診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第2章 外科の未来、その先へ

28話 莉子のアニメセミナー

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 家に帰ると、莉子がソファで横になっていた。

「莉子、どうしたの? 具合でも悪いの?」

気だるそうに少し目を開けたが、答えるのもしんどそうだった。

「なんか……疲れた……。上に、行けない……」

「うん、わかった。連れていくよ」

莉子を抱いて4階の彼女の部屋に連れて行き、寝かせた。

着替えさせないといけない。

ネグリジェを出して、着替えさせてから診察した。

呼吸も正常、熱もない。

昔ならこれで1週間は寝込むパターンだったな。

丈夫になったものだ。

それでもやはり疲れるのだろう。明日まで様子を見よう。

「莉子、お粥食べる? 持ってくるけど」

「ううん、いらない。寝る」

水だけ用意して飲ませた。

「じゃあ、携帯をそばに置くから、用があったら電話してね」

下に降りた。急がないといけない。

とりあえず夏に伝言メモを残して、桃香を塾に迎えに行った。

塾のそばで待っていると、桃香が玄関から出てきた。

俺の車を見ると、ニコッとして駆け寄ってきた。

なんでこんなにかわいいんだろう?

かわいい格好までしちゃって……。

頭には小さな花のついたカチューシャをつけていた。

莉子はこういうところが小まめなんだよな。

「お帰り~」「ただいまー!」

リュックを下に置いて、ベルトを締める。

「今日はどうだったの?」

「ええっとねえ、なんか難しかったかも……」

「へえ~、桃香でも難しいことがあるの?」

「だって、数学に入ったんだよ」

「はっ? 数学って……」

「今、小学4年なんだからまだ算数なんじゃないの?」

「それは終わったんだよ。算数は学年に関係ないんだって。だから気にしないでいいって先生に言われたんだ」

「へえ~、そうなんだ」

なんか言ってることがよくわからん。桐生さんに聞いてみよう。

「今日はね、ママが疲れて寝てるから、夕飯はパパと食べようね」

「うん、いいよ。ママは病気なの?」

「違うよ。疲れただけなんだって。だから大丈夫だよ」

家に帰ると、夏が帰っていた。

Welcome back, my superstar! You did amazing!お帰り~頑張ったねえ!

と言いながら桃香を抱きしめている。

照れまくってる桃香は、

Haha, you always say that! But thanks, I really tried today.ははっ、いつもそう言うよね!でもありがとう。今日は本当にがんばったよ

「さあ、夕飯にしようか?」

食卓を囲む。3人でも莉子がいないとやっぱり寂しいね。

夏「莉子はどうしたの? 俺、話したいことがあったんだよ」

「莉子は疲れがたまってるみたいだよ。あまり休んでないからね。ところで話ってなに?」

「セミナーのことだよ。大体、桐生さんと決めたんだけど、それでいいかどうか聞こうと思ってさ」

「ふ~ん、じゃあプリントしてテーブルにでも置いておけば? 元気になったら見るんじゃない?」

「うん、しょうがないね。寝込んでるんじゃ、催促できないしなぁ……」

「夏も疲れてるんじゃないか? 無理しないで寝た方がいいぞ」

「えっ?」

頬杖をついて俺をちらちら見ている。

「じゃあ、あとで風呂にでも入るか?」

うんと頷く。ふっ、そうか。そっちは元気なんだな。

よし、今日は心を無にしよう。何も考えない。

あっ、そうだ!

「夏、桃香が今日から数学を始めたらしいよ。どうなってるんだ?」

「へえ~、そうなんだ」

「えっ? 驚かないのか?」

「桃香ならありえるでしょう? 数学の面白さに気づいたんじゃないの?」

桃香は何か言いたげな表情で、黙々と食べていた。

「桃香は勉強が好きか? 嫌ならいつでもやめていいんだぞ」

「ええ~? ヤダよ。だってお医者さんになるんだも~ん」

「だってさ」

夏が肩をすくめた。

ふっと、夏を毎晩教え続けたしんどさが蘇ってきた。

あっ、でも今はあすなろ塾があるな。

よし、神頼みにしよう。助かった。

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