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「おい!待て待て!」
キメルが慌てたのか急に喚く。
「どうしました?キメルさん」
皇子はきょとんと首を傾げた。
「いくらなんでも距離が近すぎる。ソータにそんなに密着するな」
キメルが鼻先で皇子をぐぐと向こう側に押しやる。
「え、でもそれがダンスの基本姿勢で」
「キメル、今だけだから。ね?」
「・・・・ソータがそう言うなら」
むううとキメルが膨れている。
「聖女様をいつでもお守りしているのですね!さすがキメルさんだ」
なんだかよく分からないが皇子は納得している。とりあえずダンスの練習が始まった。
「そこでステップです。聖女様、今までダンスのご経験が?」
「ソータは運動神経抜群だからな。これくらい余裕だ」
キメルが何故か自慢げだ。皇子と共にステップを踏み、ソータは記憶していく。
「うん、いいと思います」
「とりあえず今日乗り切れれば大丈夫だと思うので」
「はい、そうですね。パぺさんやロニさんならきっとリーナ姫様を探し出してくれますよね」
皇子は一切の曇りがない眼差しでソータに言った。こういうところに彼の育ちの良さを感じる。周りを信頼するのはなかなか難しいことだ。
「殿下!リーナ姫様!こんなところにいらっしゃったんですか?本当に仲睦まじいこと」
入って来たのは白髪の老女だ。どうやらダミアンの乳母らしい。
「ああ、ばあや。せ・・じゃなかった。リーナ姫様のパーティの支度を」
「はいはい。リーナ姫様、どうぞこちらへ」
キメルも当然のようについていこうとしてダミアンに止められている。
「キメルさん、君は男だろう」
「俺は可愛い草食動物だ」
ソータはその答えに、また噴き出しそうになってしまった。ちなみにキメルは草食動物なんていう可愛いものではない。むしろ肉を好んで食べる。
「可愛い草食動物でも女性の着替えを見るのは」
ダミアンに優しく、でもきっぱりと諭されてキメルはようやく引き下がった。
「その子は何もしなくても可愛いからやりすぎるなよ、婆さん」
キメルはどこまでも横柄である。ソータはその態度に不安になったが、ばあやと呼ばれた彼女はニコニコしている。
「大丈夫ですよ、ばあやに任せなさい。リーナ姫様、こちらへ」
「はい」
ソータが連れてこられたのは姿見のある部屋だった。
「今日のために衣装を作ったのだけど大きそうね」
ソータはものすごく小柄である。
「え、えと、多分誤差です」
「大丈夫、余った分は隠せばいいんですから」
ソータは薄い水色のドレスを着せてもらった。大きい所はリボンを使い、目立たないようにしてもらう。足元は水色のハイヒールだ。
「あら、可愛らしい。ダミアン殿下もきっと喜ぶわ」
「それなら良かったのです」
「リーナ姫様、ダミアン殿下のこと、お願いね」
乳母が物悲しそうに言うので、ソータは慌てた。まるで今生の別れのようである。
「そんな悲しい言い方しないでください。ダミアン様はばあや様のことをとても大切にされています」
「えぇ、分かってるのよ。あの子が生まれたときから一緒だったんだもの。すごく優しいいい子だった。あの子のお世話が出来て本当によかった」
「ばあや様…」
ソータはなんと声を掛けたものか分からなかった。
✢✢✢
ロニとパペはエンジたちが泊まると言っていたホテルにいた。おそらく彼らはまだカリアシュヤの視察をしているだろう。一応フロントに尋ねたが、まだ戻っていないとのことだった。
「パペ、これからどうする?」
二人はロビーにあるソファーに腰掛けている。パペが何かを唱えると、空間上に画面が現れた。
「何これ?魔法?」
ロニが隣から覗き込む。パペは操作しながら頷いた。
「最近会得しました。シヴァ様が便利だからって。今映っているのはカリアシュヤの地図です」
「本当に便利だねー。これをどうするの?」
「リーナ姫様は何者かに誘拐された可能性が高い…目的は多分…」
パペがパネルを操作した。そこには、リーナ姫の写真が映っている。パペはそれを拡大する。それはリーナ姫の首元にある貝殻のネックレスだ。
ロニは小さく叫んだ。
「え、これのために誘拐したの?奪っておしまいじゃなくて?」
ロニの驚きは最もだ。パペが淡々と答える。
「この貝殻は魔力を持つ特殊なものなんです。
この貝殻は持ち主を自らが認めて初めて使用できる。きっとそれを狙ったんでしょう」
「なんのために?」
「さぁ、そこまでは。とりあえず何かが城で起きたのは間違いありません。城の中に内通者がいる可能性も捨てきれない。ソータナレア様のことだから大丈夫だとは思いますが、なるべく早くリーナ姫様を探しましょう」
「うん!そうだよね!」
ロニははた、と気が付いた。カリアシュヤは島国だ。面積もそこまで大きくないが、いくらエンジたちがいても大陸全てを探すなど不可能な話である。
ロニの言いたいことが分かったのか、パペは頷いた。
「リーナ姫様の痕跡を辿りましょう。かなり根気が要りそうですが」
「パペすごいね!」
パペがくい、と人差し指で画面を撫でると、もう一枚画面が出てきた。
「ロニ、あなたには大陸の南側を見てもらいます」
「分かった!」
二人はリーナ姫の痕跡を探り始めた。
キメルが慌てたのか急に喚く。
「どうしました?キメルさん」
皇子はきょとんと首を傾げた。
「いくらなんでも距離が近すぎる。ソータにそんなに密着するな」
キメルが鼻先で皇子をぐぐと向こう側に押しやる。
「え、でもそれがダンスの基本姿勢で」
「キメル、今だけだから。ね?」
「・・・・ソータがそう言うなら」
むううとキメルが膨れている。
「聖女様をいつでもお守りしているのですね!さすがキメルさんだ」
なんだかよく分からないが皇子は納得している。とりあえずダンスの練習が始まった。
「そこでステップです。聖女様、今までダンスのご経験が?」
「ソータは運動神経抜群だからな。これくらい余裕だ」
キメルが何故か自慢げだ。皇子と共にステップを踏み、ソータは記憶していく。
「うん、いいと思います」
「とりあえず今日乗り切れれば大丈夫だと思うので」
「はい、そうですね。パぺさんやロニさんならきっとリーナ姫様を探し出してくれますよね」
皇子は一切の曇りがない眼差しでソータに言った。こういうところに彼の育ちの良さを感じる。周りを信頼するのはなかなか難しいことだ。
「殿下!リーナ姫様!こんなところにいらっしゃったんですか?本当に仲睦まじいこと」
入って来たのは白髪の老女だ。どうやらダミアンの乳母らしい。
「ああ、ばあや。せ・・じゃなかった。リーナ姫様のパーティの支度を」
「はいはい。リーナ姫様、どうぞこちらへ」
キメルも当然のようについていこうとしてダミアンに止められている。
「キメルさん、君は男だろう」
「俺は可愛い草食動物だ」
ソータはその答えに、また噴き出しそうになってしまった。ちなみにキメルは草食動物なんていう可愛いものではない。むしろ肉を好んで食べる。
「可愛い草食動物でも女性の着替えを見るのは」
ダミアンに優しく、でもきっぱりと諭されてキメルはようやく引き下がった。
「その子は何もしなくても可愛いからやりすぎるなよ、婆さん」
キメルはどこまでも横柄である。ソータはその態度に不安になったが、ばあやと呼ばれた彼女はニコニコしている。
「大丈夫ですよ、ばあやに任せなさい。リーナ姫様、こちらへ」
「はい」
ソータが連れてこられたのは姿見のある部屋だった。
「今日のために衣装を作ったのだけど大きそうね」
ソータはものすごく小柄である。
「え、えと、多分誤差です」
「大丈夫、余った分は隠せばいいんですから」
ソータは薄い水色のドレスを着せてもらった。大きい所はリボンを使い、目立たないようにしてもらう。足元は水色のハイヒールだ。
「あら、可愛らしい。ダミアン殿下もきっと喜ぶわ」
「それなら良かったのです」
「リーナ姫様、ダミアン殿下のこと、お願いね」
乳母が物悲しそうに言うので、ソータは慌てた。まるで今生の別れのようである。
「そんな悲しい言い方しないでください。ダミアン様はばあや様のことをとても大切にされています」
「えぇ、分かってるのよ。あの子が生まれたときから一緒だったんだもの。すごく優しいいい子だった。あの子のお世話が出来て本当によかった」
「ばあや様…」
ソータはなんと声を掛けたものか分からなかった。
✢✢✢
ロニとパペはエンジたちが泊まると言っていたホテルにいた。おそらく彼らはまだカリアシュヤの視察をしているだろう。一応フロントに尋ねたが、まだ戻っていないとのことだった。
「パペ、これからどうする?」
二人はロビーにあるソファーに腰掛けている。パペが何かを唱えると、空間上に画面が現れた。
「何これ?魔法?」
ロニが隣から覗き込む。パペは操作しながら頷いた。
「最近会得しました。シヴァ様が便利だからって。今映っているのはカリアシュヤの地図です」
「本当に便利だねー。これをどうするの?」
「リーナ姫様は何者かに誘拐された可能性が高い…目的は多分…」
パペがパネルを操作した。そこには、リーナ姫の写真が映っている。パペはそれを拡大する。それはリーナ姫の首元にある貝殻のネックレスだ。
ロニは小さく叫んだ。
「え、これのために誘拐したの?奪っておしまいじゃなくて?」
ロニの驚きは最もだ。パペが淡々と答える。
「この貝殻は魔力を持つ特殊なものなんです。
この貝殻は持ち主を自らが認めて初めて使用できる。きっとそれを狙ったんでしょう」
「なんのために?」
「さぁ、そこまでは。とりあえず何かが城で起きたのは間違いありません。城の中に内通者がいる可能性も捨てきれない。ソータナレア様のことだから大丈夫だとは思いますが、なるべく早くリーナ姫様を探しましょう」
「うん!そうだよね!」
ロニははた、と気が付いた。カリアシュヤは島国だ。面積もそこまで大きくないが、いくらエンジたちがいても大陸全てを探すなど不可能な話である。
ロニの言いたいことが分かったのか、パペは頷いた。
「リーナ姫様の痕跡を辿りましょう。かなり根気が要りそうですが」
「パペすごいね!」
パペがくい、と人差し指で画面を撫でると、もう一枚画面が出てきた。
「ロニ、あなたには大陸の南側を見てもらいます」
「分かった!」
二人はリーナ姫の痕跡を探り始めた。
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