とあるマカイのよくある話。

黒谷

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第四章「東の戦争。」

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 しんしんと降り積もる雪を、氷の城から眺める。
 曇り空は重く、赤と黒の空は見えない。
 真っ白な世界だ。
 白と灰しかない世界。
 外には魔物の姿もなく、他の悪魔の姿もない。
 こつ、と音がしてハイゼットが振り返ると、空だった玉座に女王が鎮座していた。
 彼女は幼い姿であったが、その薄紫色の美しい髪に飾られた装飾品は決して不釣り合いではなかった。
 ただ、彼女にあるべきものとして、そこに存在していた。


「では──こほん」


 軽く咳払いして、彼女はハイゼットを見つめた。
 まさに氷。
 淡い青の瞳が、穏やかに彼を見る。


「改めて。ようこそ、我が南魔王城へ。歓迎するぞ、とってもな!」


 美しい顔立ちが一変。
 子供のような笑顔になって、彼女は両手をあげた。


「お前が新しき帝王だな! ふふ、デスのいうとおり、わたしの待ちわびた者のようだ」


 なあ、とギルドは問いかけられて少し困った顔をした。
 彼の胸にはいまだ、違和感がある。
 何か、言い知れぬ、ざわざわとした予感が。


「キミが待ってたって……俺のことを?」

「ああ、そうだ。お前こそ私が待ちわびた鍵。この世界を平穏たらしめる者だ」


 そういうと、彼女、イーラはトントンと床を杖で叩いた。
 すると柱の影から、のし、のし、とシロクマが歩いてくる。手には大事そうに、水晶玉を抱えていた。
 ファイナルもゼノンもハイゼットも目を丸くしてこれを見つめた。
 シロクマに続いて、ペンギンたちが今度は忙しなく現れ、水晶を置くであろう青いクッションを運んでくる。


「ふふ、ありがとう」


 シロクマよりも早く彼女のもとへついたペンギンが、青いクッションを彼女の足元にそっと置いてまた帰っていく。
 それを見届けて彼女は、またとん、と杖で床を叩いた。
 すると青いクッションが載った床がまるで押し上げられるように盛り上がり、氷のテーブルが出来上がった。


「はい、どうぞ」

「ありがとう、クマお」


 シロクマが、青いクッションの上にそっと水晶を置く。
 それから彼女の頭をなでると、ペンギンと同じように退散していった。


「これでお前の到来を予知したんだ。わたしは一応そういう魔術もたしなんでいてね」


 ふふ、とイーラは愛しそうに水晶玉をなでた。
 水晶玉には、ハイゼットの顔が映し出されている。


「へえ……いや、違う。それより、その、今のは……?」


 たまらずハイゼットがシロクマたちを指さすと、彼女はとても自慢げに胸を張った。


「わたしの仲間であり、わたしの国の『民』だ。みんなわたしの魔力を授けてあるから、そこらの悪魔には負けないぞ!」

「じゃあ、悪魔じゃない、んだね?」

「どうだろうな。あんな動物を人間がみれば『悪魔だ』と、わたしのことを『魔女だ』と呼ぶだろうが……」


 ふむ、と彼女は顎に手を当てた。
 それから、試すような視線をハイゼットに向ける。


「お前はどう思う? 帝王。わたしやあの子たちは、お前の目にはどう映る?」


 そんな問いかけに、ハイゼットは少し唸った。
 そうして、それから、柱の陰でこちらを見つめているペンギンやシロクマらを見つけると、にこやかに手を振った。


「そうだなあ、どんなものでも、俺は友達になりたいなー、としか」

「ほう、友達」

「もちろん君たちがよければ、なんだけど」


 のそのそと、彼らが柱の陰からハイゼットの元へと歩いてくる。
 真っ白な狐や、アザラシ、果ては真っ白なライオン、小さなドラゴンまで。
 多種多様にとんだそれは、もはや『動物』の枠には収まらない。


「人間を知ってるってことは、イーラは外からきたんだね」


 この魔界には、人間という種族はいないに等しい。
 外側から入り込んだものが連れ込むことや、迷い込むものがあっても繁殖することはない。
 みんな遅かれ早かれ死ぬ。帰り道など、彼らにはないのだ。


「ああ。わたしも、その子たちも。みんなそうだよ」

「人間から逃げて?」

「いや、正しくは『争い』から逃げて、だ。彼らは戦争を好みすぎる。時には、わたしたちをも傷つける」


 イーラはそういうと、瞼を伏せた。


「実をいうとわたしは元は大人の姿だった。この子たちを守るため、世界を共に渡るためにこうなってしまったが、後悔はしていない」

「ここが、だれも立ち入らない、極寒の地だから?」

「ああ。わたしたちだけなら争いは起きない。誰も傷つかない。いい案だろう?」

「でも、キミは俺を待ってた」


 ハイゼットは寄ってきたそれらの頭を優しく撫でつけた。
 彼らはみな一様に心地よさそうにしていて、イーラは少し驚いたような表情になった。


「わたし以外には懐かないお前まで、帝王を気に入ったか」

「…………」


 彼女に声をかけられた白馬は、こくりと頷いた。
 彼はすり、と頭をハイゼットに摺り寄せている。


「ここに籠っているだけならきっと、俺を待つ必要はなかったよね。でも、キミはきっとそうじゃない結末を望んでる」

「そうだとも。わたしはこの真っ白な世界が好きだが、だからといって『他』が嫌いなわけじゃない。いつだって自由に、のびやかに。民に不自由を迫るようなことはしたくない」


 だから、とイーラは続けた。


「お前が、世界に平穏がもたらせばわたしはこの魔除けを解くつもりなんだ。いろんなものと仲良くできる、そんな世界が訪れるなら」

「イーラ……」

「どうだ、帝王。そんな世界は訪れそうか?」


 そう問いかけられて、ハイゼットは少し黙った。
 誰もが仲良くできる世界。
 悪魔も、そうではないものも。外から来たものも、ここで生まれたものも。
 みんなが、そうできる世界。


「難しいね」


 彼はそういって少し困ったように笑った。


「そうか。難しいか」


 イーラは少し肩を落としたようだった。
 彼女が望む答えではなかったのだ。


「でも俺はこの魔界に住むみんなを、仲間だと思ってる。皆のことを守りたいし、困ってたら助けてあげたい」

「それは、わたしやこの子たちも──他の悪魔たちも、か?」

「そうだよ」


 ハイゼットが頷くと、イーラは少し間を開けてから、氷のように冷たい視線を向けた。


「例えば、わたしがこんなふうにお前の仲間を攻撃したら──お前はどうするんだ?」


 とんとん、と彼女が杖で床を叩いて振るうと、天井のシャンデリアが変形して剣になった。
 そうしてそれは、ゼノンとファイナルの頭上で円を描くように回り始めた。
 落下したのは、それからすぐのことだ。
 ファイナルが刀を思い切り引き抜くよりも早く、それは、彼女たちの遥か頭上でバラバラになって、砕け散った。


「ほう」


 砕いたのはハイゼットだ。
 動物たちの真ん中で、彼は天井をじ、と見つめていた。


「では、これは?」


 今度は全域だ。
 彼らのいる大きな広間全部を覆うように、天井に氷の刃が現れた。
 そのままにしておけば、動物たちはおろか、彼女も、また怪我をするだろう。
 氷の刃は直後容赦なく落下したが、それらは天井から少し落ちたところで等しく止まっていた。


「ふむ」


 ゴルトの部下をとらえたときと同じ、見えない何か、が氷の刃すべてを受け止めていた。
 ほどなくしてそれは粉々に砕け、砕けた氷の刃と共に、きらきらと輝きながら落ちてきた。


「では」


 ほっと息をついたハイゼットの後ろ。
 すぐそばから、声がした。


「これは?」


 声の主は、今度はイーラではない。
 金属のこすれる音。──ギルドだ。
 彼はハイゼットの後ろから、容赦なく斬りかかった。


「くっ」


 しかし刃は届かない。
 ギリギリでまた見えない何かが壁を作っていた。
 ギルドはギロリ、とハイゼットを睨みつけた。
 彼の力は凄まじいものだった。見えない壁は押され、じりじりと、刃がハイゼットの方に近づいてくる。


「度重なる魔力行使など、疲れるだけ。最初からその剣を抜いて、我が主に刃を向けていれば、こうはなりませんでした」

「ううん、それだけは絶対ないな。俺の剣は、『敵』に向けるものだ」

「戯言を。そんな綺麗事は、並べるだけでは意味を成しませんよ」


 ばき、と音を立てて壁が崩れる。
 無防備になったハイゼットに、ギルドは思い切り刃を振り下ろした。
 ──はずだった。


「ハイゼット!」


 刃を受け止めたのはファイナルだった。
 続けて来る連撃を完璧にさばききって、ファイナルはハイゼットを掴むと共にギルドから距離をとった。


「馬鹿者め、今の一太刀、受けるつもりだったな」


 じろりとファイナルがハイゼットを睨みつける。


「ご、ごめんごめん。でも、それも手かなって」

「そんな手はない。覚えておけ、俺もゼノンもデスも、お前が傷つけられれば『仲良く』なんて出来ないぞ」

「うぐぐ。……そっか、ごめん」


 それじゃあ、と立ち上がったハイゼットはぐるぐると肩を回す。
 そうして、ぱん、と拳と手のひらを合わせた。


「大喧嘩後、二人ダイノジで床に倒れて笑いあい仲直りする作戦に変更する!」


 ニッと彼の口角が吊り上がる。


「なんだそれは、面白い作戦名だな!」


 イーラが両手を挙げると、再び氷の刃がハイゼット目掛けて飛び込んだ。
 ハイゼットはそれを、拳でぱあん、と砕き壊す。
 その真横からギルドが割り込むように剣を振り下ろす。
 それをハイゼットはくるりと飛び跳ねてよけると、ぐ、とギルドの肩に手を置いた。


「なっ」

「へへ、デス直伝!」


 そのままギルドの背後をとる形で着地した彼は。
 ギルドの胴をクラッチすると、そのままブリッジするように抱え上げ──地面に落とした。


「バックドロップ!」


 ドッという鈍い音と共に、ギルドは握っていた剣を落とした。
 それからずるずると、彼は床に寝そべるような形で倒れこんだ。
 同時に、ハイゼットも頭を抱えて倒れこむ。


「……普通、魔力で吹っ飛ばすとかするでしょう……」


 頭を押さえながら、ギルドは放心するようにつぶやいた。
 もちろん彼は身構えていた。けれどそれは、刃や魔力による一撃を防ごうとしたものだ。
 まさか、格闘技とは。


「えへへ……本当は殴り合って~とかやりたかったんだけど、キミ、剣持ってたし」


 ハイゼットもまた涙目である。
 彼もまた頭を床へぶつけていた。


「……不思議なものだな。ちょっと怪我をさせてやろうと思っていたのに、気が削がれた」


 いつの間にか、ハイゼットとギルドを見下ろすように、イーラが立っていた。


「わたしは本気だったよ。みんなを守るために」

「俺も本気だったからね、全員を守るために」


 ハイゼットとイーラはしばし見つめあうと、それから、二人とも堰を切ったように笑いだした。
 ギルドは、そんな主を、久しぶりに大きな声をあげて笑う主を、見上げた。
 子供のようで、子供ではない。
 彼女らしい笑い方。

(──ああ)

 ふっと、彼は自分の口角が緩んだのを感じ取った。
 そうしてはっと口元を抑える。
 騎士たるもの、常に気を張り、万事に備えるべきだというのに。
 今、自分の気は確かに緩んだ。緩んでしまった。


「いや参った! わたしの負けだとも。さあ、お前たち。わたしの中に『お還り』。……彼らのために、一肌脱ぐとしよう」


 動物たちは、ぞろぞろと彼女のもとに集まると、まるで雪が水に還るようにぱちゃぱちゃとはじけた。
 それからイーラの元に集まっていくと、その水は彼女の全身を覆って光を放つ。


「わ」


 ハイゼットは目を瞑った。
 そのまばゆい光は広間をあっという間に埋め尽くした。
 光がおさまったあと、そこに立っていたのは。


「では、行こうか」


 長い髪を頭の上に結び、雪の女王さながらのドレスに身を包んだイーラが、立っていた。
 幼い姿ではない。
 彼女いわくの本来──大人の姿で。


「行くって、俺まだ、何も」

「言っただろう? 予知が得意なんだ。お前たちがどうしてここを訪れたのかは、わかってるとも」


 歩き出した彼女の足元から、氷の花が咲く。
 彼女が差し出した手を、立ち上がって駆け寄ったギルドがそっと取ってエスコートした。
 二人が向かう先には、いつの間にか作り出された氷のドアがあった。


「なあ、デス。言っただろう? お前は私にもう一度会いに来ると」


 これで信じてくれるか? と、イーラはずっと壁に背をつけたままのデスに問いかけた。
 今までただじっと黙って動きもせず、言葉も発さず、ただ成り行きを見守っていたデスは、「あー」と唸ると、一言。


「そうだな」


 と呟いた。
 そうして壁から背を離すと、つかつかとハイゼットまで歩み寄って、その腕を掴む。
 無理矢理起き上がらせるとその背をばしん、と叩いた。


「ほら、いくぞ。あのドアの先は『東魔王城』だ。──準備はいいか?」


 ハイゼットは、ドアを見つめた。
 あの先に、いつか優しく微笑んでくれた、ゼノンの母、夜叉がいる。
 彼女と戦って、彼女をなるべく傷つけず、みんなを守りながら、勝利しなければならない。

(目の前のものすら救えないようじゃ、魔界まるごとなんて無理だもん)

 ハイゼットはぐっと拳を握りしめた。
 そのそばにすっとファイナルが寄り添って、デスの隣にゼノンが並んだ。
 ドアの前でドアノブを握って、イーラが振り返る。


「それでは、いこうか」


 ぎい。
 氷のドアはそんな音を立てて、ゆっくりと開いた。


 
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