診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第16章 光 ― スポットライトの向こうへ

304話 力尽きて

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 すべてを片付け、ホールを出たのは22時ぎりぎりだった。

「急げ急げ!」と、皆で大合唱しながら撤収作業を終えた。

物販をまだ見たがっていたファンもいたが、
「あとはネット販売をご利用ください」とお願いして、レジを清算したそうだ。
──もう、それはしょうがないよね。

メグちゃんの言う通り、公演前からネット販売を始めておいて本当によかった。
大したもんだよ。何かあげたいけど、みんなの羨望の眼差しが怖いからやめた。

そうだ、後日お菓子でも差し入れしよう。

アニメプラスと音楽事務所には百貨店で化粧箱入り菓子。
メグちゃんと、アニメプラスの女性スタッフと、かなピンにはRIKOのかわいい赤い缶入り焼き菓子。

それから舞台に出てくれた出演者全員。
こっちはアニメプラスと同じ百貨店の化粧箱入り菓子。

エリナさんには花束と、RIKOの赤い缶入り菓子
アシスタントの分と連れてきてくれた美容師さん3人分も皆赤い缶だ。

それに整体師の方にも赤い缶
物販を手伝ってくれた病院スタッフ16人と事務スタッフ3人は、
休日出勤手当てと時間外手当が付く。

それはそれとして、一人一人に引き出しに入れてあげられるように平たい菓子と夏のA4ファイルがプレゼントだ。
翌日、莉子にも手伝ってもらって、発送する分は終わり、百貨店の分は持ち帰って来た。


──で、肝心の夏はというと。
昨夜、俺に抱きついたまま、バタンと寝落ちしてしまった。

まあいい。ゆっくり寝てくれ。

買い物から帰ってきても、まだ夏は眠っていた。
24時間寝てもおかしくない疲労だろう。

とりあえず桐生さんに連絡した。
「夏が起きれそうにない」と伝えると、

「2、3日休んでもらってください。こちらは大丈夫です」との返事。
お言葉に甘えることにした。

夜になって、夕飯に起こそうと様子を見に行った。

──ん? なんかおかしい。顔が赤い。

すぐに診療カバンを出して熱を測る。

38.6度。……はぁ……またやってくれたな。

眠ったままで、トイレに行ったのかどうかも分からない。
「夏、水を飲むか?」と声をかけながら肩を叩いても、反応がない。

眉を寄せて、口が半開きのまま、呼吸が少し浅い。
頭を少し起こして、口移しで水を3回飲ませた。
それは飲めたから、まだよかった。

──ああ、もうしょうがないなあ‥‥‥。

すぐに点滴と留置カテーテルを入れた。
まったく、すぐこれだよ。もう……。

桐生さんに事情を説明し、とりあえず1週間休ませてもらうことになった。

きっとダンサーたちも驚いてるだろうな。

「えー、あれくらいで?」とか言いそうだ。
たぶん、ダンストレーナーも同じ反応だろう。

だって、みんな終演後もケロッとしてて、
高揚してるのか、大はしゃぎだったからな。

──こんなんで、地方ツアーなんて絶対無理だろ。

どうすんだよ、これからさ。

……VOXIVE(ヴォクシヴ)のメンバーにならなくて、正解だったよ。


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