診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
157 / 431
第8章 もっと寮が欲しい

155話 報告書の中身

しおりを挟む
 封筒を開ける瞬間、会議室の空気はぴんと張りつめていた。

理事が指を滑らせ、中の書類をそっと引き出した。

「あぁ……なるほど。やっぱりねえ」

ページをパラパラめくっていた。

俺は待ちきれずに尋ねた。

「どうだったの?早く言って」

理事は一枚をテーブルに置き、全員に見えるように広げる。

そこには――驚くべき事実が記されていた。

「このグループの応募者たち、ほとんどが同じ派遣業者の登録者だったんですよ。

名目は“フリー清掃スタッフ”。でも実態は……感謝金目当ての“移籍要員”ですよ」

山野課長が顔をしかめる。

「やっぱり……。まとまって応募してきた時点で怪しいとは思っていましたが」

理事がさらに読み進める。

「驚くのはここだよ。中には、他の病院に“辞める”とすでに告げていながら、実際にはまだ働いている者もいるらしい。
つまり――どっちつかずで二重に登録してる」

山科看護部長が思わず声を上げた。

「そんな人たちがうちに来たら……すぐに辞めてしまうじゃないですか!」

「そのとおり。だから最初から、“すぐに来られる人”を優先にしたのは正解だった」

俺は深く頷いた。

宮本師長が報告書の別ページを指さす。

「でも、この数名は違うみたいです。地域の健康体操サークル出身で、以前から病院で働きたいと言っていた人たち。この人たちは本物ですよ」

「そうだね、間違いないよ、だって三輪さん達だって最初はフラダンスサークルから来たんだもんね。その次がよさこいチームで、その次は確か結構体操サークルだったと思うよ」

理事「あーそうだった。みんな仲良しサークルなんだよね?」

会議室に少し安堵の空気が流れた。

理事「要は、――業者が仕掛けてきた“ニセモノ”と、本当にここで働きたい“本物”が混じってたってことですね」

俺は全員を見渡し、はっきりと言った。

「じゃあ、これではっきりしました。理事はあとの不採用の連絡をお願いしますね」

お陰で本当にうちで仕事をしたい人をじっくり探せましたね。良い方に考えましょう。

でもまあ、危ない所でした。午後から看護助手やナースの面接が入るから、急いで皆さん、食事をしましょう」

静まり返った会議室に、皆の力強い頷きが重なった。

とにかく、社長が興信所を手配してくれたおかげで、線引きがはっきりできた。

ありがたいことだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...