診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
367 / 431
第18章 回復と未来を目指して

365話 リトグラフ・アシスタント採用

しおりを挟む
 夏が早速、インスタやホームページで莉子のアシスタントを募集した。

そして翌日、たー坊(代謝内科のバーンズ先生)から連絡があった。

そうだ、そういえばたー坊って莉子にリトグラフを教えていたんだったな。

昼休みに院長室に来てくれた。
「お疲れ様です。どうしたの?」

たー坊「ほら、莉子さんがアシスタントを募集してるでしょう?僕の生徒さんで今は教えてないんだけど、上手な人がいるんです。ただ絵だけだとなかなか自立出来なくてね。だから良かったら紹介したいなと思って」

「うん、頼みます。ぜひお願いしますよ。莉子が喜ぶよ。ありがとうね」

その後、莉子のアトリエにその人が訪ねて来た。
みんなで到着を待っていた。

ガラス戸の向こうで会釈している女性がいた。30代後半くらいか。
夏がドアを開けて案内してきた。清楚で控えめな感じがした。優しそうだ。

莉子が声を掛けた。
「初めまして、莉子です。今日はわざわざありがとうございます」

「初めまして。木内真亜子です。バーンズ先生からご紹介を頂きました。莉子先生のことはよく伺っていました。私の憧れです。本当に呼んでいただいて光栄です。ありがとうございます」と深くお辞儀をされた。

ほーっと俺と夏は見惚れていた。
莉子ってそんなに有名なのか?

夏がざっと事務所のスタッフを紹介した。これから全体的に触れ合うことになるからね。

莉子「何か作品をお持ちいただけましたか?」

木内「はい。5枚ほど、拙いのですがお持ちしました」

そして大きなファイルケースからリトグラフを取り出して見せてくれた。

莉子が絵をテーブルに広げた。

「わあ~きれい!色遣いがすごく素敵!」と莉子が一枚一枚丁寧に見て感心していた。

じゃあ、決まりでいいのかな。

理事「じゃあ、莉子、今度から来てもらう?」

莉子「はい。ぜひお願いします」

理事「はい、では採用です。条件についてはこれからゆっくりお話ししましょう」

木内「ありがとうございます。うれしいです。履歴書もお持ちしました。どうぞ」

見せてくれた。俺もちらっと見たけど、美大卒業だ。年齢は36歳。

理事「ええっと、木内さんは独り暮らしですか?」

木内「はい。そうです。小さなアパートなんですけど、絵で食べていくのってすごく難しいんですよね。だからバイトもしています」

理事が桐生さんと目を合わせて頷いた。

理事「良かったら、うちに寮があるんですよ。ビジネスホテルのワンルームなんですが、朝食が無料だし、寮費も無料です。もちろん給料は別途出ます。いかがですか?すぐ入れますよ」

木内「ええ??信じられない。そんなことってあるんですか?」

莉子「いいんですよ。入っちゃってください。リトが売れると忙しいから大変なんです。あとね、採用されると福利
厚生でお弁当が400円で食べられるんですよ。みんな昼夜注文しています。美味しいんですよ。いかがですか?」

木内「ええっと、400円って1日に800円だから贅沢に感じるんですけど、いいのかしら?」

莉子「夏、木内さんのお給料はいくらになるの?」

理事「そうだな、年収350万でいかがですか?それにボーナスは別途考えますよ。リトグラフの売れ行き次第ですね。住むところが無料だから、そんなに悪くないと思いますがどうですか?」

木内「ええ?そんなにいただけるんですか?信じられない……」

なんだか目がウルウルしていた。

莉子「木内さん。すぐバイトは辞めて来てください。そして早く引っ越してきてください。話はそれからにしましょう。理事が寮に連れて行ってくれますから、見に行かれると良いですよ」

もう涙を堪えられないようだ。かわいそうに。今まで大変だったんだね。

「理事、引っ越しの支度金を出してあげたら」

理事「もちろんそれはしますから、安心してください」

もう泣きっぱなしになってしまった。

これはちょっと止まらないぞ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...