引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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「こちらです」

一行はパペの案内を頼りに歩いている。中央都市には巨大なターミナルがあった。だがそこもほとんどが壊れてしまっている。だが一箇所、ターミナルとして使えるところがあった。シヴァが意図して直したものらしい。そこにあったのは巨大な飛空艇だった。真っ青な円形のボディが特徴的である。静かだがエンジンがかかっているのは分かる。

「運転は私がします。皆さんはただ乗っていていただければ」

パペの表情は一切変わらない。先程から、ただ淡々と注意事項を話している。

「では、アオナへ参りましょう。ソータナレア様、お手を」

「…はい」

ソータの手をパペは優雅に握り、乗船するのを助けてくれた。

「ソータナレア様には、個室を御用意しております。そこでお着替えを」

ソータはぽかんとして、ようやくその言葉の意味を理解した。

「着替えるのですか?!」

「お手伝いが必要でしたら私が…」

パペが無表情で言う。多分彼のことだ、スムーズに着替えられるように配慮してくれるに違いない。ソータは諦めた。

「…自分で着替えるのです」

「こちらです、ソータナレア様」

パペに案内されて、ソータは個室に入った。テーブルにはプレゼントと思われる箱がいくつも置いてある。シヴァが気を回してくれたのだろう。

「お好きなものをお召になってください」

そう言ってパペが部屋を出ていく。ソータは困り果て、とりあえず一つ箱を開けてみた。中から出てきたのは可愛らしいワンピースだ。真っ白でそこまで華美な飾りは付いていない。自分は聖女なのだから、これくらいで丁度いいだろう。ソータはローブを脱ぎ始めた。
着替えると仮面が意味を成さないことに気が付く。ソータは仮面を外した。真龍のたまごを再び背負う。

部屋から出ると、すぐそばにキメルがいた。ソータの髪の毛に鼻先を近付けてくる。

「ソータ、久しぶりにお前の素顔を見た」

「そういえばそうかも」

「ワンピースか、シヴァはセンスがいいからな。ソータにとても似合っている」

キメルが照れながらも褒めてくれたのがソータには嬉しい。

「ふふ、ありがとう」

「その格好ではもう女の子にしか見えないな」

「あ…」

ソータはしまったと気が付いた。一応お忍び任務だったはずだ。だが、結局は世界をざわつかせてしまっている。特に神々のことで。

「大丈夫だ、アオナへ戻るだけなのだから」

「そうだった。陛下に報告へ行かないと」

「ソータ」

キメルはソータの袖口をくい、と引っ張った。

「エンジとレントは、アオナのリーダーになるのか?」

「あ!」

そういえばまだはっきり意思を確認していなかった。ソータとキメルは二人を探した。二人ともパペに飛空艇の操縦を教わっているらしい。

「へえ、簡単なんだね」

「思っていたよりパワーがあるんだな」

二人にソータとキメルが近付くと、気が付いたらしい。こちらを振り返った。

「ソーちゃん、可愛い!」

「可愛いよ、ソータ」

二人に褒められるとなんだか照れ臭い。ソータは意を決して二人に話しかけた。

「お二人にはアオナへ来て頂いても良かったのでしょうか?」

ソータが恐る恐る尋ねると、二人とも「あぁなんだ、そんなことか」と呟いた。

「まぁすぐにリーダーらしいことが出来るかと言ったら出来ないとは思う。でもアオナには救ってもらったからな。出来ることはやるよ」

エンジはしっかり先を見据えている。

「まぁリーダーって楽しそうだしいいかなって。俺なりに出来ることはするよ。女の子も選び放題だしね!」

レントは相変わらず軽いが、彼なりに頑張ってくれそうだとソータはホッとした。
アオナが間近だとパペに告げられる。あまり感じないが、飛空艇はものすごく速いようだ。

「着陸します」

パペがハンドルを操作した。アオナにはターミナルなんていいものは存在しない。アオナから少し離れた開けた陸地に着陸させた。

「到着しました。飛空艇は目立つのでしまいますね」

パペが飛空艇を小さくしてハーフパンツのポケットにしまい込んでいる。なんて便利なのだろう。

「アオナへ参りましょう」

ソータたちはアオナへ急いだ。城が見えてくる。王への謁見を申し出たソータを見て、兵士たちが明らかに浮足立った。久しぶりに帰ってきたアオナはやはり自然豊かな素晴らしい国だった。
ソータたちが謁見の間に向かうと、王が王座に座っている。ソータたちは揃って跪いた。

「聖女よ、選ばれし者を連れてきたのだな」

確認するように王に問われ、ソータは答えた。

「は、適任と思われる者、三名をお連れしました」

「ふうむ…」

国王が立ち上がる。

「表を上げよ」

エンジ、レント、シオウが顔を上げる。国王はしっかり顔を見て頷いた。

「ふむ、まだまだ青いがいい面構えをしている。よくやったな聖女よ」

「は、ありがたき御言葉」

「して、闇神の件だが…」

ソータたちはぽかんとした。ここにまで情報が届いているとは思わなかったのだ。

「神々がワシに知らせないはずがなかろう。ソータナレアよ、お主には中央都市の復興に向かってもらう。エンジ、レント、シオウ。お主等にはこの国についてしっかり説明しておかねばな。リーダーとして頑張ってほしい」

「は」

エンジ、レント、シオウは研修のため、城に留まった。一方ソータは聖域を目指している。ソータが聖域に入るなり、フクロウが飛び付いてきた。ソータは彼の頭を撫でる。

「フクロウ、よく森を維持したね。頑張ったよ」

「ホー」

フクロウはもうコリゴリだと言っている。キメルの絶大な力を思い知ったらしい。

「ねぇ、キメル。森を維持する意味ってあるのかな?聖域は大事だけど、みんなに開かれた聖域もいいのかなって」

「ソータは外の世界で学んだのだな。ならばこうしよう。必要ならば聖域に入れるように」

キメルの角に光が集まっていく。彼はそれを聖域と呼ばれていた森に当てた。
見たところ何も変わっていないが、標識が立っている。

「必要なもの拒まず」と。

「ありがとう!キメル!!」

ソータはキメルの首に抱き着いた。
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