医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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245話 白衣

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 川瀬に言われて久しぶりに白衣を着た。休職中だから必要ないんだけど、名札はまだ生きているんだあ。これでドアが開くもんな。

それと、あの事件があったからだと思うんだけど、なんだか病院内の一般の通路やラウンジにいるのは気が進まないんだ。

なんだか俺がちょっとした有名人になっているようで、通路を歩いていると知らない患者さん達から話しかけられるんだよな。俺はこういうのが本当に苦手なんだよ。

もう知らない人に会いたくないから、いっそスタッフ用の通路やエレベーターに乗った方がマシなんだ。

そうこうしている間に、莉子の夕食の時間になった。運ばれてきたんだけど、莉子はどうかな?
「莉子、夕飯だよ。食べようよ」 

莉子が憂鬱そうに「う~ん……、なんだかあまり食べたくない。それにちょっと下の方が変なんだよ。違和感があるし気持ちが悪いんだ。それにちょっとおなかも痛いんだもん」

そういうから、寝ているままの莉子を抱きしめてやった。「違和感があるよね、今子宮の入り口を広げようとしているから、莉子にはちょっとつらいね。痛みもあると思うよ。それはしょうがないんだ」

でもちょっとは食べないと、明日の力にならないから、頑張って食べようよと言うと、起き上がって、少しだけ手を付けて食べた。でもほとんど残っている。これはまずい。

家から何か作ってこないと駄目かな。あとバナナだったらいいかな。そうだ!下の売店に行って買ってこよう。

「莉子、バナナは食べられる?ヨーグルトやアイスクリームや果物はどう?なんでも買ってきてあげるよ」

「う~んとわかんない。要らない」と言うと目をつぶった。疲れたようで眠りについた。しょうがないね。つらいもんね。頬にキスをした。

俺は夕飯を食べようと思って、久しぶりにスタッフ用の食堂に行った。なんと岩城が来ていた。

「おお!北原どうした? 元気だったのか?もう復帰したのか??」といろいろ一度に聞いてきた。ふふふ。

正直、今は元気過ぎる人に会うのは億劫だ……。しょうがない。

「さっき莉子が出産のために入院したんだよ。その付き添いさ。復帰はまだ決めていないんだけど、川瀬が白衣を着て来いって言うからさ。なんでか分からないんだけどさ」

「なるほどな。川瀬はお前が病院に復帰するのを怖がっているんじゃないかと思っているんだよ。だから予行演習のつもりなのかもね。でも院内だったら、白衣の方が歩きやすいだろう?」

「ふっ、そうかもな。今は莉子のことで頭がいっぱいだよ。妊娠中毒症になったんだよ」

岩城が驚いて「ええ?大丈夫なのか?やっぱり虚弱体質というだけはあるなあ。なんかすんなりとはいかないんだねえ。はあ~莉子ちゃんもかわいそうだねえ。で、今はどうしているんだ?」

「夕飯もろくに食べないんだ。さっき川瀬がラミナリアを入れて、今子宮口を開いているところなんだけど、莉子はそれだけでまいっちゃうんだよね。痛みや不快感があるからさ」

「はあ~かわいそうだねえ。お前がしっかり支えてやってくれ。俺はしっかり洋子を支えるよ」と、大げさに岩城が言うから、「なんだよ、それ?要らねえよ」と俺が笑って返した。
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