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初めての気持ち
しおりを挟む見守る様な優しい瞳で、此方を見つめるトパーズの瞳、そしてハチミツ色のサラサラの髪。
声にはなっていなかったが、唇が
"ほら、できた"
と小さく動いて、優しく微笑んでくれる。
初めて、家族と使用人以外で私に優しくしてくれた彼が、とても眩しくて、近くに居れるこの瞬間がとてつもなく幸せで、心が温かくなるのを感じた。
勿論、謁見するものが多く、時間は限られているので、あっという間に時間は過ぎてしまい、何だか寂しくもあった。
それでも素敵な人と出会えた夢のような時に感謝し、王太子殿下の婚約者に選ばれることはないだろうが、この時間は宝物のような時間になると感じた。
のだが、
時間が経つにつれ、数分の謁見の時を思い出し、胸が熱くなっては、寂しくなる。そんな日々を過ごしていた時に、侍女のナンシーが心配そうに声を掛けてきた。
「アリーシア様、ご気分が優れないようでしたらお休みになられては如何ですか?」
「ナンシー、大丈夫よ。ただあの日の事が忘れられなくて…思い出すだけで胸が苦しいの…」
「アリーシア様…、宜しかったらお話を聞きます。話す事で胸が軽くなる事もあるでしょうし。」
遠慮がちな申し出ではあるが、それでも幼い頃から一緒だったナンシーが、私を気にかけてくれるのが嬉しく、ポツリ、ポツリとあの日の出来事を話した。
「だからね、ナンシー、私きっと、サーシス様のとこをお慕いしているのだと思うの。2人だけの秘密よ?」
そう、言葉にして、初めてその気持ちに名前が付いた。
気づいた気持ちが嬉しくもあり、言葉にした事が恥ずかしくもあり、赤くなっているであろう頬を両手で抑える。
あらましの事を話し終えた時には、もう一度会えたなら、なんて考えてしまう自分自身を少し攻めてしまう。
王太子殿下の婚約者という大役が、自身に務まるはずがない、あれだけ素敵な方なら、きっと美しい方を婚約者に選ぶだろう。そう考えたところで、少し悲しくなったが、ナンシーが気遣ってくれた事が嬉しかったのもあり笑顔を作る。
「だけどね、陛下や、王太子殿下のお眼鏡に叶うものなんて、私、一つも持っていないの、だから婚約者に選ばれることはないと知っているは。けど、この気持ちを誰かに知っていて欲しかったの。」
そう告げれば、ナンシーは複雑な表情をしてから
「アリーシア様を選ばない様な男は、この世に居りません。」
と声高らかに宣言した。
気遣っての言葉だとは理解していたが、ナンシーの優しさが嬉しくて
「外でそんな事言ったら、不敬罪になってしまうから駄目よ?」
と軽口を叩きあった。
決して叶うことのない初恋、それでも初めての気持ちを教えてくれた王太子殿下に感謝し、この気持ちを宝物にしようと決めて半月程経った頃。
王城から書状が届いたという知らせを受けた。
これだけ時間がかかったのだ、今回はご縁がなかった…
という内容だとは分かっていても、妙にそわそわしてしまい、落ち着くことが出来なかった。
気持ちを鎮めようと、深呼吸をすれば、あの日の、王太子殿下とのやりとりが頭をよぎり、またドキドキしてしまい、刺繍や読者などで気を紛らわせた。
コンコン、とノックの後、ナンシーからお父様からお呼びだと告げられ、残念な結果を聞かされるのだと執務室に向かえば、神妙な面持ちのお父様と、お母様がそこには居た。
「アリーシア、王太子殿下の婚約者の件なんだが……」
お父様から告げられた話に、どこか夢見心地で、何かの手違いがあったのかと心配したり、足元が浮かびそうなほどに喜んだり、気持ちが上手く追いつかない。
「勿論、アリーシアが望まなかったら、お断りすることも考えている。」
そこまで言われて初めて、目の前の出来事と向き合う事ができた。
隣に立つのが私で、王太子殿下は笑われないかしら?
だけどこの機会を逃せば、今、叶いそうになった初恋は叶わずに、いつか王太子殿下の隣に他の女性がいるのを見て、傷つく事になるのではないかしら?
諦めたくないという気持ちが勝り
「私、王太子殿下の婚約者になりたいです。」
と返事をすれば、少し悲しそうなお父様と、嬉しそうなお母様が目に入った。
お父様が返書を送り、正式な婚約者になる為の書状が届くまでで半月、更にその半月後サーシス殿下の心遣いで、顔合わせをすることとなった。
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