診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
333 / 431
第17章 夏輝・人気と自由と……

331話 緊急避難・VOXIVE(ヴォクシヴ)

しおりを挟む
 それから1週間ほど経った。

朝礼を終えて、夏と桐生さんと院長室で打ち合わせをしていた。

すると事務所から桐生さんに電話がかかってきた。

「すぐ行く」――彼は短くそう言って電話を切った。

「院長、大変です。信じられないのですが、今、事務所にVOXIVE(ヴォクシヴ)のメンバーが全員来ているそうです」

夏「えっ?なんで?」

院長「とにかく、すぐ行こう」

俺たちは2号館10階の事務所へ急いだ。会議室に入ると、全員がそこにいた。

夏「KAI、どうしたの?みんなもどうしたの?何かあったの?」

KAI「夏、お兄さんも急に押しかけてすみません。こうするしかなかったんです。夏が前に“事務所を出ることがあったらうちにおいで”と言ってくれたから来ました。それに3人は具合が悪くて動けないんです。すみませんが、治療していただけませんか?」

「うん、わかった。じゃあ場所を変えよう。今、車いすを3台持ってきてもらうから安心して。夏、本館の5階に移動しよう。話はそこでゆっくり聞こう」

俺は本館の総合受付に電話し、車いすを3台用意してもらうよう頼んだ。
さらに山科看護部長と川瀬看護副部長。
外科応援中のナース竹野譲君、整形外科のナース岡本翔太君、放射線技師の本居君にも来てもらえるよう連絡した。

「今、応援が来るから大丈夫だよ」

KAI「すみません。お願いします」

夏「KAI、誰が具合悪いの?」

KAI「リュウは前に痛めた背中の筋肉がまた痛むみたいで、胸も苦しいって言ってずっと寝てるんだ。
ジュンは腹痛と下痢が続いて、体力が落ちてる。

ノアは精神的に参っていて眠れないんだ。やる気が起きないらしい。
それにトーマまで、喉を傷めて声がかすれてるし、膝も痛くて今は踊れないんだよね」

桐生「それでは仕事どころではありませんね」

KAI「はい、だから”できない”って言ってるのに、ずっと無理をさせるから、みんなこうなっちゃったんです。今、事務所ともめていて、俺たち寮に入ってるんだけど、“事務所を出るなら寮からも出て行け”って言われてるんです。

それで頭にきて、引っ越し業者に頼んでみんなの荷物をトラックに載せてもらって預かってもらってる。
とりあえず明日返事することにして、夏に何とかしてもらおうと思って来たんです」

夏「うん、わかった。それは任せて。何とかするよ。あと、貴重品とか契約書とか、マイナンバーカードは持ってき
た?」

KAI「うん、それは一番大事だから、みんなの分も持ってきたよ」

そこへ呼んだ助っ人たちが車いすを持ってやってきた。

山科看護部長「院長、これは一体どうしたのですか?」

「うん、とりあえず本館の5階に皆を運びたいんだけど、その前にみんな具合が悪そうだから、先に腹部と胸部。トーマ君は膝の左右もレントゲンで撮ってほしい。それと採血と尿検査もお願いします」

川瀬看護副部長「はい、採血と尿検査は承知しました」

本居「はい、承知しました。では先にレントゲンに行きましょうか?先生、すぐカルテでご指示をいただけますか?」

「はい、わかりました。前に健康診断をしたことがあるから、データは残ってるね。とりあえず助かった」

夏「じゃあ、手分けしてレントゲンに行きましょう」

――皆でレントゲン室へ向かった。

音楽事務所のスタッフたちは驚きのあまり、呆然と俺たちを見送っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...