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705話 あうんの呼吸
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海から帰ると、夏が戻っていて、みんなで一緒に夕食をとった。
俺と莉子が並んで帰ってきたせいか、夏は俺たちを交互に見ている。
そして、ニヤッと笑って俺にウインクをした。
危うく吹き出しそうになった。まったく……なんだよ。
しょうがないので莉子に気づかれないよう、ウインクを返す。
二人でふっと微笑んだ。
「ちょっと、そこのお二人さん。バレてますよ?」
莉子に気づかれてしまい、俺たちは吹き出した。
その夜、久しぶりに莉子と風呂に入った。
前に一緒に入ったのはいつだったか……。
多分、一年近く一緒に入っていない。
俺が仕事を終えて帰宅する頃には、莉子は桃香と風呂を済ませてしまっている。
久々に、莉子の身体を洗ってやった。こういう肌の触れ合いを、俺はずっと求めていた。
今夜の莉子は、珍しく素直に甘えてくれた。
きっと心のどこかで無理をしていた分、意固地になっていたんだろう。
無理した心を吐き出し、我慢から解放されれば、自然と心は落ち着く。
今日は本当に海に行ってよかった……そう思った。
ただ、一つだけ気がかりなことがあった。
……昨夜、夏を泣かせてしまった。
風呂上がりに冷蔵庫を覗く。軽く一杯飲むか……。
「夏も何か飲むか?」
「はい、なんでもいいのでお願いします!」
梅酒のソーダ割を作った。
「莉子も飲むか?」
「いらな~い。私はアイスクリーム食べる」
「アイスクリームに梅酒をちょっとかけたら、美味しいんじゃないか?」
そう言うと、莉子は目を輝かせた。「それやってー!」
ふふっ。子供みたいだな。
「あっ、お兄さん、俺もそれやってー!」
まったく……。ソーダ割を作った後に言うか?
それでも作ってやると、「うま~い!!」と二人とも喜んでいる。単純な奴らだ。
その夜は、俺の寝室で莉子を抱きしめて眠った。
寝室のドアは内側から鍵を掛けると、外からは鍵穴の色がゴールドからシルバーへ変わる仕様になっている。
使用中だということが一目で分かる仕組みだ。
だから、最中に誰かがドアをガチャガチャする心配はない。
……気まずいからな。お互いに。
しかし、実際にはそんな心配は無用だった。
あうんの呼吸で、察してくれるから。
今夜は何も言わなくても、夏は理解してくれた。
翌朝、川瀬にメールで事情を伝えた。
すると、「一番最後に診察するから来てくれ」とのことだった。
手順は、まず耳鼻科で耳の検査をして、血液検査とCTを撮る。
それが終わったら、産婦人科の診察を受ける。予約はもう取ったそうだ。
さすがに手際がいい。助かるよ。
それにしても……耳が半分しか聞こえないって、一体どういうことなんだ?
多分、川瀬も正確には分かっていないんだろうな。
俺も分からない。初めて聞いた症状だ。
加齢で徐々に耳が遠くなるなら理解できるが、20代の若さで卵巣と子宮を全摘出して、それが難聴を引き起こすようなものなのか?
そんなこと、医学書にも書かれていなかった。
……耳鳴りについては記載があったが。
ネットで調べても、それらしい事例は一つもヒットしなかった。
普通の難聴とは種類が違うのか?
一体何なんだろう?
もしかしたら……川瀬も今、調べまくっているかもしれない。
俺と莉子が並んで帰ってきたせいか、夏は俺たちを交互に見ている。
そして、ニヤッと笑って俺にウインクをした。
危うく吹き出しそうになった。まったく……なんだよ。
しょうがないので莉子に気づかれないよう、ウインクを返す。
二人でふっと微笑んだ。
「ちょっと、そこのお二人さん。バレてますよ?」
莉子に気づかれてしまい、俺たちは吹き出した。
その夜、久しぶりに莉子と風呂に入った。
前に一緒に入ったのはいつだったか……。
多分、一年近く一緒に入っていない。
俺が仕事を終えて帰宅する頃には、莉子は桃香と風呂を済ませてしまっている。
久々に、莉子の身体を洗ってやった。こういう肌の触れ合いを、俺はずっと求めていた。
今夜の莉子は、珍しく素直に甘えてくれた。
きっと心のどこかで無理をしていた分、意固地になっていたんだろう。
無理した心を吐き出し、我慢から解放されれば、自然と心は落ち着く。
今日は本当に海に行ってよかった……そう思った。
ただ、一つだけ気がかりなことがあった。
……昨夜、夏を泣かせてしまった。
風呂上がりに冷蔵庫を覗く。軽く一杯飲むか……。
「夏も何か飲むか?」
「はい、なんでもいいのでお願いします!」
梅酒のソーダ割を作った。
「莉子も飲むか?」
「いらな~い。私はアイスクリーム食べる」
「アイスクリームに梅酒をちょっとかけたら、美味しいんじゃないか?」
そう言うと、莉子は目を輝かせた。「それやってー!」
ふふっ。子供みたいだな。
「あっ、お兄さん、俺もそれやってー!」
まったく……。ソーダ割を作った後に言うか?
それでも作ってやると、「うま~い!!」と二人とも喜んでいる。単純な奴らだ。
その夜は、俺の寝室で莉子を抱きしめて眠った。
寝室のドアは内側から鍵を掛けると、外からは鍵穴の色がゴールドからシルバーへ変わる仕様になっている。
使用中だということが一目で分かる仕組みだ。
だから、最中に誰かがドアをガチャガチャする心配はない。
……気まずいからな。お互いに。
しかし、実際にはそんな心配は無用だった。
あうんの呼吸で、察してくれるから。
今夜は何も言わなくても、夏は理解してくれた。
翌朝、川瀬にメールで事情を伝えた。
すると、「一番最後に診察するから来てくれ」とのことだった。
手順は、まず耳鼻科で耳の検査をして、血液検査とCTを撮る。
それが終わったら、産婦人科の診察を受ける。予約はもう取ったそうだ。
さすがに手際がいい。助かるよ。
それにしても……耳が半分しか聞こえないって、一体どういうことなんだ?
多分、川瀬も正確には分かっていないんだろうな。
俺も分からない。初めて聞いた症状だ。
加齢で徐々に耳が遠くなるなら理解できるが、20代の若さで卵巣と子宮を全摘出して、それが難聴を引き起こすようなものなのか?
そんなこと、医学書にも書かれていなかった。
……耳鳴りについては記載があったが。
ネットで調べても、それらしい事例は一つもヒットしなかった。
普通の難聴とは種類が違うのか?
一体何なんだろう?
もしかしたら……川瀬も今、調べまくっているかもしれない。
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