俺たちバグジー親衛隊

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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IV章 Don’t Look Back In Anger

PART9 100→200、200→400、10000→???

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あの時は、ボブがええ奴なんか悪魔なんかわかりませんでしたが、アコムの金利を見るたびに彼は天使だったと気づくことになります。

⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒

「アイス食べたいキャラを作っている」と見せかけて、「キャラ作りしてるって言われるキャラを作っている」ということ2人にばれたぼくは、恥ずかしさに耐えきれず、顔をうつむけました。

そんなぼくに、ボブは珍しく優しく声をかけます。
「とっしー、キャラ作りのことは気にするな。食いたいならもう一個スーパーカップ食えよ」

「けど、金ないんや」

「じゃあ、貸したるよ。食いたいなら借りてでも食えよ。なんぼ?」

「100円、貸してくれ」

「わかった。100円貸すから、200円にして返してな」

「ば、倍やと!?
アコムでも、金利20%とかやぞ!」

ボブはアコム社員より、ほんの~り優しい顔でぼくに言いました。
「別にええよ。
嫌なら4つ目のスーパーカップが食えんだけの話や」

「とっしー、やめとけ。あんなまずいアイス、4つもいらんやろ?」
きゃぷてんは制止しましたが、ぼくはそれを振り切り、カイジが慟哭するに訴えかけます。

「うまいとかじゃない、食べたいんや。
どうにかならんか、ボブ。
100円借りたら100円返そうぜ?
俺とボブ、小学校1年からの付き合いやん?」

「とっしー、甘いな。ビタ一文もまかりならんぞ。
世の中の厳しさをお前に教えてやらんとな。
だいたい、もう3つ食ったアイスを4つ目がほしいから借金するとか意味が分からん」

「わかった。200円にして返す」
しぶしぶ了承したぼくに、「はい、200円」と言って100円玉を渡したボブの顔は、将来の闇金王に見えました。


5分後、4つめのスーパーカップを平らげたぼくは、大きく息を吸い込んで言い放ちました。
「さむ!さむっ!!
あかん、もう一個買ってくるわ」

「はぁっ?!寒いなら食べるなよ」

「食べたいんや!!けど金ない!
ボブ、もう100円貸してくれ!」

「200円借りたら、400円にして返してな」

「まじかよ。ヤミキンか!
若くしてひどいやっちゃなあ、ほんま」
ぼくは借りる側の立場を忘れて暴言を吐きます。

「そんなん言うんなら貸さへんぞ」カチッとくるボブ。

「じゃあきゃぷてん、貸してくれ!」ぼくはきゃぷてんをあてにします。

「俺は絶対貸さへん」
こういうときのきゃぷてんは頑として応じませんので、ぼくはボブを頼らざるを得ません。

「わかった、ボブよ。400円にして返すから貸してくれ」

ボブはにやっと笑います。
「契約、成立や!」

パチッ
ハイタッチを交わしたあと、ぼくはボブから借りた100円玉を握りしめて、アイス売り場へ走ったのです。


5つ目のスーパーカップを食べているときでしょうか、ぼくの体に異変が起きます。
あんなに大好物だったスーパーカップチョコが、全く美味しくないのです。

得体の知れない茶色い液状のアイス、
シカのフンのような黒いチョコチップ、
掌に収まるちょうどいいフィット感、

今まで魅力的に思えていた全てがいやに思えてしますのです。

しかし、それでもぼくはもう一つスーパーカップを食べたくなってしまいます。
美味しくなかろうが、スーパーカップチョコを食べることはぼくの生きがいなのです。
ここに、スーパーカップ中毒者が誕生しました。

「ボブ…」

「わかってる。もう100円貸してくれっていうんやろ?」

「そうや。合計300円やから、600円返せばいいんやな?」

「ちゃうで。合計300円貸したときは、
500円の返済でええねん。割引や!」

「まじかよ!うっれしー!」

このやりとりを聞いていたきゃぷてんは「学生の貸し借りで利子を取ってること自体悪魔やろ」という意見を持っていましたが、それは彼の胸の中から出ることはありませんでした。

自分の欲望のためには借金を厭わないぼくですが、スーパーカップなどはかわいいものです。
社会人になると、20万円借りて海外旅行に行くようになるのです。

借りた100円で、冷え切った体に6つ目のスーパーカップをかきこむぼくに
ボブは悪代官のような笑顔をみせて語りかけます。

「とっしーは俺のこと、鬼やと思ってるやろ?」

「まあな。100円借りて倍返しなんて聞いたことねーわ」

「じゃあ、問題です。
俺に1万借りたら、なんぼで返さないといけないでしょうか?」

「1万借りたら…?
もしかして、10万!?」

「ちゃう」

「そうか、20万か」

「全然ちゃう」

「まあ、妥当に考えて、2万円やな。1万借りたら2万円返すんやろ?」

「ちゃうで。正解は、
1万と、500円でいい」 

「ええ!?1万と、500円!?
めっちゃ優しいやん!」

このやりとりを聞いていたきゃぷてんは「だから学生の貸し借りで利子を取ってること自体悪魔やし、高校生が1万の貸し借りすることないやろ」という意見を持っていましたが、正反対のことを口にしました。

「とっしーよかったな!1万円借りるときは、めっちゃ助かるなあ!」

このときのぼくは、1万円なんていう大金を高校時代に借りる日がくるなんて思ってもいませんでした。


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