医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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867話 菜の花の人になって・花井部長

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 会議室にて、サテライトの話を一通りした。

 「話は以上ですが、ご質問がありましたらどうぞ」

……誰も何も言わなかった。

そのうち、宮本看護主任がそっと手を挙げた。

「はい、どうぞ」

「あのう、今の話だと、菜の花は残業なし・宿直なし・水曜休みという条件はそのままにしておいていいんでしょうか? センターの応援で21時まで働くことになるのでは……と心配で」

「はい、それは変えるつもりはありません。皆さんにはその条件で入職いただいていますし、その約束は守ります。
ただ、今は希望者で宿直に入ってくれている方が1名、5階にいますね? そういう希望があれば募ることはあるかもしれませんが、それもあくまで本人の意思を尊重します。

基本的には、シフト勤務に対応できる人を新たに募集する方針です。ただ、センターが急に混雑するような場合には、クリニックのほうにご案内したり、検査体制を調整したりして、応援をお願いすることも出てくると思います。

とはいえ、菜の花のスタッフが21時まで勤務する必要はありません。そのために医師を3名確保しますし、基本的に日曜は休診なので、無理のないシフトで回せると考えています。

また、その3名の医師は全員、寮の希望があり、建物上部に居住する予定です。緊急時の対応も可能です。
それと、私も理事も菜の花に住んでいますので、必要なときにはすぐに対応するつもりです」

「はい、わかりました。ありがとうございます」

「他にご質問はありますか?」

看護部長「人材を募集する際の面接は、菜の花で行うのでしょうか?」

「もちろんです。建物はまだ確保できておらず、工事もこれからですので、しばらくは菜の花が拠点になります。
人材面談の際には、皆さんにもぜひお力を貸していただきたいと思っています。よろしいでしょうか?」

「はい、わかりました」

看護部長と主任が声をそろえて応じてくれた。

「花井部長、何かございますか?」

ふふふ……と少し笑って、

花井「最近、自分でも驚くくらい、すっかり菜の花の人になってしまっていて、当初の“開業する”という目標を忘れかけていました。
先日、院長に『いずれ開業するのだから人材育成を考えて』と言われて、改めてそのことを思い出しまして。

確かに初期は、強くそう思っていました。でも今は、この環境が心地よくて……このままでもいいのかな? と妻ともそんな話をするくらいになっていました。

今回のサテライトの話は、そんな中で“医師として自分がやるべきこと”を再認識させてもらえる良い機会になりました。
院長のお考えは本当に素晴らしいと思います。もしサテライトと菜の花が、もっと有機的に連携していけるなら、私も何かしらお手伝いできたらと思っています」

「ありがとうございます……今のお話、すごく感動しました。花井部長、本当にありがとうございます。心から感謝しています。

地域の皆さんのために、クリニックとしてさらにできることをしていきたい――それが私たちの原点です。
高価な検査機器も、もっと活かしたいですし、人材にも恵まれています。

看護部長や主任にも、勤務時間内で結構ですので、サテライトのナースたちの育成にも協力いただけたらと思っています」

看護部長「はい、承知しました。できる限り協力させていただきます」

理事「院長、よかったですね。この体制なら、これからもうまく回っていくと思いますよ。
あと確認ですが、センターの診療時間は、先ほどお話があったスケジュールで決定ということでよろしいですか? 皆さんに確認をとりたくて」

「はい、それで良いと思います」

花井部長がそう言うと、他のスタッフたちも一斉にうなずいてくれた。

理事「皆さん、ありがとうございます。それでは、その方針で近隣の皆さまにお手紙をお送りします。

実は、できる限り菜の花に近い場所にサテライトを設けたくて、不動産を譲っていただけないかというお願いを、丁寧に文書でお届けする予定です」

看護部長「へえ~、そうなんですか?それなら近くで見つかるといいですね。やっぱり、通いやすいのが一番ですし」

理事「はい、そうなんですよ」

院長「もう大丈夫かな? では今日はこの辺で。皆さん、ありがとうございました。これで会議を終わります」

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