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ザブンと波が飛沫を上げてこちらに打ち寄せてくる。ソータたちはカリアシュヤの砂浜にいた。貝殻を探し始めて既に一時間が経過している。全員裸足で砂浜を歩き回りながら貝殻の探索をしている。キメルはパラソルの下で荷物番をしていた。
「うーん、なかなか綺麗な貝殻ないなあ」
ロニがぼやく。だが、彼が一番綺麗な貝殻を集めている。ソータも砂浜を探すのだが、見つけても殻が欠けていたり、あまり色が綺麗じゃなかったりと結果が奮わない。
「あ、ヒトデ!!見てよ、ソータ!パペ!!」
ロニに呼ばれて、二人は彼に近寄った。岩場になっている浅瀬には色々な生物がいる。小さな魚も泳いでいる。カリアシュヤの海は美しい。
「ヒトデさん、真っ赤だね」
「うん、もしかしたら毒があるかも」
「手は出さないほうが良さそうですね」
「あ、貝殻発見!」
ロニは屈んでそれを拾い上げる。今日で一番大きな貝殻だった。
「すごい、ロニ」
ソータが手を叩いて褒めるとロニがふふん、と笑う。
「あれ?誰か走ってくるよ?」
ロニがふと声を上げた。ソータたちもそちらを見る。駆け寄ってきたのは若い男性だった。服装からして高貴な身分だと分かる。それにかなりの男前でもあった。パペが息を呑む。
「あの方はカリアシュヤの皇子様かと」
「え!あれ、皇子様?!」
「リーナ姫!どうか私の元にお戻りください!」
駆け寄ってきた彼にぎゅっと手を握られたのはソータである。ソータたちはもちろん慌てた。
「わ、私はリーナ姫様ではありません。アオナの聖女です」
ソータが言うと皇子も人違いだと気が付いたらしい。顔を赤らめた。
「申し訳ありません、聖女様。あまりにリーナ姫によく似ていたものですから」
「何かあったのですか?」
パペが尋ねると、皇子は顔を俯けた。
「リーナ姫は私に迷惑が掛かるからと」
そう言って彼が取り出したのは一通の封筒だ。その封筒には、「親愛なるダミアン様」と書かれている。
「中を読んでも構わないでしょうか?ダミアン皇子」
「あぁ、もちろんだよ」
パペが慎重に封筒から便箋を取り出す。ソータとロニは両隣からそれを覗き込んだ。
「親愛なるダミアン様
急にいなくなることをお許しください。あなたに迷惑はかけられない。
リーナ」
3人はお互いを見つめ合った。あまりにも手紙の内容が短かったからだ。
「ダミアン皇子、これは姫様の本音ではない可能性があります」
パペがそう言うと、ダミアンは目を丸くする。
「そうなのか?でもリーナ姫は実際にいなくなっているし…あぁ、どうしたものか。国賓の皆さんももう、カリアシュヤに来てくださっているのに」
「式は明日ですよね?」
「あぁ。でも今夜は城で結婚式前夜のダンスパーティがあるんだよ。リーナ姫がいないと…」
「ソータナレア様…」
パペに見つめられソータも頷いた。
「ダミアン皇子、私で良ければリーナ姫様の代わりを務めます。社交ダンスは未経験ですが、すぐ習得してみせます」
「おぉ、聖女様。いいのですか?」
「はい」
「ありがとう!!」
ぎゅっとダミアンに抱き締められて、ソータは驚いた。ゆらり、と巨大な影が出来る。
「おい、俺がいることを忘れてもらっちゃあ困る」
「ひ!馬?!」
ダミアンはその場にへなへなと崩れ落ちた。どうやら彼は馬が苦手らしい。
「分かりました。ソータナレア様とキメル様は城へ。私とロニはエンジ様たちと合流してリーナ姫を探しましょう」
「大丈夫!明日の式までには必ず見つけるから!」
ダミアンの手を取りロニが彼を立ち上がらせた。
「おお、今日会ったばかりなのにこんなに助けて頂いて…恩に着ます」
✢✢✢
「おい、必ずその女を探してこいよ」
ダミアンとソータを自分の背に乗せ、キメルはロニとパペに言った。ダミアンはソータの背中にしがみつきながらぶるぶる震えている。どうやら馬上が怖いらしい。
「うん、任せてよ!キメル!」
「お任せください。キメル様こそ抜かりなく」
「ふん、誰に言っている?じゃあな」
キメルが走り出す。ダミアンはそれに悲鳴を上げた。
「おい、皇子。男ならぎゃあぎゃあ喚くんじゃない。お前皇子なんだろう?」
キメルの叱責に皇子がしょぼんとする。
「申し訳な・・・・ひい」
キメルの背に乗ると彼の体の筋肉が躍動するのを感じる。ソータはこれが大好きだ。
「キメル、もう少しスピードを緩めてあげて」
「ソータがそう言うなら仕方ないな」
キメルが鼻を鳴らし歩を緩めた。ダミアンがほうと息を吐いている。
「あの城でいいのか?」
「あ、はい。そうです」
ソータは内心でどっちが皇子なんだろうと噴き出しそうになって堪えた。城は高くそびえている。
純白の外壁が美しい。
「綺麗なお城ですね」
「はい。リーナ姫様もそう言ってくださいました」
町に入ると皆がキメルに注目した。当然乗っている人物にも目が行く。皇子だと分かるや否や歓声が上がった。
「皇子!ご結婚おめでとうございます!リーナ姫様!!」
「あ、ありがとう!」
ソータも困ったがニコニコしていた。笑っていれば乗り越えられる場も多い。門をくぐろうとすると兵士に止められた。
「ダミアン殿下!この馬は?」
「ああ、えーと、友達だよ」
キメルは殊勝にも黙っていた。おお、と兵士が目を輝かせる。
「あの馬嫌いのダミアン殿下が馬上に!」
「やはり皇子は勇ましくなくてはな」
「おい、俺たちには時間がない。もう行くからな」
キメルは勝手に中に入った。兵士たちはぽかんとしている。馬と話が出来たら誰だってそうなるだろう。
「おい、ダミアン。ダンスホールはどこだ」
「えっとこの上…え!」
ぴょんとキメルが壁を一跳びで乗り越えダンスホールに到着する。
「俺のソータだ。丁寧に教えろよ?」
「は、はい!」
何故キメルがふんぞり返っているかは分からないが、皇子はそれを受け入れているようなのでとりあえずいいかとソータも気にしないことにした。
「うーん、なかなか綺麗な貝殻ないなあ」
ロニがぼやく。だが、彼が一番綺麗な貝殻を集めている。ソータも砂浜を探すのだが、見つけても殻が欠けていたり、あまり色が綺麗じゃなかったりと結果が奮わない。
「あ、ヒトデ!!見てよ、ソータ!パペ!!」
ロニに呼ばれて、二人は彼に近寄った。岩場になっている浅瀬には色々な生物がいる。小さな魚も泳いでいる。カリアシュヤの海は美しい。
「ヒトデさん、真っ赤だね」
「うん、もしかしたら毒があるかも」
「手は出さないほうが良さそうですね」
「あ、貝殻発見!」
ロニは屈んでそれを拾い上げる。今日で一番大きな貝殻だった。
「すごい、ロニ」
ソータが手を叩いて褒めるとロニがふふん、と笑う。
「あれ?誰か走ってくるよ?」
ロニがふと声を上げた。ソータたちもそちらを見る。駆け寄ってきたのは若い男性だった。服装からして高貴な身分だと分かる。それにかなりの男前でもあった。パペが息を呑む。
「あの方はカリアシュヤの皇子様かと」
「え!あれ、皇子様?!」
「リーナ姫!どうか私の元にお戻りください!」
駆け寄ってきた彼にぎゅっと手を握られたのはソータである。ソータたちはもちろん慌てた。
「わ、私はリーナ姫様ではありません。アオナの聖女です」
ソータが言うと皇子も人違いだと気が付いたらしい。顔を赤らめた。
「申し訳ありません、聖女様。あまりにリーナ姫によく似ていたものですから」
「何かあったのですか?」
パペが尋ねると、皇子は顔を俯けた。
「リーナ姫は私に迷惑が掛かるからと」
そう言って彼が取り出したのは一通の封筒だ。その封筒には、「親愛なるダミアン様」と書かれている。
「中を読んでも構わないでしょうか?ダミアン皇子」
「あぁ、もちろんだよ」
パペが慎重に封筒から便箋を取り出す。ソータとロニは両隣からそれを覗き込んだ。
「親愛なるダミアン様
急にいなくなることをお許しください。あなたに迷惑はかけられない。
リーナ」
3人はお互いを見つめ合った。あまりにも手紙の内容が短かったからだ。
「ダミアン皇子、これは姫様の本音ではない可能性があります」
パペがそう言うと、ダミアンは目を丸くする。
「そうなのか?でもリーナ姫は実際にいなくなっているし…あぁ、どうしたものか。国賓の皆さんももう、カリアシュヤに来てくださっているのに」
「式は明日ですよね?」
「あぁ。でも今夜は城で結婚式前夜のダンスパーティがあるんだよ。リーナ姫がいないと…」
「ソータナレア様…」
パペに見つめられソータも頷いた。
「ダミアン皇子、私で良ければリーナ姫様の代わりを務めます。社交ダンスは未経験ですが、すぐ習得してみせます」
「おぉ、聖女様。いいのですか?」
「はい」
「ありがとう!!」
ぎゅっとダミアンに抱き締められて、ソータは驚いた。ゆらり、と巨大な影が出来る。
「おい、俺がいることを忘れてもらっちゃあ困る」
「ひ!馬?!」
ダミアンはその場にへなへなと崩れ落ちた。どうやら彼は馬が苦手らしい。
「分かりました。ソータナレア様とキメル様は城へ。私とロニはエンジ様たちと合流してリーナ姫を探しましょう」
「大丈夫!明日の式までには必ず見つけるから!」
ダミアンの手を取りロニが彼を立ち上がらせた。
「おお、今日会ったばかりなのにこんなに助けて頂いて…恩に着ます」
✢✢✢
「おい、必ずその女を探してこいよ」
ダミアンとソータを自分の背に乗せ、キメルはロニとパペに言った。ダミアンはソータの背中にしがみつきながらぶるぶる震えている。どうやら馬上が怖いらしい。
「うん、任せてよ!キメル!」
「お任せください。キメル様こそ抜かりなく」
「ふん、誰に言っている?じゃあな」
キメルが走り出す。ダミアンはそれに悲鳴を上げた。
「おい、皇子。男ならぎゃあぎゃあ喚くんじゃない。お前皇子なんだろう?」
キメルの叱責に皇子がしょぼんとする。
「申し訳な・・・・ひい」
キメルの背に乗ると彼の体の筋肉が躍動するのを感じる。ソータはこれが大好きだ。
「キメル、もう少しスピードを緩めてあげて」
「ソータがそう言うなら仕方ないな」
キメルが鼻を鳴らし歩を緩めた。ダミアンがほうと息を吐いている。
「あの城でいいのか?」
「あ、はい。そうです」
ソータは内心でどっちが皇子なんだろうと噴き出しそうになって堪えた。城は高くそびえている。
純白の外壁が美しい。
「綺麗なお城ですね」
「はい。リーナ姫様もそう言ってくださいました」
町に入ると皆がキメルに注目した。当然乗っている人物にも目が行く。皇子だと分かるや否や歓声が上がった。
「皇子!ご結婚おめでとうございます!リーナ姫様!!」
「あ、ありがとう!」
ソータも困ったがニコニコしていた。笑っていれば乗り越えられる場も多い。門をくぐろうとすると兵士に止められた。
「ダミアン殿下!この馬は?」
「ああ、えーと、友達だよ」
キメルは殊勝にも黙っていた。おお、と兵士が目を輝かせる。
「あの馬嫌いのダミアン殿下が馬上に!」
「やはり皇子は勇ましくなくてはな」
「おい、俺たちには時間がない。もう行くからな」
キメルは勝手に中に入った。兵士たちはぽかんとしている。馬と話が出来たら誰だってそうなるだろう。
「おい、ダミアン。ダンスホールはどこだ」
「えっとこの上…え!」
ぴょんとキメルが壁を一跳びで乗り越えダンスホールに到着する。
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