3 / 6
03
しおりを挟むうなじの痛みで目が覚めた。
チロは、ぐずぐず泣きながら、オレのうなじをなめていた。
「ふぇぇ、ともちゃん、ごめんにゃあ……ともちゃん、起きてにゃ。血が止まらないにゃ……」
「チロ、起きたが……何をしてくれたん?」
「あっ、ともちゃん!ともちゃんにゃ!いきなり噛んで悪かったにゃ……」
チロの話によると、やはりうなじを噛むのは番にするためらしい。これにより、オレは猫の国に行ってチロといっしょにずっと生きることができるらしい。
「はぁ?なに勝手なことしてくれてんの、チロ。おまえさぁ、最初のセックスといい、今回の番とい、オレに相談しないし、短絡的すぎない?」
「ともちゃん、嫌にゃ?」
「それを言われると……嫌じゃないけどさ。チロがなんでも自分で決めちゃうのは嫌かな。いっしょに生きるんだろ?なんでもはんぶんこだよ」
チロは神妙な顔をしながら、ふわふわと二本のしっぽを揺らしていた。オレにはわかるが、こいつは全く反省はしていない。
仕方ないよな。猫だもん。
オレは、うなじをなめるチロの顔を押し退けた。
「あのさ、なめるより絆創膏貼ったほうが、早く治ると思う。チロは絆創膏がどこにあるか知ってる?」
「わかるにゃ」
チロは、すっと立ち上がり、後ろのタンスの上から二段目の引き出しを開けた。
チロはなんでも知っている。ただの猫だったときから、きっと今に近い知性はあったのだろう。
◇◇◇
起き上がって、大きく伸びをして、たまった衣服を片付ける。ごうんごうんと洗濯機が回る間に、久しぶりに白米を炊く。
気がついたら、最近チロとのえっちに夢中になりすぎて、脳みそピンクになってた。
気持ちいいのは歓迎なんだが、どっぷり溺れるのはごめんだ。
パソコンでメールをチェックすると、編集さんから次回の連載のプロットが欲しいとメールが来ていた。
オレの漫画は、異世界バトルものが多く、この前々描いた作品は、筋骨たくましい男たちが知力、体力を駆使して、異能バトルを繰り広げ、宇宙に旅立ち、そこからスペースオペラが始まり、とある惑星をテラフォーミングするというものだった。
打ち切りになってから、編集さんに「詰め込みすぎです!」とお小言を頂戴したのだが、どうせなら連載前に止めてくれよと思った。
それでも、週刊少年スキップに連載していたのもあり、先日は地元の小学校でお絵描き教室をした。講演を頼まれたのだが、小学生一年から六年までを楽しませるなような話術は、残念なことに持ち合わせていないのだ。話すのは苦手で、友だちだってほとんどいなかった。
小学校の講堂に、大きく広がる白いスクリーンに、オレは絵の描き方を説明しながら、自分のキャラクターを描いていった。
棒人間に肉付けをして、キャラを仕上げていき、瞳を入れると、命がこもる。
小学館たちの歓声が講堂にあふれるのに調子が乗り、次々と横にキャラを追加していく。
大盛況だった。来年もと頼まれたけど、恥ずかしいからもうごめんです。
そのビデオをもらって、家で視ながら、ビール片手にチロに説明したのだった。このキャラかっこいいよな。この獣耳がいいんだよ。――あれ?チロの顔、あのキャラにそっくりじゃね?もしかして覚えていたのかな?
縁側に寝そべるチロに、声をかける。狭い縁側が、チロの身体で埋まってる。
「チロ、その顔って、もしかして……」
「ともちゃん、今頃気づいたにゃ?ぼく、獣人化したときに姿を選べるって聞いたから、ともちゃんの大好きな姿になったの。あの頃は、ただの猫だったから、めちゃ嫉妬したんだからねっ!」
ぷくりと頬をふくらませるチロ、かわいくてかっこよくて最高かよ。
「おう、悪かった……いや、仕方なくね?チロがこうなるなんて考えもしなかったんだから」
「うん、許すにゃ。ともちゃんはもうぼくのものだから」
そう言うと、チロはがばりとオレを抱き締めて、うなじをねろりとなめた。
36
あなたにおすすめの小説
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる