持ち帰ってるのって……僕のせいですよね?」
「いや……単純にいまは忙しいんだ」
「うーん、それもあるんだろうけど。ここでリアンに提案があります。今度から僕、ここに泊まっていっていいですか?」
「えっ……?」
「……だめですか?」
リアンが完全に予想外という顔をするものだから、つい不安そうな声を出してしまった。前に泊まればいいって、言ってくれてたはずなんだけどな。
これは決して自分の私欲のためではなくて、リアンのためなんだからと自分を奮い立たせる。それでも眉は落ち、おずおずと隣を見上げながら僕は続けた。
「毎回送ってもらうのが申し訳ないんです。僕が泊まれば、リアンはちゃんと仕事を終わらせて帰ってこれるんじゃないかと思って……それに」
「いいから!もちろんいい!」
「本当ですか!」
「ぐ……気を遣わせて悪いな。空いてる部屋は好きに使ってもらって構わないから」
食い気味な返事にほっとして、ぱあっと明るい気持ちになる。
どの部屋も綺麗にはしてあるし、来客用のベッドがある部屋をそのまま使わせてもらえば明後日から泊まれるだろう。
リアンに家まで送ってもらう間も僕はやっと先の見通しが立ったことにルンルンで、たまにリアンが周囲を気にしてキョロキョロと見回していたけど、虫がいたのかな?くらいに思っていた。
最近は寒さが厳しくなってきて、外を飛ぶ虫もあまりいないけど。
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