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「そうか、ソータたちは、西北のタイタンの件に関わっていたんだな」
「はい」
「あれ、後から報道すごかったしな」
「そう…ですよね」
出てきた温かいおしぼりで手を拭きながらエンジが言う。ソータも物珍しくて丸まっているおしぼりをじっと見つめた。とにかくホカホカである。透明の袋から取り出し、手を拭くととても気持ちよかった。強者はこのおしぼりで顔を拭き、更に耳の後ろも拭くらしい。だがそれは、ある程度年のいった男性にしか許されていない特権だとエンジに言われた。
確かにこのホカホカなおしぼりで顔を拭いたら気持ちいいだろう。
この店は主に定食を出してくれるらしい。ソータは鍋焼きうどんをエンジに勧められて頼んでいた。うどんという食べ物をソータは初めて見る。
「ソーちゃんは自分のえーと、なんて言ったっけ?ねえ、エンジ?」
「出自か?」
「あぁ、そうそう。そのシュツジについて知ってんの?」
レントの質問に、ソータは困ってしまった。自分の生まれた国どころか、親すらも知らないのだ。
「わ、分かりません。気が付いたらアオナの聖域にいたし」
「キメルはなんか知ってんの?」
「…ソータは知りたいか?」
キメルの言葉にソータは怯んでしまった。知りたいかと言われればもちろん知りたい。だが、それで自分の中のなにかが変わってしまうような気がした。
「わ、私は…」
「今はいいじゃないか。ソータだって色々心の準備が必要だよ」
「そうだよね、ごめん。ソーちゃん」
エンジが優しく言ってくれて、レントがそれに同意する。彼らを選んだ自分の目は確かだった。
「お待たせいたしました。鍋焼きうどんのお客様!」
「はい」
「熱いのでお気を付けて召し上がってくださいね!」
店員がハキハキ言ってテーブルから離れる。ソータは目の前にやってきた鍋焼きうどんを見つめた。今でもグツグツいっている。
「ほ、本当に熱そうなのです」
「ソータ、取り皿あるぞ」
エンジが皿を渡してくれる。この人はどこまでも優しい。
「ねえねえ、皇子様の結婚式って俺たちは見られないの?」
「ロニさん、だったよね。結婚式は見られないかもしれないけれど、成婚のパレードならみられるんじゃないかな」
「パレード?!やっぱ皇子様ってすごいんだ」
「私も興味深いです。しかも花嫁様がソータナレア様によく似ているとなれば、血縁の可能性がありますしね」
「ソータの家族かもしれない…ってことだもんな」
皆が一生懸命うどんを冷ましているソータを見つめた。
「とりあえず飯だ。いただきます」
「いただきます!」
食べながらエンジはアオナの今の様子を話してくれた。今エンジたちは研修中で、政治制度の変更を国民になるべく分かりやすく通知したり、国民が今すごく困っていることを聞いて、できる範囲で、手伝いに行ったりしているらしい。若者が来てくれて嬉しいという声を直に聞けてやりがいがあると彼は言った。それを聞いて、ソータもホッとする。一方的にアオナのリーダーにと彼らを選んでしまったのが気掛かりだったのもあった。
「あ、そうそう」
レントがニヤニヤしながら言う。なんだろう、とソータは首を傾げた。
「中央都市のお姫様がアオナに来たよ」
「おい、レント!」
そう言えば中央都市はアオナと同じ王政だったとソータもはたと気が付いた。中央都市がようやく国として回復してきたのは知っていたが、王族の存在をすっかり忘れていたソータである。
「エンジ様、詳しく教えていただいても?」
ソータが尋ねると、エンジは頷いた。
「まぁあいつのことだ。すぐ広まるだろうから話すよ。中央都市の王政や資金繰りがガバガバだったのは国王が姫である娘を溺愛していたからなんだ」
はー、とエンジがため息を吐く。ソータはそれにぽかん、としてしまった。
「え?娘様のわがままを聞いていたという解釈で合っていますか?」
パペの言葉にエンジが頷く。
「どうも何人も国外にボーイフレンドが居たらしくて、そいつらに国の金を使っていたらしい。そりゃあ際限なくばらまけば金策だって厳しくなるさ」
「それ、横領と同じじゃないですか!」
「言ってしまえばそうなるよ。今は中央都市のそういう公的機関はどうなってるんだ?」
「はい。シヴァ様が間接的に入って指示されています」
エンジはいよいよ頭を抱えた。
「神様にやらせる仕事か?ソレ?」
「シヴァ様は楽しそうですが」
「奇跡って連続して起きるんだね」
シオウが目を輝かせる。
「とにかく、中央都市の王政は絶対にやめさせるべきだ。これから国が安定してきたとしても」
「シヴァ様によく伝えておきますね」
「で、エンジが中央都市から逃げてきたのはなんで?」
う…とエンジが固まる。だが彼はもう話してしまうことにしたらしい。拳をテーブルに置いた。
「姫君に気に入られて、魔力で拉致られそうになった」
「は?拉致?!」
「そう。だから寝起きとか寝る前とかの魔力を上手く使えなさそうな時間を狙って、仕事の報告に行っていたんだ」
「ねえ、待って。中央都市の姫君って行き遅れてるって言われてない?」
レントが青ざめている。
「本人はまだ自分が可愛いと思っているぞ」
「あ、無理」
これからエンジたちは明日行われる式の前にカリアシュヤを視察するらしい。式の後に成婚パレードは行われるようだ。
また明日会おう、そう約束してソータたちはエンジたちと別れた。
「はい」
「あれ、後から報道すごかったしな」
「そう…ですよね」
出てきた温かいおしぼりで手を拭きながらエンジが言う。ソータも物珍しくて丸まっているおしぼりをじっと見つめた。とにかくホカホカである。透明の袋から取り出し、手を拭くととても気持ちよかった。強者はこのおしぼりで顔を拭き、更に耳の後ろも拭くらしい。だがそれは、ある程度年のいった男性にしか許されていない特権だとエンジに言われた。
確かにこのホカホカなおしぼりで顔を拭いたら気持ちいいだろう。
この店は主に定食を出してくれるらしい。ソータは鍋焼きうどんをエンジに勧められて頼んでいた。うどんという食べ物をソータは初めて見る。
「ソーちゃんは自分のえーと、なんて言ったっけ?ねえ、エンジ?」
「出自か?」
「あぁ、そうそう。そのシュツジについて知ってんの?」
レントの質問に、ソータは困ってしまった。自分の生まれた国どころか、親すらも知らないのだ。
「わ、分かりません。気が付いたらアオナの聖域にいたし」
「キメルはなんか知ってんの?」
「…ソータは知りたいか?」
キメルの言葉にソータは怯んでしまった。知りたいかと言われればもちろん知りたい。だが、それで自分の中のなにかが変わってしまうような気がした。
「わ、私は…」
「今はいいじゃないか。ソータだって色々心の準備が必要だよ」
「そうだよね、ごめん。ソーちゃん」
エンジが優しく言ってくれて、レントがそれに同意する。彼らを選んだ自分の目は確かだった。
「お待たせいたしました。鍋焼きうどんのお客様!」
「はい」
「熱いのでお気を付けて召し上がってくださいね!」
店員がハキハキ言ってテーブルから離れる。ソータは目の前にやってきた鍋焼きうどんを見つめた。今でもグツグツいっている。
「ほ、本当に熱そうなのです」
「ソータ、取り皿あるぞ」
エンジが皿を渡してくれる。この人はどこまでも優しい。
「ねえねえ、皇子様の結婚式って俺たちは見られないの?」
「ロニさん、だったよね。結婚式は見られないかもしれないけれど、成婚のパレードならみられるんじゃないかな」
「パレード?!やっぱ皇子様ってすごいんだ」
「私も興味深いです。しかも花嫁様がソータナレア様によく似ているとなれば、血縁の可能性がありますしね」
「ソータの家族かもしれない…ってことだもんな」
皆が一生懸命うどんを冷ましているソータを見つめた。
「とりあえず飯だ。いただきます」
「いただきます!」
食べながらエンジはアオナの今の様子を話してくれた。今エンジたちは研修中で、政治制度の変更を国民になるべく分かりやすく通知したり、国民が今すごく困っていることを聞いて、できる範囲で、手伝いに行ったりしているらしい。若者が来てくれて嬉しいという声を直に聞けてやりがいがあると彼は言った。それを聞いて、ソータもホッとする。一方的にアオナのリーダーにと彼らを選んでしまったのが気掛かりだったのもあった。
「あ、そうそう」
レントがニヤニヤしながら言う。なんだろう、とソータは首を傾げた。
「中央都市のお姫様がアオナに来たよ」
「おい、レント!」
そう言えば中央都市はアオナと同じ王政だったとソータもはたと気が付いた。中央都市がようやく国として回復してきたのは知っていたが、王族の存在をすっかり忘れていたソータである。
「エンジ様、詳しく教えていただいても?」
ソータが尋ねると、エンジは頷いた。
「まぁあいつのことだ。すぐ広まるだろうから話すよ。中央都市の王政や資金繰りがガバガバだったのは国王が姫である娘を溺愛していたからなんだ」
はー、とエンジがため息を吐く。ソータはそれにぽかん、としてしまった。
「え?娘様のわがままを聞いていたという解釈で合っていますか?」
パペの言葉にエンジが頷く。
「どうも何人も国外にボーイフレンドが居たらしくて、そいつらに国の金を使っていたらしい。そりゃあ際限なくばらまけば金策だって厳しくなるさ」
「それ、横領と同じじゃないですか!」
「言ってしまえばそうなるよ。今は中央都市のそういう公的機関はどうなってるんだ?」
「はい。シヴァ様が間接的に入って指示されています」
エンジはいよいよ頭を抱えた。
「神様にやらせる仕事か?ソレ?」
「シヴァ様は楽しそうですが」
「奇跡って連続して起きるんだね」
シオウが目を輝かせる。
「とにかく、中央都市の王政は絶対にやめさせるべきだ。これから国が安定してきたとしても」
「シヴァ様によく伝えておきますね」
「で、エンジが中央都市から逃げてきたのはなんで?」
う…とエンジが固まる。だが彼はもう話してしまうことにしたらしい。拳をテーブルに置いた。
「姫君に気に入られて、魔力で拉致られそうになった」
「は?拉致?!」
「そう。だから寝起きとか寝る前とかの魔力を上手く使えなさそうな時間を狙って、仕事の報告に行っていたんだ」
「ねえ、待って。中央都市の姫君って行き遅れてるって言われてない?」
レントが青ざめている。
「本人はまだ自分が可愛いと思っているぞ」
「あ、無理」
これからエンジたちは明日行われる式の前にカリアシュヤを視察するらしい。式の後に成婚パレードは行われるようだ。
また明日会おう、そう約束してソータたちはエンジたちと別れた。
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