医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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588話 白いとうもろこし

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 今日も素敵なコーディネートでホテルを出た。

今から行くところは、富士山の湧き水が溜まっている神秘的な観光スポットだ。 

実際に行くとその透明感のすばらしさに目が釘付けになった。

池の方も透明度が素晴らしかったが、少しさわると富士山の地下水はさすがに冷たい。

池に落ちないように気をつけたよ。

下手をすると、通路が狭いのに人が多すぎて、押されて池に落ちる可能性もあった。

ああ・・こういう人が多いところは苦手だ。来るんじゃなかった。


そこを見た後はブラブラと、他の観光客が通る道ではなく、民家が並ぶ道を駐車場まで歩いて行った。

知らないところを歩くのが大好きだ。そこで生活しているような気がする。

しかしそんな情緒もなく、残りの3人は気もそぞろでさっさと歩いている。早く駐車場に着きたいらしい。

はあ~ん・・トウモロコシ狙いだな。

さっき、駐車場の出口あたりでトウモロコシを山積みにして焼いていた。

香ばしいにおいをまき散らすようにうちわであおいでいる。

これを誘惑と言わないでなんというんだよ。けしからん。

ここを素通りするのは難しい。においが駐車場の外の道路にまで漂っていた。全く・・。

俺だって食べたくなったけど、夏はどうするんだよ?

トウモロコシはすごく消化が悪いんだよ。30分以内に下痢するよ。


戻ってくるとトウモロコシの回りは人だかりですごかった。

ちょうど駐車場の出入り口の真横でやっているから、そこだけ人と車が集まって渋滞している。

車に乗っている人にまで売るつもりか?

なんという巧妙な仕掛けだ。悪意を感じる。

ここで商売をしたらさぞ儲けるだろう。1本1000円?高!


俺も一度はこういうところで働いてみたいものだ。楽しいに決まっているさ。

病院しか知らない俺は、人生の半分を損している気がする。

勉強ばかりじゃ楽しくないに決まっているし、おまけに病院は遊びに行くところじゃない。

世の中には楽しいことがいっぱいあるんだよなあ・・ため息が出る。


そんなことを考えている間に、莉子と桃香と夏はその群れの中にいた!

皆の視線の先を見ると、真っ白なトウモロコシがあるんだよ。これは熟れているのか?

看板に<ホワイトショコラ><メロンより甘い!>と書いている。

誰だ!こんな名前を付けたのは? 悪いヤツだ。夏が誘惑されるだろう?

案の定、それを「食べてみるーっ!」と莉子と桃香がうるさい。

「はいはい、買ってやるよ。どうぞ食べてください」この二人を止めることは不可能だ。

早速その場で1口食べて「甘ーい!」と言いながら、大口を開けてガツガツと食べていた。

さて、肝心の夏だがどうするよ? 俺はここで冷静に夏の様子を眺めた。

今までの勉強の成果を見せてもらうよ。テストだ。

夏は焼いているトウモロコシをじーっと見つめていた。

プハーっ!これだけで吹き出しそうだった。我慢するのがつらかった!

さて、次はどうかな?

今度は莉子や桃香がうまそうに食べているのをじっと見つめていた。

結局、外の道路に出て花畑の方を見ていた。

我慢したんだな。よしよし。偉いぞ!!

代わりになるものはないかと探したら、奥でトウモロコシのポタージュを売っていた。

よし、これだ。早速買って外の道路で耐えている夏に渡した。

「えっ?」という感じで俺を見た。なんと涙ぐんでいた。かわいそうになる。

「早く、飲めよ」というと、俺の胸に顔を寄せてきた。もうポロポロと涙を流していた。

おいおいなんだよ「夏、カメラを向けられているぞ」ぱっと離れた。

抱きしめたかったがここでは無理だ。ここで緩めてはいけない。

夏も不摂生で胃腸を壊したわけではない。懸命に我慢して働いたからこうなった。

夏が悪いんじゃない。理不尽さに泣いていたんだろう。その通りだ。

世の中、理不尽なことはいっぱいあるさ。

「うっ、うっ、うぐ・・っ」とずっと泣いていた。

「治ったら取り寄せて食べさせてやるからな」「うん」とうなずいた。
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