診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第3章 新たな人材を求めて

44話 理事の試練

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 地元の耳鼻科と眼科を誘致するために、最初の手紙やアプローチ文、メリットの説明などを、夏に宿題として出しておいた。

さて、出来栄えはどうだ?

「夏、手紙はできたか?」

「できました。これです」

手紙の文面がプリントされた紙を手渡され、目を通す。完璧な内容だった。

「これ、自分で書いたのか?」

夏「いいえ、桐生さんです」

はあ……。しばらく黙ってしまった。

「それで、アポイントを取った後は三人で行くことになるが、そのとき何を話すか考えているか?」

夏「ええっと……院長が話してくれるんじゃないの?」

「それで理事は黙ってるつもりか?」

夏「ええ……っと、そこまで分かんないよ。行ったことないんだもん」

「それは俺だって同じだよ。でも、どういうやり取りがあるかは想像できるだろ?

相手の心証を悪くしてもいけないし、プライドを傷つけてもいけない。

どういう方向に持っていけばいいのか、その練習はしておけよ。

向こうが何と言ったらこう返すとか、何かを聞かれてすぐに答えられない理事なんて、相手が不安になるだろ?」

「桐生さん、お願いなんですが、理事に台本を作ってやってくれますか? どんな応答にも困らないように、練習して鍛えてやってくれますか?」

桐生「はい、かしこまりました」

夏はぷーっとふくれたまま、部屋を出て行った。

はあ……。ダメだな。まだまだ甘えたが抜けてない。

次の成果を待つとしよう。

さて、久しぶりにイケオジの顔でも見に行くか。

地下へ降りてみた。イケオジだからな。

モデルクラブに入ったって最高に面白いけど、笑わないようにしないといけない。

ちょっと気まずいから、会うのもなんだかなあ~。

そうこう思っているうちに、見つかってしまった!

山野「あっ、お疲れ様です」

「はい、お疲れ様です。どうですか?変わりはありませんか?」

山野「ちょっとね、お話したいことがあったんですよ」

「はい、なんでしょう?」

山野「今度の新しいビルの件なのですが、11階建てになると、かなり患者さんも増えると思うんです。それでお願いがあるのですが、人員を増やしてほしい部署があるんですよ」

「はい、いいですよ。お話を伺います」

山野「じゃあ、ちょっと管理室でご説明しますね。メモしてあるものがあるんです」

そのまま地下の管理室へ向かった。

山野「これなんですけどね、自分の想像で恐縮ですが、シミュレーションをしてみたんです。

それで、必要な掃除スタッフの人数を割り出してみました。

常勤が見つかればいいのですが、パートだとロッカーが2倍必要になるので、その分スペースが必要になっちゃうんですよね」

メモを見せてもらった。

新ビル:常勤なら11名、パートなら倍

ドライバー1名、駐車場係1名

それぞれの理由も書かれていた。

「そうですね。常勤が見つかればいいですね。

すぐ募集して、建物が完成したら来てもらえるようにします。

あと、駐車場係ですね。分かりました。

それからドライバーですね?これはバスを増やしたいという意味ですか?」

山野「それだけじゃないんです。リスク管理です。

夏がすごく暑いので、こまめに休ませてあげたいのですが、乗りたい患者さんが多すぎて、休めないんですよ。

それで、かなりバテてるようなんです」

「それは申し訳なかったですね。ぜひ休んでもらいたいです。身体が一番大事ですからね」

山野「それとですね、バスは今後増やしますか?

実は、乗り切れない患者さんが結構出ているんです。

ただ、バスが走らない住宅地の中だと、気の毒で乗せてあげたいのですが、もう限界なんですよ。

どうしましょうか?

もしバスを増やす予定があるなら、ドライバーは2名にしていただきたいんです」

「よく分かりました。ドライバーと駐車場係はすぐ募集します。バスの件は少しお時間ください。社長に相談しますので」

山野「はい。分かりました。どうぞよろしくお願いします」

すぐ院長室へ向かった。

ああ~、夏にもこういう危機管理を学んでほしいよ……ったくさあ。


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