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第10話|抑えられなかった気持ち、、、。
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翌日もその次の日も次の月も。
綾瀬は淡々と業務をこなし湊には必要最低限の対応しかしなかった。
そっけない、というより、、、
これがきっと“普通の綾瀬”なんだ。うん。そうなんだ。。。
そう理解し始めてきた、季節は十二月、、、。
コートの中に冷気が入り込んで思わず肩をすくめる十二月。
空気はきんと冷たくて、街も人も、少しだけ静かになる季節。
ちょうどその時だった。
廊下の先、四階フロアの自販機の前でコーヒーを買っている綾瀬の姿が目に入る。
(、、、あ。)
湊も同じくコーヒーを買おうとしていた。
ただそれだけの偶然。
けれど足が止まる。
誰もいないこの場での二人きりは気まずい。
何を話せばいいのか分からない。
そもそも話しかけていいのかも分からない。
(他の階の自販機に行こう。)
そう決めてその場を離れようとした、その瞬間。
ガタンッ!!
派手な音とともに足元のゴミ箱を引っ掛けてしまった。
「うわぁっ!!!」
倒れたゴミ箱から中身が床に散らばる。
廊下に響いた音がやけに大きく感じられた。
最悪だ。
よりにもよってこんな時に。
慌てて屈み込みゴミを拾おうとしたその時。
「、、、大丈夫か?」
低く落ち着いた声。
顔を上げるとそこにはいつの間にか近くまで来ていた綾瀬が立っていた。
「あ、いえ、、! すみません!!自分でやります!!」
反射的にそう答え手を動かす。
「手伝うよ。」
短く言って綾瀬も同じように屈み込んだ。
淡々と。
無駄な言葉もなく。
二人で並んでゴミを拾う沈黙の中湊の胸はなぜか妙に落ち着かなくて。
それでも完全に距離を置かれているわけじゃないって言うことだけは、はっきりと伝わってきた。
「ありがとうございます。」
そう言って湊は足早にその場を立ち去ろうとした。
この空気、この距離感で話しかける勇気は今の湊にはない。
もしここで冷たくあしらわれてしまったら。
もう二度と話しかけることができなくなる気がしたからだ。
振り向いて素早くその場を離れようとした瞬間。
「湊!!!」
パシッ、と。
伸びてきた手が湊の腕をしっかりと掴んだ。
「どうした?何かあったか?」
淡々とした声。
業務と同じ温度のいつもの綾瀬の声。
その一言が張り詰めていた何かを完全に切ってしまった。
「、、、何かあったか、ですって?」
思わず、声が強くなる。
「それは、、、それはこっちのセリフですよ!!」
振り返った瞬間、湊の中で押さえつけていた感情がもう隠しきれずに溢れ出てしまった。
「何があったんですか!?むしろこの数ヶ月間の間、、、俺、綾瀬さんに何かしましたか!?」
掴まれた腕を振りほどくこともできず感情だけが先に溢れ出る。
「なんで、、、なんで、そんな、、、そんなそっけない態度で接してたんですか!!!」
綾瀬は驚いたようにこちらを見つめていた。
(だめだ。。。
こんなふうに感情的に自分の気持ちをぶつけるなんて。
どうかしてる。
抑えろ。冷静になれ、俺、、、。)
そう思えば思うほど、胸の奥が熱くなって言葉が暴れそうになる。
湊は一度深く息を吸った。
「、、、すみません。離してください。」
できるだけ声を整えてそう言った。
「あ、、、いや。ごめん。」
綾瀬は少し遅れてそう答え掴んでいた手を離した。
「綾瀬さんは何も悪くないんです。俺が、、、勝手に、、、。」
言いかけて、言葉を飲み込む。
「、、、いいえ。何でもないです。今のことは、忘れてください。すみません。」
それ以上は言えなかった。
綾瀬の目を見ることもできず湊は何も言わずに背を向け逃げるように歩き出した。
背中に何か言葉が飛んでくる気がして。
でもそれは最後まで来なかった。
それが、かえって寂しさを募らせた。
綾瀬はただその場に立ち尽くして去っていく湊の背中を見送ることしかできなかった。
綾瀬は淡々と業務をこなし湊には必要最低限の対応しかしなかった。
そっけない、というより、、、
これがきっと“普通の綾瀬”なんだ。うん。そうなんだ。。。
そう理解し始めてきた、季節は十二月、、、。
コートの中に冷気が入り込んで思わず肩をすくめる十二月。
空気はきんと冷たくて、街も人も、少しだけ静かになる季節。
ちょうどその時だった。
廊下の先、四階フロアの自販機の前でコーヒーを買っている綾瀬の姿が目に入る。
(、、、あ。)
湊も同じくコーヒーを買おうとしていた。
ただそれだけの偶然。
けれど足が止まる。
誰もいないこの場での二人きりは気まずい。
何を話せばいいのか分からない。
そもそも話しかけていいのかも分からない。
(他の階の自販機に行こう。)
そう決めてその場を離れようとした、その瞬間。
ガタンッ!!
派手な音とともに足元のゴミ箱を引っ掛けてしまった。
「うわぁっ!!!」
倒れたゴミ箱から中身が床に散らばる。
廊下に響いた音がやけに大きく感じられた。
最悪だ。
よりにもよってこんな時に。
慌てて屈み込みゴミを拾おうとしたその時。
「、、、大丈夫か?」
低く落ち着いた声。
顔を上げるとそこにはいつの間にか近くまで来ていた綾瀬が立っていた。
「あ、いえ、、! すみません!!自分でやります!!」
反射的にそう答え手を動かす。
「手伝うよ。」
短く言って綾瀬も同じように屈み込んだ。
淡々と。
無駄な言葉もなく。
二人で並んでゴミを拾う沈黙の中湊の胸はなぜか妙に落ち着かなくて。
それでも完全に距離を置かれているわけじゃないって言うことだけは、はっきりと伝わってきた。
「ありがとうございます。」
そう言って湊は足早にその場を立ち去ろうとした。
この空気、この距離感で話しかける勇気は今の湊にはない。
もしここで冷たくあしらわれてしまったら。
もう二度と話しかけることができなくなる気がしたからだ。
振り向いて素早くその場を離れようとした瞬間。
「湊!!!」
パシッ、と。
伸びてきた手が湊の腕をしっかりと掴んだ。
「どうした?何かあったか?」
淡々とした声。
業務と同じ温度のいつもの綾瀬の声。
その一言が張り詰めていた何かを完全に切ってしまった。
「、、、何かあったか、ですって?」
思わず、声が強くなる。
「それは、、、それはこっちのセリフですよ!!」
振り返った瞬間、湊の中で押さえつけていた感情がもう隠しきれずに溢れ出てしまった。
「何があったんですか!?むしろこの数ヶ月間の間、、、俺、綾瀬さんに何かしましたか!?」
掴まれた腕を振りほどくこともできず感情だけが先に溢れ出る。
「なんで、、、なんで、そんな、、、そんなそっけない態度で接してたんですか!!!」
綾瀬は驚いたようにこちらを見つめていた。
(だめだ。。。
こんなふうに感情的に自分の気持ちをぶつけるなんて。
どうかしてる。
抑えろ。冷静になれ、俺、、、。)
そう思えば思うほど、胸の奥が熱くなって言葉が暴れそうになる。
湊は一度深く息を吸った。
「、、、すみません。離してください。」
できるだけ声を整えてそう言った。
「あ、、、いや。ごめん。」
綾瀬は少し遅れてそう答え掴んでいた手を離した。
「綾瀬さんは何も悪くないんです。俺が、、、勝手に、、、。」
言いかけて、言葉を飲み込む。
「、、、いいえ。何でもないです。今のことは、忘れてください。すみません。」
それ以上は言えなかった。
綾瀬の目を見ることもできず湊は何も言わずに背を向け逃げるように歩き出した。
背中に何か言葉が飛んでくる気がして。
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それが、かえって寂しさを募らせた。
綾瀬はただその場に立ち尽くして去っていく湊の背中を見送ることしかできなかった。
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