診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
154 / 431
第8章 もっと寮が欲しい

152話 ニセモノを捜せ

しおりを挟む
 興信所からの返事はまだだったが、俺は先回りして対策を考えていた。

今回はお掃除スタッフ36名を、午前中だけで面接しきるつもりだ。

あらゆるケースを想定し、応援のスタッフにも声をかけて準備を整えた。



そして翌々日の金曜の夕方、興信所から連絡が入った。

「どうも派遣業者が感謝金狙いで数名送り込んでいるらしい」と。

――やっぱりな。

すぐに決めた。採用者には 内定確約書 に署名してもらう。
そこにはこう記してある。

感謝金は最初の給料で加算する。

ただし紹介者への支払いは、応募者が3か月以上勤務を継続した場合に限る。

これで業者の目論見は潰せる。だ。

ため息をつきながら思う。
まさか感謝金がこんなに狙われるとはな……。

ただ業者だけとは限らない。

新たに気づいたのは――36ということ。

社長に相談したら快く了承してくれた。

すぐに勤務できる人から順番に採用する方式だ。

最短でも2か月後には入職してもらえるだろう。

病院に清掃スタッフがいなければ、1日たりとも回らない。

シフトを回すためには、経験者を早めに確保して育てておく方が賢明だ。

本当は全員を揃えて、一度に教習をする予定だったが、現実は甘くない。

まあ、半年後には学生寮が完成する。その時にまとめてやればいい。

1か月もすれば、近くのワンルームマンションも準備が出来る予定だ。



そして面接当日の土曜日。

朝9時からの開始に合わせ、音楽室には長机を並べ、36席を用意した。

椅子の間隔も十分にとり、会場は緊張感に包まれている。

面接官は俺と理事、花井部長、山野課長、山科看護部長、宮本看護師長――計6人。

それぞれの流れと質問内容は事前に伝えてある。

さらにサテライトの技師や看護助手にも協力してもらい、会場の準備を整えた。

ドアには張り紙を掲げる。

《途中退席は放棄とみなします》

見張り役のスタッフには「笑顔で優しく応対を」と伝えてある。



最初に俺が立ち上がる。

「今日はお忙しい中、面接にお越しいただきありがとうございます。
これから菜の花病院の仲間になっていただく皆さんと、色々お話をさせてください。

まずお願いがあります。携帯電話の電源を切り、机の上に伏せてください」

会場で一斉にゴソゴソと音がする。電源を切る仕草が整ったのを見計らい、続けた。

「それからお伝えします。この場所は録画されています。ご了承ください。
また、面接が完全に終わるまでは中座できません。退席は放棄とみなします」

さらに机の上にはプリントを置いた。

《住所・氏名/面接日/紹介者名/居住地域/直近職場と退職理由/勤務可能日/夜勤可否/緊急連絡先》

これを書き込んでもらい、履歴書と相違がないか5人の面接官が確認する。

その間に、山科看護部長が口頭で病院や業務の概要を説明する。

もちろんプリント資料も配布済みだ。

周囲を取り囲むスタッフたちは、みんな笑顔。

その空気が唯一、応募者たちの緊張を和らげていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...