医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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999話 4階倉庫の棚卸

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 寮生たちの引っ越しもすべて終わり、各階のカウンターや受付、机、パソコン類、診療道具の設置など、必要なことはすべて前倒しで完了した。

通路の養生もはがし、清掃スタッフ総出でワックスをかけ、窓ガラスもぴかぴかに磨き上げてもらった。

今日は最後の防犯カメラの設置作業が進んでいる。

1階から見渡しても、もう完璧に美しく整っていた。

受付、待合室、医局、相談室、診察室が二つ、処置室、静養室――どれも申し分ない。

ウォーターサーバーも設置された。

あれほど雑然としていた建物が、いまや「小さな総合病院」と呼んでも差し支えないほどに整った。

2階はもちろんの事、すべてが美しく整った。

休憩室のドリンクバーのメンテナンスには本館の売店スタッフが来てくれる。

また大型冷蔵庫も置かれ、ここでサテライト用のお弁当を受け取れるようになった。

菜の花フーズの人が直接届けに来てくれるのだ。

 本館6階の二部制とは違い、こちら「サテ棟」はゆったりとしている。

交流のために、互いにどちらの施設を使っても良いというルールにしてある。

 3階の「菜の花の丘」も見事に整い、誰にでも自慢したいほど美しい。

宮本看護師長がその役割を見事に果たしてくれた。今後も大いに期待できそうだ。

4階の物流部門も、寮母の西村さんとサブの看護助手の吉岡君の努力で完璧に整った。

そのおかげで今日は午後から、医師以外のサテ棟スタッフ総出で棚卸を行う。

まあ、こういうときに医師を外すのは、本館でしっかり稼いでもらいたいからなのだけどね(笑)

ただ、たまにその「気づかい」を「仲間外れ」と感じる医師もいるらしい。

誰かがチャットで愚痴っていたのを、俺も小耳にはさんだ(笑)

――そういう一面も人間らしくて、ちょっと可愛いとさえ思う。

 さて、棚卸だ。ひもを貼って区分けし、担当者が2名ずつ組んでバーコードをかざしながら読み上げていく。

これで出発時には数字が完全に合うだろう。

どのストック棚にも住所があり、入り口には全体地図が掲示され、何がどこにあるか一目でわかる。

さらに品名別一覧もある。まさに「これでもか」というほどの分類だ。

「これはナースだからこそ出来るんだよな」と西村さんに言ったら、

「いえ、それほどではありません。データを入力したら、AIがまとめてくれました」

……ちーん。

――時代はここまで来たのかと、笑うしかなかった。

オープンセレモニーはいよいよ明後日。

明日は最後のシミュレーションとして、フロアごとに診療動線の確認を行う。

ナースが患者役、事務が受付役を担い、救急スロープからストレッチャーを搬送して処置室に入る訓練もする予定だ。

車いすも準備済み。もう何も言うことはない。

――夏がやって来た。

「院長、すごくないですか? 2日分も前倒しで完了ですよ。驚きですよね!」

「ふっ、俺は驚かない。うちのスタッフなら、どんなことだって可能にする」

 本当は胸を張りたいくらいに驚いているのに、口では強がってしまう。

「あれ? ずいぶんサテ棟に肩入れしてますねぇ」

「肩入れじゃない。俺が引っ張ってもらっているんだよ」

「へえ~……ふ~ん……」と、夏にじろりと二度見された。

「な、なんだよその目は。俺だってサテ棟のスタッフだぞ」

「いえいえ、院長が照れてるのを見たのは初めてだな~って」

「……おい、からかうな」

フフフ、結局二人してヘラヘラ笑ってしまった。
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