医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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628話 小鳥

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 夏がフレンチトーストを全部食べられた。

今まで病院ではろくに食べていなかったのだろうか?

それをあえて見ないようにしたのは自分自身だ。

食べ終わって、歯磨きのためにバスルームに向かう時は、腰を支えて付き添った。

もう倒れないと頭では分かっているのだが、いとおしさが溢れてしまい、自分をコントロールできない。

トイレを済ませてから歯磨きだ。

終わってベッドに行くまでの数歩はやはり少し支えないと無理のようだ。

動作を変える時に少しふらついている。まだ身体全体に力がない。

どうしてこんなにひ弱になってしまったのか?

病院に復帰させたことをすごく後悔した。

本当に振出しに戻ってしまったんだと、今頃実感して涙が滲んできた。

ベッドに寝かせたら、一緒に横になり夏を胸に抱き寄せて、そのまま少し眠った。


ふっと目が覚めた。枕元の時計を見ると、もう夜の11時になっていた。

ああ~夏に夕食を作っていない。まずい、起きないと・・。うどんでも作ろうか。

起きるのを察したのか、ぎゅっと胸に抱きついたままで離れない。

「こら、おなかが空いただろう? 何か作ってくるよ」

「ヤダ・・いらないからこのまま眠りたい」

ふうとため息をついた「夜中におなかが空いても知らないぞ」うんと頷いた。

夏の髪が俺の頬をくすぐる。そのまま抱きしめて眠った。


おなかが空いて目が覚めた。何時だろう。時計を見ると朝の5時だ。

夏は俺の胸に顔を寄せたまま眠っていた。そんなに寂しかったのか‥‥‥。

それは俺だって同じだ。久しぶりに睡眠薬を飲まないでぐっすりと眠った。

気持ちが安らぐ‥‥‥。こんな気持ちは久しぶりだった。

少し時間が早いけど、夏の力になるようなものを作ろう。

昨日は夕食を取っていない。

病人は一食抜いただけでダメージが大きいから急ごう。

そっと夏の手を外して起きようとすると夏が目を覚ました。

「お早う、どこに行くの?」

「お早う、どこにも行かないよ。朝食を作ってくるだけだよ」

「じゃあ、俺も手伝うよ」

「はっ??」睨みつけた。

「‥‥‥ごめんなさい、寝てます」


下に降りてキッチンでいろいろ作った。

夏には五目雑炊だ。卵を落とした。

それと鶏のささみをニンニク醤油に付けて焼いた。

やっぱり動物性たんぱく質は大事だよ。

あと、莉子や桃香にはサラダとシナモントーストとリンゴジャム。スクランブルエッグ。野菜スープだ。

それと夏にはニンニクのサプリを飲ませよう。

出来上がった頃に莉子と桃香がやって来た。

桃香が俺にくっついて離れない。抱っこしたまま椅子に座った。

「桃香、ご飯を食べないの?」

「あ~ん」‥‥‥ったく。一気にくるなあ。

しょうがないのでスクランブルエッグを一口食べさせた。

莉子が肩ひじついて呆れて見ている。

「あ~ん」ん?今度は莉子が大口を開けて待っている。

小鳥か!! しょうがない、今度はトーストを押し込んでやった。

「うん~んん!!」なんか言っている。ぷっ、笑える。

「莉子、夏がまだ一人で歩くのはふらつくから、ちょっと食事を運んでくるね」

「うんんううんん」まだ目を丸くしてモグモグしている。ふふふ、チャンスだ。

その隙に4階に上がった。

夏は目をつぶっていたが「食べるか?」と声を掛けると目を開けた。

ベッドの背当てに枕とクッションをあてた。

「五目雑炊だよ。食べられるか?」

「うん。食べられる。あ~ん」ぷっ、ここにも小鳥がいた。

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