アリーシア嬢の勘違い

むむ

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薔薇園の御茶会

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正式な婚約者として、初めてサーシス殿下と対面する事となり、アリーシアは嬉しくて何度も招待状を読み返していた。
勿論乗り気ではなかった舞踏会と違い、ドレス選びも率先して行った。

余りにも悩むアリーシアを見兼ねて、ナンシーが声をかける程だ。

「アリーシア様の美しい白銀の御髪を引き立たせるには、このスミレ色のドレスは如何ですか?」

そこは、流石長年の付き合いである。派手なものを好まない事を知っている彼女は、シンプルではあるが、シンプル過ぎず、品の良いドレスを選んでくれた。

「素敵…これなら私にも着れそう。」

ナンシーは、世辞で言ったつもりはないのだが、アリーシアは世辞だと思っているようだった。それでも、母のように、宝石やら何やらで輝くような煌びやかなドレスを選ばれなかった事によろこんだ。


全ての準備が整い、サーシス殿下との対面を翌日に控え、アリーシアは胸の高鳴りを感じていた。
サーシス殿下とお会いしたのは、舞踏会の時の一度きり、それでも、そのたった一度の優しさに救われ、恋い焦がれている。

夜になっても、なかなか寝付くこともできず、ナンシーがハーブティを淹れていれたのは、彼女がアリーシアの幸せを願っているからのことに思えた。

………

……



翌日は朝から大忙しだった、舞踏会の時同様、侍女に頭から爪の先まで磨き上げられ、
スミレ色のドレス、サーシス殿下の瞳の色と同じトパーズのアクセサリーを身につけて、神はハーフアップで編み込んでいる。

鏡を、とナンシーが差し出してくれたが、やんわりと断った。


着飾った姿でエントランスに進めば、既に両親が待ち構えていて、お父様は今にも泣き出しそうな顔をしている。

「ア…アリーシア…やはり心配だ、私も一緒に…」

「あら、嫌だは、貴方は娘の成長を喜ぶことのできない、器の小さな男なのですね。アリーの幸せを願おうと、今しがた約束したばかりなのに。」

よよ…と嘆くように、少しばかり芝居がかった様子でお母様が呟けば

「い、いや、冗談だ!アリーシアの成長を見守るに決まってる!」

と慌てた様子のお父様。

それをチラリと確認したお母様は、お父様に見えないようにこちらを観てお茶目に舌を出し、ウインクして見せた。

まぁ!お母様ったら…

馬車の用意ができたと報せを受け、両親と使用人達に見送られ屋敷を出る。

「アリー楽しんで。」

「何かあったらすぐに駆けつけるからね!」

「あら、あなた?」

「じょ、冗談じゃないか、マーシャ。ナンシー、アリーシアを頼むぞ。」

「畏まりました。」

ふふ、と笑い馬車に乗り込む。

「行って参ります。」

馬車に乗り込み、窓から手を振り続ければ、どんどん邸は遠くなり、朝起きてからの緊張が嘘のように解れていた。

「ナンシー、私、お父様とお母様の娘で幸せだは。」

「きっとお二人も同じ気持ちですよ。」


馬車に揺られること数十分。

王城に着き、迎えてくれた使用人によって庭園に案内された。
アリーシアが歩みを進めると、あまりの美々しさに、すれ違う文官や騎士団、城で働く使用人達でさえ息を吐き、彼女を見送っていた。

そんな視線には気付かず、アリーシアは御茶会の会場に辿り着いた。

そこは多くの種の花々が咲き乱れ、テーブルの用意された辺りには薔薇が咲き乱れていた。

素敵…

クロッカン邸の庭も、それはそれは綺麗に整備されているが、流石は王家の庭、邸では見たことの無い品種の花も多く見られた。

誘導され席に着くが、まだサーシス殿下のお姿は見られない。
まだ約束の時間より早いのもあり、花々を愛でながらその時を待つ。

その間にナンシーがアリーシアのお手製のお菓子クッキーを城の使用人に預けていた。


約束の時間になり、そこから10分、20分過ぎても殿下は現れず、お忙しい方だもの、と納得した。そこから更に20分。待ちに待った殿下がお茶の席に現れた。

席を立ち上がり、礼に則り挨拶をする。

「本日ー…」

「硬い挨拶は不要だ。私達は婚約者なのだから。」

と制されお茶会が始まった。

「待たせたかな?退屈だっただろう。」

「いえ、花を愛でておりましたので、お忙しい中お時間を作って頂きありがとうございます。」

「構わない。アリーシア嬢は花が好きなのか?」

「はい、力強く咲き誇る花々を見ていると、自身も強くあろうと思えるのです。」

「そうか、先日会った、ミランダ嬢も花が好きだと言っていたな。ブラウン公爵家の令嬢なのだが面識は?」

「お話をした事はありませんが、社交界で何度かお見かけした事があります。」

「彼女は素晴らしい人だよ。笑顔は可愛らしくて、大らかな性格、そして、彼女の体つきは見ていて和やかな気持ちになるよ。」

嬉しそうに彼女の話をする殿下に、複雑な気持ちになりながらも、アリーシアは笑顔で相槌を打ち、話を聞きながらブラウン家の令嬢、ミランダを思い出していた。


この国では王家の次に、王家に匹敵する力を持つと言われている三公爵があり、クロッカン公爵、ツヴァイ公爵、そして、ブラウン公爵がある。

その中でアリーシアと同じ年頃の令嬢が居るのは、ブラウン公爵だけなので、必要最低限でしか社交界に顔を出さないアリーシアでもミランダの事は知っていた。

確かにミランダ様はいつも笑顔で、可愛らしいお方だわ。

社交界での様子を思い出す。

壁の花に徹するアリーシアとは違い、ダンスはしないものの、料理の前で美味しそうに色々なものを食べ、多くの令嬢に囲まれている彼女の姿が目に浮かぶ。

サーシス殿下は、ミランダ様のようなお方がお好みなのかしら?

和むと言われていたミランダ様の体つきを思い出し、自身の体を見れば胸以外で彼女に対抗できる要素がないと気づいた。

そして、サーシス殿下は何故ミランダ様でなく、好みでない私と婚約しようと思ったのか?ミランダ様の気をひくために仕方なく?

そんな考えがよぎり、折角の殿下との時間なのに少し悲しく感じて来た所で、殿下の耳元で執事が何かを耳打ちし

「席を外す。」

とそれだけ告げて、殿下は離席された。




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