診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第18章 回復と未来を目指して

374話 合奏練習

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 ようやくファッションショーも無事に終わって、胸の奥がふっと軽くなった。
加納君達も本当に良くやってくれた。

青山先生や、元救命センターの高原先生たちが参加してくれたのがうれしかった。
菜の花を楽しんでくれたんだね。

それに青山先生も、どうしようかなあなんて言っていたけど、結局出てくれた。

少し話したいことがあって、サテの3階に行った。
患者さんが切れたのか、スタッフと談笑していた。

俺の顔を見るとニヤッとした。
「お疲れ様。医師を募集する件は聞いてくれた?」
「聞きましたよ。院長が手伝ってくれるのかな?と思ってたんですけどね」

「ごめんね。こういうことになっちゃったんだけど、青山先生が体調不良の時は手伝うよ」
「わー。体調不良にならないと駄目なんですね」

ふふふ「そうらしいよ。ごめんね」

川瀬師長がちょうどいた。
「院長珍しいですね。今音楽室で合奏をやってるんですよ。結構うまくなってるから覗いてやってください」

青山「院長も参加すればいいじゃないですか?イケメンが参加すると皆盛り上がりますよ」

笑った。「じゃあ、青山先生が参加したら俺も参加するよ」

川瀬「分かりました!ふたりとも5分でもいいから参加してください」

音楽室に連れていかれると、ちょうどクリスマスソングが響いていた。
俺達が入ると「ええ?」と皆が振り返った。

川瀬「岡田さん、お二人が合奏に参加されるそうですよ。10分だけですけど」

音楽療法士の岡田奈穂さんが「わぁ、うれしい。今キーボードを出しますよ」

はあ?もう俺知らない。青山先生が笑いを含んだ顔で俺を見ていた。
あっという間に二人の前にキーボードと楽譜が置かれた。

「なんか適当に音を出してください」と、超いい加減なことを言われた。

青山先生は笑顔で落ち着いていた。どういうこと?

岡田「さあ、皆さん、もういちど“きよしこの夜”を最初からやりますよ」

メロディーとピアノ伴奏譜とコード進行が書いてあった。

公認心理士の三浦さんがピアノ伴奏をしていた。
前奏が始まった。しょうがない。

利用者は皆メロディを奏でたから、俺は伴奏でいいのかな。
左手でコードのベースの音をオクターブで出し、右手でコードをリズムに合わせて刻んだ。
昔ちょっとだけピアノやギターをやったことがある。

あれ? あっという間に終わったんだけど……。
自分の演奏に必死で、青山先生を見られなかった。

川瀬師長がそばに来て、
「院長、やるじゃないですか!もうメンバー決定ですよ」
すると皆がわーっと歓声を上げて拍手してくれた。

両手で顔を隠した。恥ずかしい。笑いが止まらない。思わず赤面してしまった。

「青山先生は弾いてたの?」
「いいえ、僕は院長を見てました。やりますねえ~」ぷっ、全く油断も隙もない。

川瀬師長「岡田さん、院長はメンバーに入れてくださいね!」

岡田「はい。かしこまりました。他の曲もお願いしますね。クリスマスコンサートをやりますからね」

他のスタッフが何枚か楽譜を持って来た。
みんなニヤニヤしていた。だまされた!

岡田「じゃあ、せっかくですから、今度はジングルベルをやりますよ」

そこでもうピアノ伴奏が始まってしまった。
え~、スタッフがすぐ楽譜をセットしてくれた。
そしてスタッフたちがベルを振り始めた。

初見だ。でもコードは簡単だった。楽譜を見るのに必死で指揮を見られなかった。
ピアノ伴奏だけが頼りだった。

そうやってふうふうしながらやっていると、いつの間にか終わっていた。
気が付くと青山先生が消えていた。診療に戻ったそうだ。

5曲くらいか。
一通り終わると岡田さんが、
「院長用に楽譜を作りますから、ぜひ本番もご参加くださいね。もう皆大盛り上がりですからね!ありがとうございます。本当に本当にうれしいです!!」

「お願いしまーす!」と皆に揃って言われたら、もう断れない。

ああ、来るんじゃなかった。

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