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第5話 裏表のない心
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僕たちは吉川先生と共に屋上に向かった。吉川先生が屋上の鍵を回すと、さらにもう一枚扉が現れた。扉にはダイヤル式の南京錠がかかっている。
「えっ、どういうこと?」
アカネが聞くと、
「設計上のミスで2つ扉が出来ちゃったんだって。」
そう言って吉川先生はダイヤルを回し始めた。
「あれ、何だこれ?」
吉川先生の手が止まった。南京錠を見ると、何か書いてある。
「屋上の恋を乗り越えて」
「きっと、この先にメッセージがあるってことですよ」
ヒマリが喜んだ。とりあえず、メッセージはあるようでホッとする。吉川先生は改めて南京錠のダイヤルを回す。
「もしかして4241(ヨッシー)とかじゃないでしょうね?」
吉川先生の手が止まった。図星らしい。吉川先生のパスワードがワンパターンしかないことは、クラスの全員に知れ渡っていた。アカネは呆れた顔をして、
「だから岡田たちに入られるのよ」
2枚目の扉を開くと、そこには正しく屋上があった。屋上の床は前日の雨で濡れていた。遠くに倉庫が見える。掃除道具が入っているのだろう。
「屋上って掃除する必要あるの? 誰も入らないんでしょ?」
アカネが言うと、
「僕もそう思うんだけどね……清水先生が一応、月に一回ぐらいはやっとけって言うんだよ。あの先生、昔から掃除にはうるさいんだよなぁ……」
清水先生は職員室で会ったベテランの先生のことだ。吉川先生はため息をついた。
そんな2人をよそに、ヒマリは梯子を昇り、貯水槽のもとに向かった。僕は塵取りを梯子の近くに置いて、ヒマリの後を追う。
僕とヒマリは貯水槽の周りをぐるりと回ったが、貯水槽には何も変わった点はなかった。ヒマリが肩を落とすと、吉川先生と箒を掃いていたアカネが、
「実は『言いたいことは何もない』っていうのがメッセージだったりしてね」
ヒマリは拳を握りしめながら叫んだ。
「でも、一生のお願いで、そんなしょうもないメッセージを伝えるよう頼むわけないじゃないですか!? 第一、誰にメッセージを伝えるのかも分からないんですよ?」
僕は貯水槽にもたれ掛かって、鼻を触りながら深く考えだした。カラスの鳴き声が聞こえた。目線を前にやると、サッカーグラウンドがよく見えた。
「変だ」
アカネが手を止めて、僕の方をじっと見た。ヒマリも振り返り僕の顔を見た。
「何が?」
「だって、ほら」
僕は前方を指さした。
「ここからちょうど真正面に見えるのは、野球場じゃなくてサッカーコートだ。野球場を見るなら、あっちにある倉庫からの方がいいだろうね。つまり『屋上の秘密』は、別にこの学校の屋上をそのままモデルにしたわけじゃないみたいなんだ。でも屋上にメッセージを残すんだったら、当然屋上には来ているはずだろう?どうも変だよ」
「ただの脚色じゃない?」
「そうなのかなぁ」
確かに、小説にそこまでリアリティーを求めるのは無粋かもしれない。しかし、倉庫を貯水槽にわざわざ変える必要があるだろうか?
「でも、南京錠に小説のタイトルが書いてあったんですから、屋上にメッセージがあるのは確かです。一体どこに?」
ヒマリがあちこち走り回っていると、出口近くでアカネが、
「こういうときは、『灯台もとぐらし』って言って、案外入口とかにあるかもよ。まあ、とりあえず、屋上は諦めて帰りましょう。寒くなってきたわ」
アカネは出口に向かい、扉を開けると「ん?なにこれ?」と言った。
アカネはで出口から顔を覗かせ、僕らに手招きする。僕らは急いで梯子を降りた。
出口に向かうと、アカネが南京錠を裏側にして見せてきた。
「牧玄弥 あなたのことがずっと好きでした」
太陽が沈み、赤みを失った空は青黒く染まった。甲高い声で鳴くカラスの群れ僕らの頭上を飛んでいった。
「えっ、どういうこと?」
アカネが聞くと、
「設計上のミスで2つ扉が出来ちゃったんだって。」
そう言って吉川先生はダイヤルを回し始めた。
「あれ、何だこれ?」
吉川先生の手が止まった。南京錠を見ると、何か書いてある。
「屋上の恋を乗り越えて」
「きっと、この先にメッセージがあるってことですよ」
ヒマリが喜んだ。とりあえず、メッセージはあるようでホッとする。吉川先生は改めて南京錠のダイヤルを回す。
「もしかして4241(ヨッシー)とかじゃないでしょうね?」
吉川先生の手が止まった。図星らしい。吉川先生のパスワードがワンパターンしかないことは、クラスの全員に知れ渡っていた。アカネは呆れた顔をして、
「だから岡田たちに入られるのよ」
2枚目の扉を開くと、そこには正しく屋上があった。屋上の床は前日の雨で濡れていた。遠くに倉庫が見える。掃除道具が入っているのだろう。
「屋上って掃除する必要あるの? 誰も入らないんでしょ?」
アカネが言うと、
「僕もそう思うんだけどね……清水先生が一応、月に一回ぐらいはやっとけって言うんだよ。あの先生、昔から掃除にはうるさいんだよなぁ……」
清水先生は職員室で会ったベテランの先生のことだ。吉川先生はため息をついた。
そんな2人をよそに、ヒマリは梯子を昇り、貯水槽のもとに向かった。僕は塵取りを梯子の近くに置いて、ヒマリの後を追う。
僕とヒマリは貯水槽の周りをぐるりと回ったが、貯水槽には何も変わった点はなかった。ヒマリが肩を落とすと、吉川先生と箒を掃いていたアカネが、
「実は『言いたいことは何もない』っていうのがメッセージだったりしてね」
ヒマリは拳を握りしめながら叫んだ。
「でも、一生のお願いで、そんなしょうもないメッセージを伝えるよう頼むわけないじゃないですか!? 第一、誰にメッセージを伝えるのかも分からないんですよ?」
僕は貯水槽にもたれ掛かって、鼻を触りながら深く考えだした。カラスの鳴き声が聞こえた。目線を前にやると、サッカーグラウンドがよく見えた。
「変だ」
アカネが手を止めて、僕の方をじっと見た。ヒマリも振り返り僕の顔を見た。
「何が?」
「だって、ほら」
僕は前方を指さした。
「ここからちょうど真正面に見えるのは、野球場じゃなくてサッカーコートだ。野球場を見るなら、あっちにある倉庫からの方がいいだろうね。つまり『屋上の秘密』は、別にこの学校の屋上をそのままモデルにしたわけじゃないみたいなんだ。でも屋上にメッセージを残すんだったら、当然屋上には来ているはずだろう?どうも変だよ」
「ただの脚色じゃない?」
「そうなのかなぁ」
確かに、小説にそこまでリアリティーを求めるのは無粋かもしれない。しかし、倉庫を貯水槽にわざわざ変える必要があるだろうか?
「でも、南京錠に小説のタイトルが書いてあったんですから、屋上にメッセージがあるのは確かです。一体どこに?」
ヒマリがあちこち走り回っていると、出口近くでアカネが、
「こういうときは、『灯台もとぐらし』って言って、案外入口とかにあるかもよ。まあ、とりあえず、屋上は諦めて帰りましょう。寒くなってきたわ」
アカネは出口に向かい、扉を開けると「ん?なにこれ?」と言った。
アカネはで出口から顔を覗かせ、僕らに手招きする。僕らは急いで梯子を降りた。
出口に向かうと、アカネが南京錠を裏側にして見せてきた。
「牧玄弥 あなたのことがずっと好きでした」
太陽が沈み、赤みを失った空は青黒く染まった。甲高い声で鳴くカラスの群れ僕らの頭上を飛んでいった。
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