性格最低最悪の嫌われ悪女に転生したようですが、絶対に幸せになります!

あやむろ詩織

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8一夜明けて

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「う~ん!」

  大きく伸びをして起き上がる。

  昨日は散々な気分だったけど、ぐっすり眠れて、晴れやかな心地だ。
  心機一転、学園生活頑張っちゃうぞ!

  ふふ。今日は快晴に違いない。

  窓に近づいて、一息にレースカーテンを開く。

  真っ暗な空。
  朝まだきもいいところだ。

  前世、始発電車に乗って通勤していたので、ついつい習慣が出てしまったようだ。車内で、嵌ってた小説のドラマCDとか聴いて、朝からうへうへ言ったりしてた。今更だけど隣のおじさんごめんなさい。

  きっとアンはまだ眠っているわね。
  とりあえず、登校のための身支度をしておこう。

  寝室の続き間に、衣服や靴、宝石類が保管されているワードローブがある。

  両親と折り合いが悪いとはいえ、さすがに公爵令嬢なだけはあって、数多くの服飾品が揃っている。

  目当ての制服を見つけて、手早く着替える。

  第二王子が着ていたブレザーの制服の、女の子版だ。
  男子はズボンと揃いのネクタイだが、女子はスカートとお揃いのリボンを首元で結んでいて、とても可愛い。
  用意されていたニーハイソックスをはいて、膝上で細いリボンを巻き付けて結ぶ。
  指定のローファーを履いて、出来上がり。

  さて、次はメイクか。

  部屋の一画にあるドレッサーの前に陣取る。

  ファンデから、アイメイク、チーク、口紅まで、小道具は過不足なく色々と揃っているんだけど、私にいる?

  鏡に映った自分を見る。

  透き通るような美肌。
  長い睫毛は自然とカールしていて、ハッキリした二重と、色気のある切れ長な両目。
  唇はぷるんと厚ぼったくて、見れば見るほど、美少女だわ~。

  確かにね、昨日までは、こってこてに塗りまくるのが正義だとか、痛い勘違いしてましたよ。絶対、陰で舞台女優とか言われてたよ。舞台女優はね、舞台映えするためのメイクだからいいの。だけど日常で素人が同じ真似すると濃過ぎるのよ。

  でもね、致し方ない。
  ミリアにメイクの助言をできる侍女も、相談する家族も、突っ込んでくれる友人もいなかったんだから。

  だけど今なら分かる。

  すっぴんでこんな美少女な私に、濃い化粧なんか要らないし、髪型だって凝る必要ない。悪女イコール、巻き髪のテンプレやめてほしいわ。魔道具のコテで無駄にきつく巻いてた昨日までの自分、反省して欲しい。髪の毛、痛んでるわ~。香油をぬりぬりして、補修。ブラシで軽くとかして、背中に流す。リップグロスを塗って、完成。

  なんということでしょう!清楚な中に、色気が漂う天然美少女の出来上がりですわ。

  うん。いい。気に入ったわ。
  新生ミリアの爆誕ね。

  見た目が変わったことだし、生活も変えていきたいわ。
  そうなると、まずはあのアホ王子との婚約をなんとかしたいわ。

  昨日までは、なんて素敵な私だけの王子様!
  そんな私だけの王子様に手を出す女、絶対に許すまじなどと、第二王子に近寄る女生徒たちへ、嫌がらせすることに苦心惨憺していたが、前世の記憶が蘇って、客観的に自分を見れるようになると、どうして横恋慕なんて無駄なことに時間を費やしていたのかが本当に不思議になる。

  確かに、私こそが正当な婚約者だった。だけど、よくよく考えてみれば、第二王子は初めからミリアを好いていなかったのだ。

  婚約者になった十歳から五年間、一方的にミリアが好き好き言って押し掛けるだけで、第二王子はいつも詰まらなそうな顔をしていたし、手紙を送っても返事が返ってきたこともない。贈り物だって、貰ったことないし。月一回あるお茶会も、公務だとかで顔を見せた試しがないし、そもそも話しかけられた記憶がない。

  数える程も会ってないから、第二王子の人となりも、友人関係も、まったく分からない。

  これで、婚約者だって言えるの?

  ミリアは恋に恋してた。

  恋というフィルターを取っ払ってみると、婚約者と歩み寄る努力もせず、二股のまま幼馴染と恋仲になった挙句、元婚約者を問答無用で追放するって、ろくな男じゃない。

  どうせ将来的には婚約破棄されるんだから、その前にこっちから婚約破棄ね。

  それにしても、ミリアは腐っても、人類の平和に貢献した偉大な大魔術師と言えるはずなのに、小説内ではどうして一方的に婚約破棄される側だったのかしら?国内外で反発は出なかった?もしかして第二王子の独断?

  そもそも小説通りのミリアなら、一方的な婚約破棄には、徹底抗戦するはず。第二王子に執着したままなら、なおの事。莫大な魔力を有するミリアが本気で怒ったら、どんな事態を引き起こすか分からない。それこそ、破滅の魔女になって、世界を滅ぼそうとするほど。それくらい少しは想像できたはず。

  王国的には、有能なミリアを国内に留めて置きたい思惑もあったはずなのに。

  何か、破棄しても構わない状況の変化があったのかしら?

  う~ん。
  あぁ、もう!
  ラストまで小説を読んでから、転生できたら良かったのに。

  致し方ないわね。頭の隅っこで注意しておきましょう。

  それより、第二王子との婚約を解消した後はどうしようかしら。

  私の力が必要ないというなら、家から追い出されてしまうかもしれない。
  家の片隅か領地にでも置いて欲しいけど、無理そうなら自活するしかないわね。
  そうなったら、大陸を旅しながら、かつての仲間たちに会いに行くのも楽しいかも。

  ま、美少女だし、能力高いし、世界は広いんだから、何とかなるなる!

  テンションが上がった私は、まだ夜が明けてないことを失念して、ダイニングルームに向かって自室を飛び出したのだった。
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