医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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627話 夏不調・5・退院

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 午後から夏を迎えに行った。先に下の受付で支払いを済ませた。

部屋に行くと、夏はナースから退院の話を聞いたのか、荷物をまとめてベッドに座って待っていた。

荷物を持って「帰るぞ」というと、胸に縋りついてきた。

「こら、うちに帰っても寝てないと駄目だからな」

「うん、分かってる」

「じゃあ、行こう」 病棟の医局で挨拶をして帰って来た。

莉子が夏を見て「あれ?夏退院できたの?良かったねえ」

「うん、ありがとうね。お見舞いもありがとうね」

俺はさっさと4階に上がった。俺の寝室に夏を寝かせた。

水のペットボトルを夏の枕元に置いた。

「お兄さん、怒ってるんでしょう?わかってる。俺すごく反省しているから許してください。お願いします」

「ああ、怒ってるよ。なんで怒ってるのか分かってるのか?」

「お兄さんがまだ治ってないと言ってるのに、専攻医に戻ったからでしょう?俺が自分の身体を大事にしなかったから怒ってるんでしょう? 昨日岩城先生が来てくれて話してくれたよ。でも俺はなんとか頑張って早く専門医になってお兄さんを喜ばせたかったんだよ。
でも身体が続かなかった。こんなに情けない身体だとは自分でも思わなかったんだよ。
お兄さんがまだ治ってないって言ってくれたのはわかっていたんだけど、努力で何とかなると思ったんだよ。それにここで挫折したくなかったんだ。
今までお兄さんが沢山教えてくれたことが無駄になるような気がしてそれが嫌だったんだ。でも今度からお兄さんの言うとおりにするから、もう怒らないで。お願いだから。冷たくされると俺死にたくなっちゃうんだよ。だからお願い。俺のそばにいて欲しいよ」ウッウッ・・と嗚咽が止まらない。

ベッドに入り夏を抱き寄せた。なんだか俺も泣けてきた。

夏の気持ちが伝わるのかなあ。俺も胸が痛かった。

「夏もう泣かなくていいよ。それに専攻医はもうやめろ。行かなくてもいいよ。夏にはいっぱい才能があるんだから専門医にこだわる必要はないよ。これから1年くらい休んで、その間に産業医の資格を取れよ。その後は今のままでマネージメント業をすればいいよ。専門医は雇用すればいいだけだよ。無理に自分がならなくてもいいんだよ。
俺も夏がここまで身体をこわすとは想定しなかったから、専門医になれって言ったけど、もうそれは無理だからやめよう。やめてもいいんだよ。夏はもう医者になれたんだから無理しなくていいんだよ。分かったか?」

うんとうなずいた「そうするよ」

「じゃあ、少し休もう。ずっと寝ていたのに急に動いて疲れただろう。眠っていいよ」

「お兄さん、俺お腹が空いて眠れないよ」ふっそうか。分かったよ。

「なんか作って持ってきてやるから寝てろよ」「うん分かった」

ベッドから出てドアを開けると莉子と桃香がいた。「うん?どうしたの?」

「夏は大丈夫なの?桃香も心配してるから、会いたいみたいなんだよ」

「うん、いいよ。どうぞ。お腹が空いて眠れないんだって。なんかおやつを作るよ。桃香も食べるか?」

「うん、食べる~」じゃあ、作って来るから、その間に喋ってていいよ。

キッチンを覗いて、食パンがあった。1枚を4つ切りにしてフレンチトーストを作った。

はちみつ入りだ。食パンを3枚分くらい卵液につけて、バターをたっぷりと入れたフライパンで焼いた。

ドリンクはハーブティーだ。ポットでハニーレモンのハーブティーを淹れた。

ジャムも添えた。フォークを3本添えて、4階に持って行った。

「桃香、フレンチトーストができたよ」「いえ~い!」と喜んでいる。

「夏、食べられるか?」「うん、食べられる」夏の背中に枕とクッションを当てた。

「これ私も食べて良いの?」と莉子が聞いてきた。何を今さら遠慮してるんだか・・。

「いいに決まってるでしょう?」

夏には野菜ポタージュも作って来た。インスタントだけどさ。おいしそうに飲んでいた。

そうだ、隣のフードに介護食を頼まないといけない。

今夜は俺が作るとして、明日の分からは必要だから電話しておこう。
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