引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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教会は立派なものだった。石造りの頑丈そうな建物である。その隣には学校の敷地が広がっていた。教会の敷地と学校の敷地の間は、白い柵で仕切られているが、生徒がいつでも遊びに来られるようにと、教会の門は常に開かれているようだ。中央都市の宗教ははっきりしていない。神々が複数いるという認識である。

人々が敷地内で寄り添いながら暗い顔をしている。こんなことが起これば当然だろう。リヒの姿を見るなり人々が駆け寄ってきた。忘れがちだが、リヒは聖騎士団の団長である。

「リヒ様!」

「リヒ様の予知夢がなかったらあたしらは…」

リヒは笑って頷いた。

「大丈夫だよ。みんなは僕たちが守る」

リヒの言葉に女性陣から歓声がわく。

「とんだ人たらしだな、リヒは」

キメルの容赦ない言葉はリヒには聞こえていないようだ。キメルは器用である。

「じゃ、中へ行こうか!」

リヒに促されて中に入ると、青い透きとおった肌の男性が立っていた。もちろん彼も神々のうちの一柱である。胸元が大きく開いたシャツに細身のパンツを合わせている。神々は皆、自分を魅力的に見せる方法を知っているようだ。

「シヴァ様、お久しぶりなのです!」

ソータが駆け寄ると、シヴァに抱きしめられる。

「あぁ、あたしの可愛い子。ごめんね、闇神を防げなくて。ハ・デスがあんなことをするなんて。あの子も面倒くさがりなんだから」

「ハ・デス様も反省されています。怒らないであげてください」

「分かった。で、リヒ?あんた、予知夢があるからなんとかなってるって理解してる?」

「シヴァは厳しいな…」

リヒが苦笑する。

「当たり前じゃない。あんたを一人前だなんて神々は誰も思っていないわよ。まわりの人間は赦してくれるかもしれないけどね」

「うぅ…」

シヴァに言われ放題である。

「あの、中央都市を元通りにしてくれるって…」

エンジがおずおずしながら言った。シヴァが笑う。

「ただでとは思ってないわよね?神は慈善事業じゃないの」

「わ、分かってます」

エンジが背筋を正す。シヴァがエンジの周りをぐるりと回った。

「へえ、アオナの新しいリーダーなの」

「いや、まだ!その、えーと…」

「…そう」

シヴァはそれ以上、何も言わなかった。

「ソータ、いくらあたしたちでも中央都市の全ての復興は難しいの。せいぜい、緊急に住む場所を作るのがやっとかしら」

「十分じゃないか…」

エンジの気持ちはよく分かるが、それでは今までの中央都市が担っていた役割を果たすためには、あまりにもかけ離れすぎている。

「どうすればいいのですか?」

「あんたはとりあえず、今やるべきことを全部してきなさい。アオナのこともあるんでしょ」

「そうなのです。私には最重要任務が…」

「ふふ、ソータだからおまけしてあげるのよ。頑張りなさいね」

「はい!」

パチリとシヴァが指を鳴らす。すると外から地響きが聞こえてきた。なにやら大きな物が動く音がする。ソータたちは慌てて外に出た。抉れた土地の一部が復活し、集合住宅がいくつも建ち並んでいる。

「あたしたちにできるのはせいぜいこれくらいよ。街としては未完成。どうにかするのはあんたたち自身よ」

ソータたち以外にもこの奇跡を目の当たりにしていた者は複数いた。人々から歓声が上がっている。地面に跪き祈っている者も中にはいた。これで物資が届けばしばらくはなんとかなりそうだ。

「シヴァ様、本当にありがとうございます!」

ソータも跪き、祈った。聖女の祈りは神々に力を与える。

「す、すごいな。神々の力は」

エンジが呆然としながら呟く。リヒもぽかんと目を瞠っていた。

「こ、こんなことが出来るなんて…」

「はぁ、さすがに疲れちゃった。ちょっと休んでくるわね。来なさい、パペ」

シヴァが一言呼ぶと、無表情の少年が現れた。

「なにかあったらこの子に言って頂戴。あたしと繋がってるの」

「パペ様…」

「聖女ソータナレア様、私に様は要りません」

ソータはじっと彼を見つめた。無表情ながらも彼の顔立ちは整っている。

「ソータナレア様、シヴァが移動手段をご用意致しました。明日早朝、アオナに速やかにお戻りください」

「あ、ありがとうございます」

キメルがソータの肩に頭を乗せてくる。

「ソータ、レイモンドの意識が回復した」

「パペさん、僕たちそろそろ」

「はい、お気を付けて」

ソータたちは教会を後にした。レイモンドのことはずっとモヤモヤしていたことだ。朝、ソータたちがいた宿屋の辺りは無事だったようだ。病院もあったので、何もなくて本当に良かったとソータはホッとした。病院内に入ると、シオウが小走りで駆け寄ってきた。

「ソータさん、神々が力を貸してくれたみたいだね。フレンさんから聞いた」

フレンはさすが神父である。神々の動きに敏感だ。

「はい。中央都市の皆さんが住む所を作ってくださいました」

「え?マジ?」

レントもやってきてぽかんとした。

「とりあえず先生の所に行こうか。ソータさん、いい?」

シオウが歩き出したので、ソータは彼について行った。
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