〜オメガは体力勝負⁉〜異世界は思ってたのと違う件

おもちDX

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44.懺悔

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 メグの家に泊めてもらった翌日、学校へ行くという彼にお礼を言って別れた。
 俺と母は、帰れるきっかけが見つかるかもしれないと再び公園に来ていた。父は座標を結んだと言っていたし、俺にもし魔力があるならもう一度転移魔法を引き起こせないだろうか。

「ファリアスで人が転移してくる場所は同じところでしょう?だからきっと、ニホンでも同じ場所へ行けばなにかある気がするの」
「うん……そうだね」
「あら?もしかして……メグくんともう会えないの寂しいんでしょう」
「……うん」

 あらあら、と母は嬉しそうに笑って俺を小突く。当時の俺はいまよりよっぽど純粋で、素直だった。

「私たちがここでメグくんに助けられたのもなにかの御縁だわ。もしかしたら、また会う日がくるかもしれないわよ?彼があの状況でも優しい心を持っていられるのは、芯が強いからだと思うの。だからきっと、今はひとりでも大丈夫。あんなに可愛くていい子だもん。いつか素敵な家族ができるに決まってるわ」
「……それ、おれじゃだめ?」
「ふふ、さぁね。まずはリアンも素敵な大人にならなきゃ。でも願い続ければきっと……叶うこともあるはず。お父さんみたいにね」

 帰りたくないと言えば嘘になるけど、叶うならメグも一緒に連れていきたい。彼をひとりで生活させる人たちといるくらいなら、うちで一緒に暮らしたらいい。
 そんな夢物語を脳裏に描いたけど、自分さえ帰れるのか分からない状況では何も言えるはずがなかった。

 異世界へ転移して戻れるなんて話、聞いたことがない。けれど父がやってのけたことも、やはり聞いたことのなかった話だ。あり得ないなんて言葉では片付けられない。

 朝の公園には誰もいなかった。来たときもメグ以外いなかったし、人気のない公園なんだろう。置いてある遊具は滑り台のみで、小さな砂場、あとは二台のベンチがあった。
 メグはいつもひとりでここに来ているんだろうか?それともいつもは友だちといて、あの日だけ偶然ひとりだったんだろうか?
 願わくは彼にもたくさん友だちがいて、家以外の場所では寂しい思いをしていないといい。

 そんな自分勝手なことを考えながら、俺たちは変化が起きるのを待った。ほんとうに俺の魔力が関係しているのなら、俺自身がその場にいることが重要だろう。
 数時間が経ってさすがに疲れてきた頃、ポツポツと雨が降り出した。うわ、最悪だ。雷雲もゴロゴロと音を立てている。
 二台のうち片方のベンチの上には屋根があった。おれは母に、そこで休んでくるように伝えた。それほど距離はないし何かあっても駆けつけられるはずだ。

 ――そう思っていた。

 母と離れた瞬間、ピカッ!と強い光に包まれ目が眩む。それが雷だと気づいた次の瞬間には――

 憔悴した父のいる研究室に戻ってきていたのだった。雷の落ちた音は聞こえなかった。

「リアン!」
「母さん!……ねぇ、母さんは!?」

 感動の再会どころか、俺は目の前から母がいなくなったことに衝撃を受けていた。それこそ、雷に打たれたように。

 ――結局、それから二人で何度も機械を弄ってみたものの母が戻ってくることはなかった。俺が近づいても回路は光らなくなり、うんともすんとも言わない。
 俺の持っていたらしき魔力はあのときほぼ使い切っていて、帰ってこれたのは、僅かに残った魔力と雷の電力が合わさって起きた偶然だろうと結論づけられた。

 しばらくして父は母が失踪したことと、その原因がこの世界の異世界転移魔法によるものであると発表した。地球と座標を繋いだこと、それが俺の魔力に反応して作動してしまったことは俺たち二人だけの秘密となった。

 数年後に父は転移時の魔力波を解析するプログラムを完成させ、あのときの表に出せなかった発見とは違った方向性で今度こそ脚光を浴びた。
 国から褒章を授与され、父は所長となり、研究所は立派なものに建て替えられた。

 しかし俺たち家族は幸せじゃなかった。父も俺も、それぞれ罪悪感を抱えていたのだ。
 父は研究に対し夢中になるあまり、間違った方向に進んでいたこと。研究室に家族を招いてしまったことを。
 俺は迂闊に未知の機械に近づいてしまったこと。それに母を巻き込んだ挙げ句、自分だけが帰ってきてしまったことを……
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