診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
367 / 397
第18章 回復と未来を目指して

365話 リトグラフ・アシスタント採用

しおりを挟む
 夏が早速、インスタやホームページで莉子のアシスタントを募集した。

そして翌日、たー坊(代謝内科のバーンズ先生)から連絡があった。

そうだ、そういえばたー坊って莉子にリトグラフを教えていたんだったな。

昼休みに院長室に来てくれた。
「お疲れ様です。どうしたの?」

たー坊「ほら、莉子さんがアシスタントを募集してるでしょう?僕の生徒さんで今は教えてないんだけど、上手な人がいるんです。ただ絵だけだとなかなか自立出来なくてね。だから良かったら紹介したいなと思って」

「うん、頼みます。ぜひお願いしますよ。莉子が喜ぶよ。ありがとうね」

その後、莉子のアトリエにその人が訪ねて来た。
みんなで到着を待っていた。

ガラス戸の向こうで会釈している女性がいた。30代後半くらいか。
夏がドアを開けて案内してきた。清楚で控えめな感じがした。優しそうだ。

莉子が声を掛けた。
「初めまして、莉子です。今日はわざわざありがとうございます」

「初めまして。木内真亜子です。バーンズ先生からご紹介を頂きました。莉子先生のことはよく伺っていました。私の憧れです。本当に呼んでいただいて光栄です。ありがとうございます」と深くお辞儀をされた。

ほーっと俺と夏は見惚れていた。
莉子ってそんなに有名なのか?

夏がざっと事務所のスタッフを紹介した。これから全体的に触れ合うことになるからね。

莉子「何か作品をお持ちいただけましたか?」

木内「はい。5枚ほど、拙いのですがお持ちしました」

そして大きなファイルケースからリトグラフを取り出して見せてくれた。

莉子が絵をテーブルに広げた。

「わあ~きれい!色遣いがすごく素敵!」と莉子が一枚一枚丁寧に見て感心していた。

じゃあ、決まりでいいのかな。

理事「じゃあ、莉子、今度から来てもらう?」

莉子「はい。ぜひお願いします」

理事「はい、では採用です。条件についてはこれからゆっくりお話ししましょう」

木内「ありがとうございます。うれしいです。履歴書もお持ちしました。どうぞ」

見せてくれた。俺もちらっと見たけど、美大卒業だ。年齢は36歳。

理事「ええっと、木内さんは独り暮らしですか?」

木内「はい。そうです。小さなアパートなんですけど、絵で食べていくのってすごく難しいんですよね。だからバイトもしています」

理事が桐生さんと目を合わせて頷いた。

理事「良かったら、うちに寮があるんですよ。ビジネスホテルのワンルームなんですが、朝食が無料だし、寮費も無料です。もちろん給料は別途出ます。いかがですか?すぐ入れますよ」

木内「ええ??信じられない。そんなことってあるんですか?」

莉子「いいんですよ。入っちゃってください。リトが売れると忙しいから大変なんです。あとね、採用されると福利
厚生でお弁当が400円で食べられるんですよ。みんな昼夜注文しています。美味しいんですよ。いかがですか?」

木内「ええっと、400円って1日に800円だから贅沢に感じるんですけど、いいのかしら?」

莉子「夏、木内さんのお給料はいくらになるの?」

理事「そうだな、年収350万でいかがですか?それにボーナスは別途考えますよ。リトグラフの売れ行き次第ですね。住むところが無料だから、そんなに悪くないと思いますがどうですか?」

木内「ええ?そんなにいただけるんですか?信じられない……」

なんだか目がウルウルしていた。

莉子「木内さん。すぐバイトは辞めて来てください。そして早く引っ越してきてください。話はそれからにしましょう。理事が寮に連れて行ってくれますから、見に行かれると良いですよ」

もう涙を堪えられないようだ。かわいそうに。今まで大変だったんだね。

「理事、引っ越しの支度金を出してあげたら」

理事「もちろんそれはしますから、安心してください」

もう泣きっぱなしになってしまった。

これはちょっと止まらないぞ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

課長のケーキは甘い包囲網

花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。            えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。 × 沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。             実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。 大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。 面接官だった彼が上司となった。 しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。 彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。 心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

鏡の中の他人

北大路京介
恋愛
美容師として働くシングルマザー。顧客の一人が、実は自分の元夫を訴えている原告側の弁護士。複雑な立場ながらも、彼の髪を切る親密な時間の中で、プロとしての境界が曖昧になっていく。

親愛なる後輩くん

さとう涼
恋愛
「神崎部長は、僕と結城さんがつき合っているのを知りながら彼女に手を出したんですよ」 雨宮一紗(33歳)。離婚して3年。 同じ会社に勤める元夫・神崎敦朗と復縁したくて、ある日食事に誘ったら、神崎から恋人がいると知らされる。相手は20代の部下・結城史奈だという。 さらに神崎のもうひとりの部下である蓮見閑《しずか》から、彼女(結城)を神崎に略奪されたと聞かされてしまい、大きなショックを受ける……。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...