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「さて、これからどうする?」
食後の茶を飲みながらフレンが聞いてきた。ソータに視線が集まる。
「闇神の事が気になるのもありますが、僕たちは中央都市に向かいます。アオナで陛下がお待ちですから。フレン兄様は?」
フレンは一口茶を飲んで唸った。
「俺は一応神父だからなあ。ここにしばらく留まるよ。聖騎士達に力を貸してやらないと」
フレンの立場からそうなることはソータも予測していた。
「また会えるよね?」
「なんだ?レント、寂しがってくれるのか?」
フレンがいたずらっぽく笑うと、レントが口を尖らせる。
「そうじゃないけどさー、なんかいないと変な感じっていうか」
「はは。俺も変な感じだよ。お前たちと過ごせて良かった。大丈夫、中央都市でまた会えるさ」
フレンの言葉の力強さに皆は笑った。必ず会える、そんな確信が皆の中で生まれたのだ。
「じゃあ、またな!ソータ、無理するなよ」
フレンに頭を撫でられ、ソータも頷いた。
「兄様こそ無理せず」
あぁとフレンが頷き、向こうへ歩いていく。ソータたちは彼が見えなくなるまで見送った。
「ソータ、中央都市に行く汽車の切符を買いに行こう」
「はい!」
一行は駅を目指す。ダイダイの駅舎は今から百年ほど前に建てられた由緒ある建造物らしい。度々修復のために工事が行われているようだ。この情報はエンジから聞いた。やはりエンジは色々なことに詳しい。シオウやレントも感心して聞いていた。エンジが窓口に向かう。ソータもなんとなく気になってすぐ後ろで控えていた。
「え?中央都市に行けないんですか?」
エンジが声を上げる。
「どうも大きな事件があったとかで」
駅員が申し訳無さそうに言う。
「どうしても行きたいのなら、この街にいる聖騎士団に頼んでみるのはどうだい?君たち、見るからに冒険者みたいだし強いなら問題ないでしょう」
「はぁ…」
エンジはすごすごと引き下がった。
レントとシオウの元に戻り、聞いた話を繰り返す。
「げ、中央都市に行けないなんて」
レントががっくり肩を落とす。
「きっと何かあったんだね。売店の新聞をちらっと見たけど、そんなこと何も載っていなかった。もしかしたらかん口令が敷かれているのかもね」
「こうなると聖騎士団に頼むしかないのか、まあ雑用が必要かもしれないし」
「あ…」
ソータはふと空を見上げて気付いた。カラスが上空を旋回している。
「あの子は、フレン兄様のカラスです。こっちにおいで!」
ソータがカラスに声を掛けるとバササと羽音を立ててソータの腕に留まった。
「カァ」
「フレン兄様たちは車で中央都市に行くの?ダイダイのことは…」
カラスが再び啼く。
「え?それどころじゃない?」
「車かぁ」
エンジが腕を組む。
「カァ」
「え、フレン兄様たち、僕たちを待っててくれてるの!?」
希望が見えてきた。ソータたちは慌ててダイダイの外れに向かう。彼らはそこにいた。傍にはマイクロバスが停車している。
「よう、短い別れだったな」
「フレン兄様、一体何が?」
フレンが人差し指を自分の唇に当てる。静かにというジェスチャーだ。
「詳しい話は車でする。とりあえずお前らついて来い」
ソータたちはバスに乗った。ソータが座席に座ると、見計らったようにリヒが隣に座ってくる。彼はソータに軽く抱き着いた。
「ソータ、大好き」
「仕方ないですね。リヒ兄様は寂しがりなのですから」
「うん、ソータがいてくれなきゃ、いつも足りないよ」
これを見た男性陣がメラッと燃えた。だがリヒはそれを分かっているのか意地悪く笑う。ソータは譲らないという意志をもってだ。
もちろんそれを遠くにいたキメルも感じ取っていた。
「あの馬鹿野郎」
思わず舌打ち(幻獣の時は出来ないが)しそうになったが切り替えてソータをひたすら追い掛ける。バスは既に動き出している。いよいよ中央都市に向かうのだ。ソータはドキドキしていた。
「で、話ってなんなのですか?」
ソータが隣にある座席に座るフレンを促した。フレンは呟く。
「あー、なんかな、中央都市が闇神に占拠されたようだ」
その言葉に皆が固まった。では、これから向かうのは敵の本拠地ということになる。
「え、急に戦闘なの?」
レントの慌てた様子にフレンは、いや、と首を振った。
「まだ街に一般人はいる。それに闇神は基本的に暗いところを好む。これから奴らを炙り出して根こそぎ倒す予定だ」
「いやいやいや、それやっぱり戦闘じゃん!」
「あぁ、そうなるか」
フレンは困ったように頭をかいた。
「戦闘は仕方がありません。ただ、闇神を扇動する者がいそうですが、その辺りは?」
「そこは僕が話すね」
にっこりとリヒが笑う。
「最重要参考人はレイモンド・ラーマン。市議をしていたようだね」
「先生?!」
シオウが驚きの声を上げる。
「知り合いかな?」
「はい。あの続きを」
シオウの言葉にリヒは説明を続けた。
「最重要参考人は以前から不審な人物に接触され、今回の事件に関与したと見られる。まぁ、その不審な人物っていうのがその人の不倫相手だったみたいなんだけど。またそのことについて、詳しく話を聞かせてくれる?」
「分かりました」
「彼は市議を辞めたあと、行方をくらましていたみたいだ。どうやら中央都市の自分の事務所にいたみたいなんだけどね」
「レイモンド様は闇神を集めるために利用されてしまったということですね」
リヒが頷く。
「まぁ黒幕は人間じゃなくて、多分…」
「ハ・デス様、ですか?」
ソータの問いにリヒは笑った。それはそのまま答えを示している。
「でもさ、なんでリヒ達は大丈夫だったの?聖騎士団って普通、中央都市にいるものじゃない」
「それは聖騎士だからねぇ。危険を察知してスタコラサッサって」
「おい、リヒ。あまりからかってやるな」
フレンが嗜めると「はーい」とリヒが笑う。
「僕は予知夢が見られるからさ」
「予知夢?すごくレアな能力じゃん!」
レントが叫ぶ。
「まあ、この能力があったから聖騎士になれたんだよね。僕、戦闘はからっきしだし」
「リヒはもう少し訓練頑張ろうな」
口元は緩んでいるがフレンの目は笑っていない。
「怖いなぁ、フレンは」
「僕もフレン兄様には同意なのです」
「ソータまで?」
リヒは基本的に人懐こい性格のようだ。おかげで車内は和やかなムードだった。バスが急に停車する。
「団長!闇神です!!」
「位置について!」
バスの窓という窓に餓鬼がへばりついている。さすが聖騎士団である、冷静に対処している。
「リヒ、キリがない!」
「皆、掴まって!!」
マイクロバスは強行したのだった。
食後の茶を飲みながらフレンが聞いてきた。ソータに視線が集まる。
「闇神の事が気になるのもありますが、僕たちは中央都市に向かいます。アオナで陛下がお待ちですから。フレン兄様は?」
フレンは一口茶を飲んで唸った。
「俺は一応神父だからなあ。ここにしばらく留まるよ。聖騎士達に力を貸してやらないと」
フレンの立場からそうなることはソータも予測していた。
「また会えるよね?」
「なんだ?レント、寂しがってくれるのか?」
フレンがいたずらっぽく笑うと、レントが口を尖らせる。
「そうじゃないけどさー、なんかいないと変な感じっていうか」
「はは。俺も変な感じだよ。お前たちと過ごせて良かった。大丈夫、中央都市でまた会えるさ」
フレンの言葉の力強さに皆は笑った。必ず会える、そんな確信が皆の中で生まれたのだ。
「じゃあ、またな!ソータ、無理するなよ」
フレンに頭を撫でられ、ソータも頷いた。
「兄様こそ無理せず」
あぁとフレンが頷き、向こうへ歩いていく。ソータたちは彼が見えなくなるまで見送った。
「ソータ、中央都市に行く汽車の切符を買いに行こう」
「はい!」
一行は駅を目指す。ダイダイの駅舎は今から百年ほど前に建てられた由緒ある建造物らしい。度々修復のために工事が行われているようだ。この情報はエンジから聞いた。やはりエンジは色々なことに詳しい。シオウやレントも感心して聞いていた。エンジが窓口に向かう。ソータもなんとなく気になってすぐ後ろで控えていた。
「え?中央都市に行けないんですか?」
エンジが声を上げる。
「どうも大きな事件があったとかで」
駅員が申し訳無さそうに言う。
「どうしても行きたいのなら、この街にいる聖騎士団に頼んでみるのはどうだい?君たち、見るからに冒険者みたいだし強いなら問題ないでしょう」
「はぁ…」
エンジはすごすごと引き下がった。
レントとシオウの元に戻り、聞いた話を繰り返す。
「げ、中央都市に行けないなんて」
レントががっくり肩を落とす。
「きっと何かあったんだね。売店の新聞をちらっと見たけど、そんなこと何も載っていなかった。もしかしたらかん口令が敷かれているのかもね」
「こうなると聖騎士団に頼むしかないのか、まあ雑用が必要かもしれないし」
「あ…」
ソータはふと空を見上げて気付いた。カラスが上空を旋回している。
「あの子は、フレン兄様のカラスです。こっちにおいで!」
ソータがカラスに声を掛けるとバササと羽音を立ててソータの腕に留まった。
「カァ」
「フレン兄様たちは車で中央都市に行くの?ダイダイのことは…」
カラスが再び啼く。
「え?それどころじゃない?」
「車かぁ」
エンジが腕を組む。
「カァ」
「え、フレン兄様たち、僕たちを待っててくれてるの!?」
希望が見えてきた。ソータたちは慌ててダイダイの外れに向かう。彼らはそこにいた。傍にはマイクロバスが停車している。
「よう、短い別れだったな」
「フレン兄様、一体何が?」
フレンが人差し指を自分の唇に当てる。静かにというジェスチャーだ。
「詳しい話は車でする。とりあえずお前らついて来い」
ソータたちはバスに乗った。ソータが座席に座ると、見計らったようにリヒが隣に座ってくる。彼はソータに軽く抱き着いた。
「ソータ、大好き」
「仕方ないですね。リヒ兄様は寂しがりなのですから」
「うん、ソータがいてくれなきゃ、いつも足りないよ」
これを見た男性陣がメラッと燃えた。だがリヒはそれを分かっているのか意地悪く笑う。ソータは譲らないという意志をもってだ。
もちろんそれを遠くにいたキメルも感じ取っていた。
「あの馬鹿野郎」
思わず舌打ち(幻獣の時は出来ないが)しそうになったが切り替えてソータをひたすら追い掛ける。バスは既に動き出している。いよいよ中央都市に向かうのだ。ソータはドキドキしていた。
「で、話ってなんなのですか?」
ソータが隣にある座席に座るフレンを促した。フレンは呟く。
「あー、なんかな、中央都市が闇神に占拠されたようだ」
その言葉に皆が固まった。では、これから向かうのは敵の本拠地ということになる。
「え、急に戦闘なの?」
レントの慌てた様子にフレンは、いや、と首を振った。
「まだ街に一般人はいる。それに闇神は基本的に暗いところを好む。これから奴らを炙り出して根こそぎ倒す予定だ」
「いやいやいや、それやっぱり戦闘じゃん!」
「あぁ、そうなるか」
フレンは困ったように頭をかいた。
「戦闘は仕方がありません。ただ、闇神を扇動する者がいそうですが、その辺りは?」
「そこは僕が話すね」
にっこりとリヒが笑う。
「最重要参考人はレイモンド・ラーマン。市議をしていたようだね」
「先生?!」
シオウが驚きの声を上げる。
「知り合いかな?」
「はい。あの続きを」
シオウの言葉にリヒは説明を続けた。
「最重要参考人は以前から不審な人物に接触され、今回の事件に関与したと見られる。まぁ、その不審な人物っていうのがその人の不倫相手だったみたいなんだけど。またそのことについて、詳しく話を聞かせてくれる?」
「分かりました」
「彼は市議を辞めたあと、行方をくらましていたみたいだ。どうやら中央都市の自分の事務所にいたみたいなんだけどね」
「レイモンド様は闇神を集めるために利用されてしまったということですね」
リヒが頷く。
「まぁ黒幕は人間じゃなくて、多分…」
「ハ・デス様、ですか?」
ソータの問いにリヒは笑った。それはそのまま答えを示している。
「でもさ、なんでリヒ達は大丈夫だったの?聖騎士団って普通、中央都市にいるものじゃない」
「それは聖騎士だからねぇ。危険を察知してスタコラサッサって」
「おい、リヒ。あまりからかってやるな」
フレンが嗜めると「はーい」とリヒが笑う。
「僕は予知夢が見られるからさ」
「予知夢?すごくレアな能力じゃん!」
レントが叫ぶ。
「まあ、この能力があったから聖騎士になれたんだよね。僕、戦闘はからっきしだし」
「リヒはもう少し訓練頑張ろうな」
口元は緩んでいるがフレンの目は笑っていない。
「怖いなぁ、フレンは」
「僕もフレン兄様には同意なのです」
「ソータまで?」
リヒは基本的に人懐こい性格のようだ。おかげで車内は和やかなムードだった。バスが急に停車する。
「団長!闇神です!!」
「位置について!」
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「リヒ、キリがない!」
「皆、掴まって!!」
マイクロバスは強行したのだった。
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