引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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結局、ダイダイの連続強盗事件は未解決のままだった。犯人は闇神の取り憑いた人間である可能性が高い、とフレンは読んでいる。

ソータたちがホテルのロビーにいるとバラバラと男たちが入ってくる。そのうちの一人がこちらに何かを翳してくる。それは写真が載った黒い手帳だ。

「警察だ!君たちから話を聞かせて欲しい」

ソータたちは一瞬、ぽかん、となった。

「ぼ、僕たちは罪など犯してないのです」

ソータがアワアワしながら言うと、一番役職が上だろうと思われる男が笑った。額に十文字の傷がある男前だ。

「逮捕をしに来た訳じゃない。安心してくれ。とりあえず署まで来て欲しい」

そう頼まれてソータたちは渋々パトカーに乗せられた。

「君は女の子?」

「男です」

ソータはにこやかに答えた。ダイダイの警察署に着く。ソータは警察という機関についての知識があまりない。警察がこうやって直々に話を聞くこともあるということを初めて知った。ソータは取調室にいる。相手は婦人警官だった。自分が幼く見えたせいだろうとソータは冷静に分析する。

「えーと、お名前と年齢を教えてくれる?」

「ソータです、年は15」

「最近モンスターが村や街の近くで、暴れまわることがあるのを知っているかしら?」

ソータはキタ村のことを思い出していた。

「はい。僕も討伐に一緒に参加したことがあるのです」

「ソータくんは強いのね」

婦人警官は驚いているようだ。

「はい、僕は強いのです」

ソータがニコニコしながら答えると、婦人警官はじゃあ、と続けた。

「闇神の存在は知っている?」

ドキッとしてしまった。昨日祓ったばかりだ。ソータは困ってうつむいた。これでは知っていると答えているようなものである。

「ソータくんは魔導士?」

婦人警官はそんなソータに優しく尋ねてくれた。ソータはハッとなる。上手い答えを思いついたからだ。

「はい。僕は魔導士見習いで、神父を目指しています。フレン兄様の弟子です」

「まぁ聖職者を目指しているの?」

「はい、兄様のようになれたらって」

「偉いのね」

本当は既に聖女なのだが、ここでその話をするとどこに広まるかわからない。ソータは慎重に受け答えをした。なるべく不自然にならないように気を付けたつもりだ。どうやら警察は世界中で協力しあい、闇神を葬るべく本部を立ち上げたようだった。もちろん裏方のサポートに教会や神々が深く関わっているのは間違いない。

「ありがとう。お話を聞かせてくれて。助かったわ」

「いいえ、お役に立てたのなら何よりです」

婦人警官はお菓子と温かいコーヒーを出してくれた。ソータは遠慮無く食べる。

取調室から出ると、フレンが壁にもたれながら立っていた。

「フレン兄様、待っててくれたのですか?」

フレンがソータに顔を近付けてきた。

「リヒが来てる」

「リヒ兄様はキメルには会わせられませんね」

うぅ、とソータが唸るとフレンは苦笑いだ。

「ソータ!こんな所にいたのか!」

涼やかな声がして誰かが走ってくる。艶のあるプラチナブロンドの腰まである髪の毛を後ろで束ねている優男だ。一般的な言葉で表すなら、王子様といったところか。

「あぁ、噂をすれば」

フレンが頭を抱える理由もソータにはなんとなくだが分かる。彼が先程まで話していた、リヒその人だったからだ。リヒは王家直属の聖騎士である。聖騎士というのは神より加護を受けた特別な騎士である。剣技はもちろんのこと、体術、魔力、射術、乗馬など全てに秀でている者でなくてはなれないのだ。聖騎士になるためには身長やルックス、家柄、学歴まで査定される。リヒはソータを見つけるなりソータの前で優雅に跪いた。

「ソータ、ずっと君に会いたかった」

手を取られ甲にキスされる。

「リヒ兄様、お忙しいのでは?」

「君に会うのが何より先だよ。ソータ、髪の毛を切ったんだね。とても愛らしいよ」

ソータは困って、フレンを見上げた。

「リヒ、その辺にしておいてやれ。お前の部下も困るだろう?」

「団長ー!!」

バタバタと鎧を着た青年たちが走ってくる。鎧は重いはずだが、騎士たちは軽々と動く。それだけ普段から体を鍛えている証拠だ。
リヒはこう見えて聖騎士団の団長である。

「よかった、もう、団長!探しましたよ!!」

「ごめんね。これから警察と連携して動くんだ。またね、ソータ!」

リヒたちは慌ただしく走っていった。

「騒がしい奴らだな。にしても聖騎士団と警察が連携かぁ。闇神の件で本部が立つくらいだしな。俺達もこれからはスルーできないかもしれない」

「…」

「あ、よかった。ここにいた」

シオウだ。エンジ、レントもやってくる。

「あぁ、カツ丼美味かった」

「私も食べたよ」

「絶品だったな」

どうやら三人共ちゃっかりお昼をご馳走になったらしい。

「おいおい、俺達はまだ食べてないんだからな」

フレンが笑いながら言う。

「なんかあった?」

レントが屈んでソータの顔を覗き込んできた。

「はい、聖騎士のみなさんが警察の方と連携されるようで」

「あー、聖騎士かぁー」

エンジが呟く。彼は元々騎士団の一員である。聖騎士と普通の騎士では扱いが雲泥の差だ。騎士は聖騎士の下働きのようなイメージが世の中にはある。実際は騎士になるのだって大変なのだ。入団テストをパスしなければ騎士見習いを名乗ることすら許されない。

「騎士も色々いるんだな」

「まあ俺達は聖騎士さんに仕上げの仕事を投げる仕事ですからね」

フレンの同情するような口調にエンジも困ったように返した。

「ねー、ソーちゃんたち昼飯まだなんでしょ?なんか食べに行こ」

「そうだな」

「うん、そうしようか」

一行は警察を後にした。

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