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残されたアリーシア
しおりを挟む「席を外す。」
と告げて、離席された殿下を見送り、そのまま静かに殿下を待つことにした。
ただ1時間ほど待っても、殿下は戻られず、辺りを行き来する使用人の小さな声から、ミランダ様がいらっしゃっていることが伺えた。
殿下は、ミランダ様を思っていらっしゃるのね。
湧き上がる悲しみに堪えていると、ナンシーが私の腰掛ける椅子の横に膝をつき、心配そうに此方を見つめ
「アリーシア様…今日はもう、帰りましょう?離席されたのは王太子殿下ですし、体調が優れないと言えば問題もないかと。」
確かに、体調が悪くなったと伝言を残し帰ることも許されるであろう。
それでも、と小さく首を振って
「お忙しい、サーシス殿下がお時間を作って下さったのだもの、そんなこと出来ないわ。」
い殿下がミランダ様をお慕いしているかもしれない、そう思うと頼りない声になってしまうが、それでもアリーシアは殿下を心からお慕いしているのだ。
目尻に浮かんでしまった涙を、サッと拭い、微笑みかけた。
上手く笑えたかしら?
そんな心配をしながら、殿下が褒められた、ミランダ様のような容姿になるため、努力でなんとかなる部分はないかと考えていた。
その時
『彼女の体つきは見ていて和やかな気持ちになるよ。』
と言っていた殿下の言葉を思い出した。
髪の色、瞳の色、顔立ちは変える事はできなくても、背丈の近いミランダ様と、同じような体型になる事ならばできるのではないかしら?
きっと殿下は私の体型を見て、がっかりされたに違いない。
「ナンシー、私、容姿は変えられないと知っているけど、体型ならば背丈の似ているミランダ様に近づけると思うの。だからミランダ様の様な魅力的な体型になれるよう手伝って欲しいの!」
殿下のお慕いするミランダ様の様に社交的でなければ、愛らしい容姿、はたまた魅力的な体型も持ち合わせていない、ならばせめて容姿以外は殿下のお好みに合わせられるよう努力しなくては。
とんでもない勘違いをしたアリーシアに、ナンシーは絶望の色を浮かべたが、アリーシアはナンシーが自身では到底ミランダ様の様な姿になる事はできない、と絶望して居るのだと勘違いしていた。
けれども、敬愛してやまないアリーシアの頼みとあって、ナンシーはその願いを叶えたいと言う思いと、慎重に行動しなくてはという二つの思いに頭を悩ませた。
そんなアリーシアの感情を察知したナンシーは、アリーシアの両手を握り
「必ずや、アリーシア様の魅力を王太子殿下にも分かって頂きましょう。その為に私、精一杯尽力させて頂きます。」
と告げれば
ブワッと花々が満開で一番美しい時のように、輝かしいまでの笑顔で
「ありがとう、ナンシー。貴方がいてくれてとても心強いわ!」
と感謝した。
それから数分の後、殿下が戻られ、遅くなってしまったことから、御茶会はまた後日改めてと呆気なく終了する事になった。
今は、馬車の用意ができるまでのひと時を、殿下と過ごして居る。
ナンシーが今後の打ち合わせがある、と殿下の執事を連れて何処かへ行ってしまったからだ。
「アリーシア嬢、愛称はあるか?」
「母にはアリーと呼ばれています。」
「では私もアリーと呼んでも?」
「!!はい!」
「私のことも、シスと呼んでくれ。」
「シス様?」
「うん。それが良い。」
お互いが、愛称を教えあい、ほっこりとした雰囲気になったところで、馬車の用意ができたと声がかかり、ナンシーと執事のネイトが戻り、和やかな雰囲気は終わりを告げた。
馬車に乗り込み、城を出て少し経ってから、アリーシアは二人きりの時の雰囲気を思い出しては頬を緩める。
そして、忙しい殿下といつ会えるか分からないのに、それまでに自身をミランダ様のように魅力的な体型にして、殿下に驚いてもらおう。
そう思い、初めてイタズラした子供が、隠し事がバレないのを見て喜ぶような、そんな気持ちでワクワクとしていた。
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