診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第3章 新たな人材を求めて

56話 ドライバー密着!三枝君の珍道中

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 今日は広報担当の三枝君(1階総合案内のイケメンくん)が、ドライバーに一日密着してくれた。

皆でパソコンの動画を視聴した。

長身でハーフ、多言語も話せる才人だが――取材初体験、少しばかり緊張気味。

「えっと……俺、ちゃんと撮れてますかね?」

カメラを構える手がややぎこちない。

それもまたご婦人方には新鮮に映るのか、笑顔が飛んでくる。

朝の便

「おはようございまーす!」

ドライバーの元気な声で、一日が始まる。

整形外科や外科のリハビリ患者さんたちが次々と乗り込んでいく。

膝に包帯を巻いた人、杖をついた人、術後リハビリに励む人――皆が口々に言う。

「これがないと通えないのよ。ありがたいわねえ」

病院に着くと、ステップで足元を支えるのは山野チーフ。

三枝君も慌てて手を差し伸べ、「あ、どうぞ! こちら気をつけて!」とぎこちなく声をかける。

ご婦人たちは「わー、イケメンさんだ!」とすっかり上機嫌。

カメラを持つ手より、差し伸べた手の方が人気だった。

柔軟な運用

本来は“決まったルート”があるはずだが――。
「体調が悪い日は電話一本で迎えに来てくれるの」
患者さんの笑顔に、三枝君は驚いてカメラを引いた。

ドライバーは胸を張る。

「院長が“困っている人は乗せて差し上げなさい”って言ってるんです」

三枝「ああ~そうなんですね。患者さんは助かりますよね」

三枝君が驚いている。小声で「コースを回り切れるのかなあ?」

帰り道のドラマ

リハビリ帰りはスーパーで途中下車する人が続出。

両手に買い物袋を抱えた人は、次の便がスーパーに来た時にまた乗る。

「袋が重くて大変だろうに……でも生活があるから仕方ないね」

院長の黙認で、この“スーパー寄り道”はすっかり日常風景になっている。

三枝君は、袋を抱えてステップを上がる患者さんを見て、「す、すみません、俺も持ちます!」と慌ててカメラを患者に預け、袋を両腕に抱え込んでいた。

その必死な姿に、患者さんも大笑い。

思わぬ同乗者

「今日は3匹かな」
「先週は5匹もいたよ」

――犬! 三枝君は犬が苦手らしい。

患者さんがペットを連れてくるのも、もはや名物だ。
しかも今日は2匹を三枝君が抱えて同乗。

「えっ……わ、わんこ……? ちょっと待ってください、暴れないで!」

もうカメラは患者さんが構えている。

ご婦人たちは「きゃー似合う~!」と大喜び。

三枝君は犬に顔をなめられ、必死で笑顔を保っていた。

病院前に着くと、山野チーフが颯爽とリードを引き取り、
「俺、犬の保安員だなあ」と苦笑。
その横で三枝君はぐったり座り込み、犬の毛だらけになっていた。

その様子を撮影していたのも患者さん。

夕暮れの便

夕方の最後のバス。
車内では疲れた顔の患者さんも多いが、声は明るい。

「今日は歩行距離が伸びたの」
「先生に褒められたわ」

ドライバーはバックミラー越しに、静かにうなずく。
その姿をレンズ越しに追いながら、三枝君はぽつりとつぶやいた。

「……これ、ただの送迎じゃないですね。生活そのものを支えてる……」

エンディング

画面に映し出されたテロップ。

「送迎バスは菜の花のもうひとつの居場所。
今日も犬と人とスーパーの袋を乗せて走り続ける」

映像はここで終わった。

「……どうですか、院長」

取材後、少し照れた顔で三枝君がかしこまっていた。

「うん、いいじゃないか。三枝君が一番頑張ってたな」

俺が笑うと、三枝君は耳まで赤くして「え、ぼ、僕ですか!?」と慌てた。

――どうやら今日は“患者さんより自分が密着されていた”ような一日だったらしい。

患者さんに撮影されまくってたもんな。ふっ。


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