引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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「お、ついに売り切れたかー」

ソータがバイトを始めて三日目。ついに担当していた商品であるウインナーソーセージが売り切れた。

「よく頑張ったよ、お前」

サラに褒められると嬉しいが、少し複雑な気持ちもある。

「ソータ、後で会えないか?」

そっと耳元で囁かれてソータはドキッとした。きっと昨日の告白の答えが聞きたいのだろう。ソータは聖女だ。死ぬまで、ずっと一人で生きていくものだと思ってきた。サラにも詳しく事情を話そう、と決める。
自分に恋愛が難しいことも含めてだ。
ソータはその日の残りの時間、棚の商品補充の仕事を任された。重たい商品は危ないからと他の男性店員も手を貸してくれた。

「僕…ここの仕事じゃ役に立てない」

昨日から気持ちがぐちゃぐちゃしているうえ、先程からほとんど仕事に参加できていない。ソータは自分が情けなくなってしまった。

「ソータ?!どうした?」

涙を必死に堪えながらソータは必死に仕事をしていた。サラがそんなソータに気が付いてくれる。

「ソータ、ちょっと裏来い!!」

ぐっと腕を掴まれてそのままサラの脇に抱えられてしまう。ソータの力ではサラに敵うはずもない。ソータはますます情けなくなってついに泣き出してしまった。

「どうしたんだよ?ソータ」

「ぼ…僕、うそ…っ、吐いてたから、サラ先輩が…っ、好きに…なってくれるような…ひっ…人じゃないし」

えぐえぐしゃくりあげていると、サラはソータを優しく抱き締めてくれた。

「泣くなよ、どうしたんだ?ちゃんと始めから話してみろ」

「ぼ…私は、アオナの聖女なのです」

「アオナからわざわざここに来たのか?」

「?女だってびっくりしないのですか?」

「いや、女の子だって見る人が見ればすぐ分かるよ。ソータ、小さいし」

「!!」

がーん、となってしまったソータである。更に泣きじゃくり始めたソータの頭をサラは優しく撫でてくれた。

「泣くなって。大丈夫、俺以外にはバレてないから、な?」

「神に殉ずる聖女の私が周りの優良市民の皆様を騙してしまう不届をお許しください」

ソータはもうわけが分からなくなって、泣きながら祈りの言葉をぶつぶつ呟き始めた。

「おーい!ソーター、戻ってこーい」

サラはあくまでも冷静である。ソータはハッとなった。ここは職場である。取り乱している場合ではない。

「ごめんなさい、サラ先輩。もう大丈夫なのです」

「ソータ、なんか知らんけどお前、大変な思いしてるんだな?もう俺のお嫁さんになるか?」

「およ…?!」

サラの意外な言葉にソータは茹でダコのように真っ赤になった。やはりサラの好きは恋愛感情からなのだと改めて認識する。

「わ、私は変なんです。きっと人として欠陥品なんだと思います。だからごめんなさい!!」

「欠陥品なんて自分で言うなよ。俺はソータだから好きになったんだ」

「サラ先輩…わ、僕には目的があるのです。それを絶対にやり遂げなきゃいけなくて」

「知ってるよ。俺だって一緒に行けるものなら行きたい。でも俺にだって夢がある。ソータ、俺言ったよな?俺を忘れないでくれって」

「は、はい。僕は記憶力がいいのです」

「知ってる」

そっと優しく指で目元を拭われてソータはサラを見上げた。

「可愛いな、攫っちまいたいよ」

「サラ先輩」

「おし、仕事に戻るか」

「はい!」


✢✢✢

「お帰り、ソータ」

宿屋に戻るとエンジとレントがいる。ソータはようやくホッとした。

「お疲れ様なのです!」

「ソーちゃん?もしかして泣いた?」

レントは鋭い。ソータは困った挙げ句、頷いた。

「誰に泣かされたの?そいつぶっ殺す」

バキバキと拳を鳴らし始めたレントをエンジが宥める。ソータも慌てて言った。

「大丈夫なのです。僕が駄目だっただけでサラ先輩が励ましてくれたのです」

「あいつ、ソーちゃんにはめちゃくちゃ優しいのな?」

「サラ先輩は誰にでも優しいのですよ?」

首を傾げながら言うと、エンジが苦笑している。

「まあそうなんだろうな」

「何かありましたか?」

「いや、問題ないよ」

ソータが来る前、二人はソーセージを宿屋のレストランに頼んで茹でてもらった。慌てて食べたがなかなか美味い。腹が減っていたせいか二人で全て平らげた。おかげで今は満腹である。

「ソータ、明日にはここを発とう。仕事もちょうどきりよく終わったからな」

「分かりました」

ソータはその日、豆がゴロゴロ入った野菜スープを食べた。

「お二人は食べないのですか?」

「あ、うん。今はいいかな」

「俺もパス」

✢✢✢

ソータは部屋にいる。サラにお別れが言いたかった。
紙に『さようなら。ソータナレア』と記し、フクロウを呼んだ。

フクロウの足に手紙を括り付けて、サラの居場所を伝える。

「お願いね」

フクロウがバサリと羽音を立てて飛び立つ。

「サラ先輩、また会いたいのです」

いつかまた、とソータは思ったのだった。
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