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25 番外編・精霊樹のこども 01
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みなさま、こんにちは!
このお話をお読みくださり、ありがとうございます。
本日から『アルファポリスBL大賞』が始まりまして、1年に1度のこのお祭りに参加することにいたしました。
番外編として『精霊樹のこども』の連載を始めます。
これは、時間軸は違いますが世界線を同じとする拙作『きみはぼくの明星』とほんの少しつながるお話で、ゆるいアホ話です。
お祭り気分でお楽しみいただけるとうれしいです。わっしょい!
◇◇◇◇◇
ある夜、フロルは夢の中で、もうひとりの自分と話をしていた。
姿はそっくりだが、人間のフロルは黒髪、精霊のフロルはペールグリーンの髪をしていた。
少し昔、ふたりはひとりだった。
精霊樹の丘に寝そべって、青い空を見上げながら、ごろごろするふたりだった。
「ねえ、フロル、なんか面白いことはない?」
「うーん、最近鶏舎の卵が黄身が二つ入ってる確率が高い、とか?え、面白くないって? あれ、君の仕業かい?」
「あんまり意識的に加護は使ってないんだけどな。じゃあ、なんか望みはない?」
「どうしたんだ。退屈してるの? ちい兄が結婚して、この前赤ちゃんが生まれたんだよ。ぼくもダレンと赤ちゃんほしいなー。って無理なのはわかってるけど」
精霊フロルは、ガッツポーズをした。
「よおし、それだ!」
フロルはぽかんとしながら、夢だし、まあ面白けりゃいいかと思った。
だいたい、精霊フロルが出てくる夢だって、ただの夢なのか、ほんとに夢に入ってくるのか、まったくわからないし、だいたいぼんやりとしか覚えていない。
「じゃ、キャラメイキングからね」
「おいおい、その言葉使うのか。君はぼくの前世の記憶もあるの?」
「あったりまえじゃん。ちょっと前までぼくたちひとつだったんだから。プリン、たこ焼き、マヨネーズ、やっぱりプリンさいこー!でも、樹になっちゃったからもう食べられないんだけど。お供えはしてよねー」
ふたりは同じ顔で笑いあった。
ふたつに別れ、それぞれの心と体が安定したせいか、昔よりも楽天的になったのも同じだった。
「性格はどうする?」
「ダレンみたいに一途で純粋なのが好きだな」
「おや、ノロケてる?」
精霊フロルが、にやにやしながらひじでつついてくる。
「そりゃまあ、愛してるもん」
「あとは?」
「元気ならば他は気にしない」
「昔話で元気なのいたじゃん。なんとか太郎。えっと、くーまにまーたがりおーうまのけいこー♪」
「よく知ってるねえ」
フロルが驚きに目を見開くと、精霊フロルはほっぺたをぷくっとふくらませて、さみしそうにすねてみせた。
「だって、ぼくたちひとつだったもん……」
「悪かったよ。でも、ぼく金太郎の歌そこしかしらないんだ」
「くーまにまーたがりおーうまのけいこー♪」
「くーまにまーたがりおーうまのけいこー♪」
「楽しい響きだから好きなんだよね。じゃ、くまみたいな元気な子にしよう」
「えっ、金太郎は?」
精霊フロルは、ばいばーいと手を振りながら消えていった。一抹の不安を残して――
◇◇◇
「うーん……うーん……」
「おい、フロルどうしたんだ、起きろ」
フロルは、ダレンに揺り起こされて、目が覚めた。夢のことはぼんやりとしか覚えていない。
「おはよぉ、ダレン。熊の夢を見たような気がする……」
「まだ朝じゃないぞ。目が覚めるくらい怖かったんだな。俺が守ってやるからおいで」
ダレンが腕を広げれば、フロルは吸い込まれるように彼の胸におさまった。頭をぐりぐりすれば、弾力のある胸筋がぼよんとお返事する。
ダレンの腕の中は、フロルの専用寝床なのだ。彼の体から漂うシダーの香りは、森林浴効果があるに違いない。とても落ち着くのだ。
すんすんと彼の匂いを嗅ぎながら、フロルは二度寝した。――熊の夢、あんまり怖くはなかったかも……
◇◇◇
フロルは、雄鶏の声でゆっくりと目を覚ました。二度寝が地味にきいて、彼の体はうまく覚醒しない。
目を開かないフロルに、ダレンは首すじにキスをしたり、シャツのボタンを外したりと、いたずらをはじめた。
「あんっ、やだ……、ダレンやめて……」
「おはよう、フロル。やっと起きたか。起きなくても俺は楽しかったけどな」
フロルは、えっちな気分になったせいで、少し夢のことを思い出した。
「あのさ、夢で精霊フロルに会ってね。子どもを作るつもりみたいだった」
「えっ?精霊フロルって精霊樹?」
「うん、なに考えてんだろうね」
「面白い夢みたんだな。熊はどこに行ったんだ?」
フロルは頭をひねったが、熊と子どもと精霊樹がどうにも結び付かなかった。
「うーん、わかんない」
その日は、それで終わったはずだった。
このお話をお読みくださり、ありがとうございます。
本日から『アルファポリスBL大賞』が始まりまして、1年に1度のこのお祭りに参加することにいたしました。
番外編として『精霊樹のこども』の連載を始めます。
これは、時間軸は違いますが世界線を同じとする拙作『きみはぼくの明星』とほんの少しつながるお話で、ゆるいアホ話です。
お祭り気分でお楽しみいただけるとうれしいです。わっしょい!
◇◇◇◇◇
ある夜、フロルは夢の中で、もうひとりの自分と話をしていた。
姿はそっくりだが、人間のフロルは黒髪、精霊のフロルはペールグリーンの髪をしていた。
少し昔、ふたりはひとりだった。
精霊樹の丘に寝そべって、青い空を見上げながら、ごろごろするふたりだった。
「ねえ、フロル、なんか面白いことはない?」
「うーん、最近鶏舎の卵が黄身が二つ入ってる確率が高い、とか?え、面白くないって? あれ、君の仕業かい?」
「あんまり意識的に加護は使ってないんだけどな。じゃあ、なんか望みはない?」
「どうしたんだ。退屈してるの? ちい兄が結婚して、この前赤ちゃんが生まれたんだよ。ぼくもダレンと赤ちゃんほしいなー。って無理なのはわかってるけど」
精霊フロルは、ガッツポーズをした。
「よおし、それだ!」
フロルはぽかんとしながら、夢だし、まあ面白けりゃいいかと思った。
だいたい、精霊フロルが出てくる夢だって、ただの夢なのか、ほんとに夢に入ってくるのか、まったくわからないし、だいたいぼんやりとしか覚えていない。
「じゃ、キャラメイキングからね」
「おいおい、その言葉使うのか。君はぼくの前世の記憶もあるの?」
「あったりまえじゃん。ちょっと前までぼくたちひとつだったんだから。プリン、たこ焼き、マヨネーズ、やっぱりプリンさいこー!でも、樹になっちゃったからもう食べられないんだけど。お供えはしてよねー」
ふたりは同じ顔で笑いあった。
ふたつに別れ、それぞれの心と体が安定したせいか、昔よりも楽天的になったのも同じだった。
「性格はどうする?」
「ダレンみたいに一途で純粋なのが好きだな」
「おや、ノロケてる?」
精霊フロルが、にやにやしながらひじでつついてくる。
「そりゃまあ、愛してるもん」
「あとは?」
「元気ならば他は気にしない」
「昔話で元気なのいたじゃん。なんとか太郎。えっと、くーまにまーたがりおーうまのけいこー♪」
「よく知ってるねえ」
フロルが驚きに目を見開くと、精霊フロルはほっぺたをぷくっとふくらませて、さみしそうにすねてみせた。
「だって、ぼくたちひとつだったもん……」
「悪かったよ。でも、ぼく金太郎の歌そこしかしらないんだ」
「くーまにまーたがりおーうまのけいこー♪」
「くーまにまーたがりおーうまのけいこー♪」
「楽しい響きだから好きなんだよね。じゃ、くまみたいな元気な子にしよう」
「えっ、金太郎は?」
精霊フロルは、ばいばーいと手を振りながら消えていった。一抹の不安を残して――
◇◇◇
「うーん……うーん……」
「おい、フロルどうしたんだ、起きろ」
フロルは、ダレンに揺り起こされて、目が覚めた。夢のことはぼんやりとしか覚えていない。
「おはよぉ、ダレン。熊の夢を見たような気がする……」
「まだ朝じゃないぞ。目が覚めるくらい怖かったんだな。俺が守ってやるからおいで」
ダレンが腕を広げれば、フロルは吸い込まれるように彼の胸におさまった。頭をぐりぐりすれば、弾力のある胸筋がぼよんとお返事する。
ダレンの腕の中は、フロルの専用寝床なのだ。彼の体から漂うシダーの香りは、森林浴効果があるに違いない。とても落ち着くのだ。
すんすんと彼の匂いを嗅ぎながら、フロルは二度寝した。――熊の夢、あんまり怖くはなかったかも……
◇◇◇
フロルは、雄鶏の声でゆっくりと目を覚ました。二度寝が地味にきいて、彼の体はうまく覚醒しない。
目を開かないフロルに、ダレンは首すじにキスをしたり、シャツのボタンを外したりと、いたずらをはじめた。
「あんっ、やだ……、ダレンやめて……」
「おはよう、フロル。やっと起きたか。起きなくても俺は楽しかったけどな」
フロルは、えっちな気分になったせいで、少し夢のことを思い出した。
「あのさ、夢で精霊フロルに会ってね。子どもを作るつもりみたいだった」
「えっ?精霊フロルって精霊樹?」
「うん、なに考えてんだろうね」
「面白い夢みたんだな。熊はどこに行ったんだ?」
フロルは頭をひねったが、熊と子どもと精霊樹がどうにも結び付かなかった。
「うーん、わかんない」
その日は、それで終わったはずだった。
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