悪役令嬢に遊ばれていた王子が今さら溺愛したってもう遅い! 私は皇太子殿下からの寵愛で幸せな結婚生活を送りたいと思います!

朱之ユク

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スカーレットは鬱っぽい

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 卒業式の日が、もうすぐそこに迫っている。
 スカーレットは卒業式の後にある舞踏会で着るドレスを選んでいた。

(でも舞踏会になって出ても多分私の婚約者は私と踊ってくれはしないだろう)

 あのアンジェリカと一緒に舞踏会を過ごすはずだ。
 スカーレットは憂鬱だ。
 あの女さえいなければ婚約者と一緒に踊れるのだが、多分それは叶わない。

(こうなったら私が他の男の人と踊るしかないけど……)

 学園の男の子はほぼすべて縁談が決まっている。
 すでに相手がいる相手と踊っても余計な問題を起こすだけだ。
 それにスカーレットはアンジェリカのように他人の男と踊るつもりはない。
 そんなに醜い人間にはなるつもりはなかった。

(さて、一体どうしたものか?)

 スカーレットにはどうしようもない。
 高級洋服店で服を選んでいるのは正直飽きてきた。
 コルセットがきつくて、そもそもあばらが痛い。しかもこのドレスはどうせ活躍する場を作ってやれないのだから、買うだけ無駄だ。
 親が優しそうな表情で見ているのが辛いです。
 心が痛い。
 そんなことを思っていた時だった。

「スカーレット嬢。お話があります」
「え? 私?」

 深紅のドレスを身にまとい試着室から出てきたところを一人の男性に呼び止められた。
 その男は非常に美しく長いまつげに、細い唇、すこし可愛らしい鼻の造形を見ていると、まるで彫刻を見ているような気分になった。

「あなたは?」
「これは失礼。私の名前はグレイ・フォン・ネイビーです。前にあなたに助けられて、そのご恩を返しに来ました」

 その名前は聞き覚えがある。
 たしかに隣国の皇太子の名前だ。たしかに非常に優秀で美しい人間だと言われていた。その言葉に間違いはなかったようだ。
 だけど、そんな素晴らしい人を助けたという記憶はない。

「助けた? 私が?」

 そんな記憶は全くないけど、一体いつ助けたんだろうか?

「えっと……」
「この前道端で倒れていた時に回復魔法を使ってもらって、水を飲ませてもらいました」
「……あっ! あの時の!」

 確かについ先日助けた記憶があった。もうやけくそになって適当に助けた人だったから印象が薄かったけど、まさかそんなにすごい人だったとは思わなかった。

「良かったです。無事だったんですか? よかったです」
「はい、スカーレット嬢のおかけで命が助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、当然のことですよ」
「そんなことはありません。治癒魔術を使えるほどの術者は少ない。あなたの努力に助けられました。今日はその感謝を申し上げにきました」

 いつの間にか私が助けていたんだ。

「頬を赤くなっていますね」
「い、いえ」
 
 人に感謝されたのは久しぶりだ。スカイは私が何をしても感謝の一つもしてくれなかったから。

「それと今日はそれだけではないんです」
「他に何かあるんですか?」
「はい。どうか私と婚約してほしいのです」
「は? 婚約」

 このイケメンはいきなり何を言っているんだ?

「お願いします」

 このバカはいきなり何を言っているんだ?

「間違えました。私は一応婚約者がいるので婚約は出来ません」

 一体どうしてこんなことになってしまったのか。
 グレイは静かに私に近づいて来た。
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