診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第18章 回復と未来を目指して

377話 莉子の壁画の絵

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 今日のコンサート会場は1500名収容だ。

さすがに福利厚生にはならなかったが、社員優待としてチケットが2割引きになったそうだ。
日曜だけの公演だから、結局350名は菜の花のスタッフが見に来ているらしい。

今回はバスの手配はなし。
ただし、席は優先的に良い席を確保。さすがだね。

前回は写真集発売記念で、写真集付きのチケットだった。
今回は中身が豪華なパンフレット付のコンサートになった。

パンフレットには夏の写真や筆文字がアートな雰囲気で散りばめられ、画像のそばには木内さんの詩も添えられていた。
読むだけでも素敵だ。このパンフレットはネットでも販売しているそうだ。

ところで、先日紹介された裏方スタッフは覚えにくいので、紹介された後は覚えている限りの特徴を名刺に書き込んでおいた。“面長眼鏡キリン風”とかね(笑)

ただ、部長級の統括責任者と副部長の佐藤さんと田中美香さんは覚えた。
佐藤さんは長身の堂々たる体格で、いかにも切れ者という印象。

田中さんはにこやかで親しみやすい雰囲気を感じたが、すごく気が利きそうな印象だった。

もう夏の音楽事務所は見慣れない顔ぶれが一気に増えたから、なんだか行きにくくなった。
よそんちって感じだ。行くなら莉子のところだけだね。

でも莉子も今は2号館ではなく、屋上のアトリエで過ごすことが多くなった。
落ち着くんだって。静かだもんね。

朝礼が終わって郵便物を処理したら、もう莉子のアトリエに行くことにした。
ドアをノックして開けると、「あら、来たの?」と莉子がにこっと笑顔を見せる。

木内さんがせっせとリトグラフの整理をしていた。
「おっ、随分出来上がったんだねえ」

木内「はい、頑張りました。絵が素敵だからやりがいがありますよ」
うまく進んでるんだね。良かったよ。

週末は夏のコンサート。そこで販売するリトグラフの出荷準備だそうだ。
どれも額入り。今回の目玉は夏の日常を切り取ったデッサン。
顔を大きく描いたものもある。

でも夏はヴォルクスの半身ヌードのデッサンを見て、うらやましかったらしい。
「俺も描いてくれるんでしょう?」と莉子に迫ったが、
「だってキャラが違うでしょう?合わないよ」
撃沈だったね。

忙しいところをどうかなと思ったが、ちょっと聞きたいことがあった。

「莉子さ、毎日忙しいとは思うんだけど、壁画はどうするの?絵が出来てるなら、季節の良いうちにプロ集団に任せたら?デザインは莉子なんだから、莉子が手を出さなくてもいいじゃない?監修だけすればいいからさ。時々様子を見るだけでいいんだし」

「そうだね、やりかけで気になってるんだけど、リトグラフで忙しくてさ。でも冬になったら外に出るの嫌だよね?」

「うん、莉子が風邪を引いても困るしね。今頼んでいつ頃になるのかだけでも聞いてみたら?」
「うん、わかった。じゃあ、聞いてくれる?」
「良いよ、佐伯さんにお願いするよ。莉子の第2マネージャーでしょう?」
「そう、夏が忙しいからさ、佐伯さんにお願いするわ」
「じゃあ、出来上がった絵を預かるよ」
「わかった」

そういうわけで、絵を預かって2号館の事務所に行った。
事務所はなんだかめちゃくちゃ忙しそうだった。

俺が行くと、桐生さんが「何か御用でしたか?」

「忙しいところをごめんね。佐伯さんに莉子の壁画をやってくれるプロ集団に連絡してほしいんだよ。いつ頃になるかさ。冬になると莉子が風邪を引くと思ってね」

桐生「ああ、そうですね。それはありますね。分かりました。連絡しておきます。分かり次第お知らせしますね」

「はい、お願いします。これは出来上がりの絵なんだけど、預けても良いかな?」

桐生「はい、拝見します」

すると、皆の注目を浴びて、いっせいに壁画の絵を見に集まった。

「わあ~すごい。素敵!」メグちゃんが真っ先に褒めてくれた。

佐伯「夢がありますねえ~森の中ですか?小道があって、小さな川があって、かわいい動物や小鳥がいっぱいで、小屋の入り口が病院の入り口になってるんですね?」

桐生「ということは、病院の入り口に外からちょっと造作を入れないと合わないですね?」

「うん、そうかもね。まあ、相談して出来る範囲で良いと思うので、よろしくお願いしますよ」

桐生「はい。承知しました」――なんだか桐生さんがうれしそうな表情だった。

この絵は、多分誰でも気に入ってくれるような絵だと思う。

もしかしたら、玉川上水の緑道を歩いたのが少しヒントになっているのかなと思った。


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