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二章_本編
十二話
しおりを挟む「……っ、はっ…はっ…!」
「あに…っ…、兄上! ご無事ですかッ!」
支え合うように湖の中心で浮かぶ二人。
そして酸欠で痛む俺の頭と必死な顔で叫ぶように言うヴィンセントの顔はとても見てられない程痛々しかった。
自分のせいで俺を落としてしまった、とでも思っているのだろう。
このままでは知らぬ間に自殺でもしてしまいそうだ。
そんなヴィンセントの頬に俺は自分の手を添えた。
「な、、あに…うえ?」
混乱しながらも此方を見つめるヴィンセント。
そんな彼は俺と目が合っているのが分かると顔を近づけてきて必死に謝ってくる。
「兄上、本当にすみませんっ…!あぁ、ヤッパリ駄目だ。 兄上に失礼な事ばかり…。こんなのでは呆れられても仕方がないですよね…。」
段々と目に涙を貯めるヴィンセント。
そんな彼に口を開こうとしたのだが縋るように服を掴まれ泣きながら俺の言葉を遮るように話す。
「…兄上、、。捨てないでっ…。不出来な俺を…、、見捨てないでください…、。」
そう言う姿はもう見ていられなかった。
それは決して小説では見られなかった。
だから俺は少しでも落ち着くようにヴィンセントを抱きしめる。
「あに…うえ?」
「ヴィン、君は不出来なんかではない。 そして私が君を見捨てるなんて必ずない。 」
俺は抱きしめた手を徐々に離し、また頬に右手を添える。
「…大丈夫。信じてくれ。」
「あにうえ……、、けれど兄上は俺を拒絶したじゃないですか……っ! 」
「拒絶?」
「俺の手を振り払い、突き飛ばしたじゃないですか!」
「ヴィン…。」
「確かに俺は女性みたいに可愛くもない。こんな大きい体に迫られても迷惑なだけだって……、、そんな事分かってる、。」
「俺は兄上の隣に立ってはいけないことぐらい…分かってますよ、、。」
息を吸わず勢いのままに言い切ったヴィンセント。その姿を見て一つ溜息をつき、優しく頭を撫でる。
俺の勝手な行動でここまで不安にさせたんだ。恥なんていうプライドはどうでもいい。
俺は意を決して何故突き放したのか説明する。
「ヴィン。よく聞いてくれ。私は……その…、、君を拒絶したのでは無い。」
「拒絶したのでは無い?…俺の事突き飛ばしたのは兄上だろう…?」
「……突き飛ばしたのは、、その。」
「…なんです、? 俺の事嫌いになったとかなんでしょう…… 、?」
「それは違う。君が…急に私の指を舐めるから…。恥ずかしくてだな。」
そう言いながら段々と声を小さくなる。
最後の方はもはや聞こえてるか危ういくらいの声だった。
「はず…、あにうえ?」
けれどもその言葉は届いていたわけで。
困惑しながらまだ理解出来ていないヴィンセントを横目に恥ずかしさで顔を逸らしたくなる。
「だから…その。私は君を避けたつもりは無い。それに君は私が見た人の中で一番愛らしいぞ。」
恥ずかしくて水に反射する自分の顔を見る。
その顔はとても真っ赤でそれを見てより一層恥ずかしさが増した。
(早くこの時間が終われっ…!俺は泳げないから逃げることすらッ…、、)
そんな事を考えていると急に目の前にいるヴィンセントが抱きつき、俺の首に頭を埋める。
突然のその行動に咄嗟に漏れそうになる声を堪え、ヴィンセントの方を向いた。
「ヴィン…?」
「はぁぁぁぁ、、兄上…それは反則ですよ、、。」
「は、? な、なにがだ。」
突然意味不明な事を言うヴィンセント。
不思議に思い尋ねようとした所で首に刺激が走った。
「んッ…! ヴィ…ヴィンっ?」
「では兄上は私にこうされて…」
俺の首元を優しく舌を這わせ、徐々に上に登らせていくヴィンセント。
「んんッ…!ヴィン…やめなさっ、!」
「……ん。嫌ではない…、どころかその反応を見るにもしかして喜んでいたってことですか?」
「ヴィンッ! 冗談は程々にしなさ…っ!」
そう言いながら右手で胸を押しのける。
が、その手は掴まれわざと聞こえるようにリップ音を鳴らした後、恥ずかしさで俺の視界に映ったのは妖しい笑みで此方を見るヴィンセントだった。
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