チロはオレの猫

まめ

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 うなじの痛みで目が覚めた。
 チロは、ぐずぐず泣きながら、オレのうなじをなめていた。

「ふぇぇ、ともちゃん、ごめんにゃあ……ともちゃん、起きてにゃ。血が止まらないにゃ……」

「チロ、起きたが……何をしてくれたん?」

「あっ、ともちゃん!ともちゃんにゃ!いきなり噛んで悪かったにゃ……」

 チロの話によると、やはりうなじを噛むのは番にするためらしい。これにより、オレは猫の国に行ってチロといっしょにずっと生きることができるらしい。

「はぁ?なに勝手なことしてくれてんの、チロ。おまえさぁ、最初のセックスといい、今回の番とい、オレに相談しないし、短絡的すぎない?」

「ともちゃん、嫌にゃ?」

「それを言われると……嫌じゃないけどさ。チロがなんでも自分で決めちゃうのは嫌かな。いっしょに生きるんだろ?なんでもはんぶんこだよ」

 チロは神妙な顔をしながら、ふわふわと二本のしっぽを揺らしていた。オレにはわかるが、こいつは全く反省はしていない。
 仕方ないよな。猫だもん。
 オレは、うなじをなめるチロの顔を押し退けた。

「あのさ、なめるより絆創膏貼ったほうが、早く治ると思う。チロは絆創膏がどこにあるか知ってる?」

「わかるにゃ」

 チロは、すっと立ち上がり、後ろのタンスの上から二段目の引き出しを開けた。
 チロはなんでも知っている。ただの猫だったときから、きっと今に近い知性はあったのだろう。

◇◇◇ 

 起き上がって、大きく伸びをして、たまった衣服を片付ける。ごうんごうんと洗濯機が回る間に、久しぶりに白米を炊く。
 気がついたら、最近チロとのえっちに夢中になりすぎて、脳みそピンクになってた。
 気持ちいいのは歓迎なんだが、どっぷり溺れるのはごめんだ。
 
 パソコンでメールをチェックすると、編集さんから次回の連載のプロットが欲しいとメールが来ていた。
 オレの漫画は、異世界バトルものが多く、この前々描いた作品は、筋骨たくましい男たちが知力、体力を駆使して、異能バトルを繰り広げ、宇宙に旅立ち、そこからスペースオペラが始まり、とある惑星をテラフォーミングするというものだった。
 打ち切りになってから、編集さんに「詰め込みすぎです!」とお小言を頂戴したのだが、どうせなら連載前に止めてくれよと思った。

 それでも、週刊少年スキップに連載していたのもあり、先日は地元の小学校でお絵描き教室をした。講演を頼まれたのだが、小学生一年から六年までを楽しませるなような話術は、残念なことに持ち合わせていないのだ。話すのは苦手で、友だちだってほとんどいなかった。
 小学校の講堂に、大きく広がる白いスクリーンに、オレは絵の描き方を説明しながら、自分のキャラクターを描いていった。
 棒人間に肉付けをして、キャラを仕上げていき、瞳を入れると、命がこもる。
 小学館たちの歓声が講堂にあふれるのに調子が乗り、次々と横にキャラを追加していく。
 大盛況だった。来年もと頼まれたけど、恥ずかしいからもうごめんです。

 そのビデオをもらって、家で視ながら、ビール片手にチロに説明したのだった。このキャラかっこいいよな。この獣耳がいいんだよ。――あれ?チロの顔、あのキャラにそっくりじゃね?もしかして覚えていたのかな?

 縁側に寝そべるチロに、声をかける。狭い縁側が、チロの身体で埋まってる。

「チロ、その顔って、もしかして……」

「ともちゃん、今頃気づいたにゃ?ぼく、獣人化したときに姿を選べるって聞いたから、ともちゃんの大好きな姿になったの。あの頃は、ただの猫だったから、めちゃ嫉妬したんだからねっ!」

 ぷくりと頬をふくらませるチロ、かわいくてかっこよくて最高かよ。

「おう、悪かった……いや、仕方なくね?チロがこうなるなんて考えもしなかったんだから」

「うん、許すにゃ。ともちゃんはもうぼくのものだから」

 そう言うと、チロはがばりとオレを抱き締めて、うなじをねろりとなめた。
 
  
 
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