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2 精霊王様
しおりを挟む薬師の私のお客様でもある、村の木工職人のお爺さんが作ってくれた、切り株風の椅子に座って、クッキーを摘まむ。
私は、精霊王様のご尊顔を思い出していた。
実は、何回かお会いしたことがある。
生まれた時より、国の守り神とも云えるような待遇で過ごす私のもとに、精霊王様は、折を見ては足を運んでくださったのだ。
1000を超える時を生きる精霊王様は、見目若く、この世のものとは思えない美貌を持つ。
「内緒だよ」と言いながら、精霊界の菓子を手土産にしては、面白い話をしてくれた。
例えば、精霊の生態や、世界の成り立ち、聖女のしくみとか。
他にも、エヴァンデール王国の始祖は精霊王ご本人様だったとか。
どうやら、恋した聖女を娶り、国を興したが、当時の精霊界では人間を娶るのが禁忌だったため、素性を隠していたらしい。
精霊王様の尊い血が入っている故、代々王族には精霊の目が宿り、聖女の存在がわかるという。
王都のことを考えると、嫌な思い出も蘇る。
私は頭を振って、壁掛け時計に目を向けた。
時刻は、そろそろ10時を回る。
「あ、そろそろ巡回に行かなきゃ」
薬が詰まったショルダーバックを肩にかけて、いそいそと出かけようとする私に、精霊から声がかかる。
リーダー的存在である、光の精霊ルルだ。
ルルは精霊の中では格が高いらしく、とても流暢な人語を扱う。
「今日はボク達、精霊界で会合があるからついていけないよー」
「ええ。月に一度ある、精霊王様主催の親睦会でしょう。もちろん、私なら一人でも大丈夫よ」
ふわふわ舞うルルに、私はにこやかに応じる。
精霊たちは、いつも心配性だ。
「本当かなぁ。アリアは、結構抜けてる所があるからなぁ」
「アリア、ドジっ娘~!」
「アリア、うかつ~!」
懐疑的なルルに、他の精霊たちも同意して、次々と囃し立てる。
こうなるともうお祭り騒ぎで、手がつけられない。
「精霊王様に、宜しくね~」
私の存在も忘れて、さざめく精霊たちを尻目に、私は村へ向かうのだった。
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